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Windows Hyper-V Server 2008を利用する

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デジタルアドバンテージ 打越 浩幸
2008/11/21
対象OS
Windows Hyper-V Server 2008
Hyper-V Server 2008は、無償で提供されているHyper-Vの実行環境である。Windows Server 2008+Server CoreにHyper-Vの役割を追加したのとほぼ同じ環境が利用できる。
Hyper-V Server 2008はリモートのHyper-Vマネージャで管理する。
ただしHyper-V Server 2008にはOSの仮想化ライセンスは付属していないので、別途OSを用意する必要がある。

解説

Windows Server 2008の基礎知識「進化した仮想化機能」
Windows Server 2008の基礎知識「Windows OSに標準搭載された仮想化機能Hyper-V」
連載「Hyper-V実践サーバ統合術」

 Hyper-VはWindows Server 2008で利用できる機能の1つであり、仮想的に構築したコンピュータ(VM)上で、OSやアプリケーションを稼働させることができる(TIPS「Windows Server 2008にHyper-Vをインストールする」参照)。VM上でシステムを運用すると、(たいていの場合)パフォーマンスに関してはやや劣るものの、システムの運用管理は大幅に簡略化される。例えばディスク・イメージは単なるファイルとして扱われているので、システムのバックアップやリストア、複製、導入などが容易になる。スナップショットの機能を使えば、システムの復旧や構成変更なども簡単に行える。

 Hyper-Vを利用する場合は、Windows Server 2008のほかの役割などを兼用せず、専用環境として利用することが望ましい。1台のサーバで複数の役割を兼用すると、管理が面倒になるし、パフォーマンスも低下するからだ。そこでこのような目的のために、Hyper-V実行専用環境として用意されたのがWindows Hyper-V Server 2008(以下Hyper-V Server 2008)という、特別なエディションのWindows Server 2008である。

 Hyper-V Server 2008は機能的には、Windows Server 2008のServer CoreインストールにHyