Insider's Eye新世代SANの普及を目指す「Simple SAN」とは何か?(1)―― 低コストSANで中小企業への普及を狙う ―― Peter Pawlak2005/06/01 Copyright (C) 2005, Redmond Communications Inc. and Mediaselect Inc. |
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本記事は、(株)メディアセレクトが発行する月刊誌『Directions on Microsoft日本語版』 2005年6月号 p.29の「新世代SANのWindowsストレージ強化策」を、許可を得て転載したものです。同誌に関する詳しい情報は、本記事の最後に掲載しています。 |
Microsoftは、SAN(ストレージ・エリア・ネットワーク)のコストを抑え、複雑さを取り除くことで、SANの導入促進を図る新しいロゴ・プログラム「Simple SAN」を発表した。SANを利用すれば、複数のサーバが外部ストレージ・コントローラにアクセスでき、DAS(direct-attached storage:サーバとストレージの直接接続)に比べて、可用性、拡張性、効率性が向上する。また同社は、Windows Server 2003用のiSCSIドライバ「iSCSI Software Initiator」のバージョン2をリリースした(iSCSIについては下のコラム参照)。このドライバにより、低コストで冗長性のあるネットワーク構成を実現したSANが構築できる。しかし、SANが以前に比べて簡単に低コストで導入できるようになったとはいえ、DASのコストも下がってきている。中小企業を対象としたSAN市場の開拓は、SANベンダにとって依然険しい道のりが続きそうだ。
コラム iSCSIトラフィックは、専用のストレージ・ネットワーク上での運用ができるだけでなく、十分な帯域幅さえあれば、通常のデータ・トラフィックとネットワーク網を共有できる。また、iSCSIは、現在の標準であるIPv4(Internet Protocol version 4)と次世代のIPv6プロトコルの両方に対応するため、IPSec(IP Security)による認証と暗号化サービスを使用したセキュリティ保全が可能だ。 サーバとストレージ・アレイが同じ構内にあるローカルなSANの場合、iSCSIを利用すれば、ギガビット・イーサネットなどの一般の低コストな高速LANテクノロジを使って、サーバやクラスタをストレージ・アレイに接続できる。iSCSIレイヤはTCP/IPレイヤの上に位置するため、iSCSIトラフィックは通常のWANとインターネット・インフラ上で容易にルーティングできる。通信エンド間のパスに十分な帯域幅があり、ネットワーク遅延が許容できる範囲内であれば、バックアップ・サービスのアウトソースや、ディザスタ・リカバリを実現する上で必須となる別の施設へのデータのミラーリングといった遠隔SANシナリオを実現できる。 |
SANは大企業のものだけではない
MicrosoftのSimple SANイニシアティブは、SANのコストと複雑さが軽減されれば、SANを導入し、活用する中小企業の数は跳ね上がるとの分析により生まれたものだ。
■SANの基本的な働き
SANは、ブロック・レベルでのディスク・データ転送用のプロトコルを使用し、サーバがネットワークを介して1つ以上の外部ディスク・ストレージ・アレイを共有できるようにするものだ。各ストレージ・デバイスは、ファイバ・チャネル(Fibre
Channel)またはiSCSIネットワーク・インターフェイス、ストレージ・コントローラ、ストライプ・ボリュームまたはミラー・ボリュームの冗長セット(RAID)で構成される。NFS(ネットワーク・ファイル・システム)やMicrosoftのSMB(サーバ・メッセージ・ブロック)などの一般的なネットワーク・ファイル共有プロトコルを使って、ほかのコンピュータにファイル・サービスを提供するNAS(ネットワーク接続ストレージ)サーバと異なり、SANのストレージ・デバイスは、WindowsやLinuxなどの汎用OSを利用しない。代わりに、ハードウェア固有の小型のOSを実行する。このOSは、ディスクへのブロック・レベル・データの読み取り/書き込み操作用に最適化されている(ただし、実際にはハイエンドのNASデバイスの多くが、SANをベースに構築されている)。
ストレージ・コントローラは、物理ストレージを論理ディスク・ボリュームに分割し、これをSANに公開する。また、各論理ボリュームをある特定のサーバ専用ボリュームにしたり、指定した複数のサーバまたはバックアップ・デバイスでしか共有や読み取りができないようにしたりするなど、セキュリティの制御も行う。
DASの場合、サーバは各サーバに接続されている専用のストレージにしかアクセスできないが、SANであれば、設定されたアクセス権(読み取り専用、または読み取り/書き込み)で、SAN上の論理ボリュームすべてにアクセスできる。Windows OSからすると、これらの論理ボリュームは、DASドライブ上のディスク・パーティションとまったく同じように認識され、操作できる。適切なハードウェアがあれば、SANボリュームからサーバをブートしたり、サーバのページング・ファイルをSANボリュームに書き出したりすることもでき、完全にDASなしでもサーバの実行が可能となる。
■中小企業にとってのSANのメリット
一部の大企業はSANを導入している。SANを利用すれば、IAサーバでもメインフレームと同じストレージ・アレイとバックアップ・テクノロジが使用できるため、エンタープライズ・クラスのフォールト・トレランスを備えたストレージの持つメリットを、比較的低いコストで享受できる。またSANは、企業のクリティカル・データをリモートのディザスタ・リカバリ・サイトにレプリケートするうえで、重要なコンポーネントとなり得る。ただし、これらのソリューションはコストが高く、複雑なため、導入は大企業に限られる傾向にある。
しかし中小企業でも、次のような機能により、SAN特有のメリットを得られる可能性がある。
●ストレージの動的な拡張と割り当て
DASでボリュームを拡張する必要が発生した場合、通常はまず目的のボリュームをテープにバックアップし、ディスク・ドライブを追加または交換する。その後、ディスクを再度フォーマットして、データを復元する必要がある。これは非常に手間の掛かるプロセスで、長時間にわたりサーバを停止しなければならない。このため、多くの企業では、実際に必要になると予想される容量をはるかに超えるストレージを購入しているが、DASの未使用部分は接続されているサーバ以外のサーバは利用できないため、サーバごとに予備のストレージを用意する必要がある。
これとは対照的に、ほとんどのSANテクノロジではストレージが仮想化されるため、ファイル・システムへのアクセスや、アプリケーションからのディスク・ストレージへの書き込みを停止することなく、ディスク・ボリュームを動的に拡張できる。従って、企業は必要になった時点で追加のディスク・ストレージを購入すればよい。またSANでは、予備ストレージをストレージ・アレイ内のどのボリュームにも割り当てることができるため、必要な予備ストレージ数を大幅に減らすことができる。
●大容量ストレージのサポート
ビデオやMRIスキャン・データなどの画像やマルチメディア・データを格納する場合など、大規模なデータベースには数Tbytes規模のストレージが必要だが、現在のDASではサーバ・ストレージをこのレベルに拡張することはできない。内部実装型のRAID5/SCSIベースのストレージ・アレイの実効容量は、現在1Tbytesが限度である。一方、SANベースのストレージ・アレイは、大容量ボリュームに対応できるスループットを提供するディスク・コントローラがあれば、50Tbytes以上に拡張が可能である。
●バックアップやクラスタリングでの同時ストレージ・アクセス
SANでは、複数のサーバが同じ保存データにアクセスできるため、アプリケーション(特にSQL ServerやExchange Serverなどのデータベース・アプリケーション)の可用性を向上できる。
SANは、これを2つの方法で可能にする。1つ目は、クラスタリングである。DASのストレージ・ボリュームは、RAID技術を使ってフォールト・トレランスを実現できるが、このボリュームを使うアプリケーションのフォールト・トレランスや高可用性が確保されるわけではない。しかし、SANではクラスタリング・テクノロジ(Microsoft Cluster Serviceなど)をサポートできるため、サーバやサーバ上で稼働中のアプリケーションに障害が発生したり、オフラインになったりした場合に、別のサーバがディスク・アクセスを引き継ぐことができる。
2つ目は、ディスクへの直接バックアップである。DASでは、ストレージが接続されているサーバ経由でなければ、保存データにアクセスすることはできない。つまり、サーバがすべてのディスク・データをネットワークに転送することになるため、バックアップ時のボトルネックになり、サーバ上で稼働しているアプリケーションのパフォーマンスに大きな影響を与える可能性がある。ストレージがTbytes規模になると、この問題は特に深刻だ。これに対してSANでは、バックアップ・サーバがデータの個別のスナップショットをストレージ・アレイから直接バックアップすることが可能なため、稼働/運用中のアプリケーションやデータベース・サーバが影響を受けない。
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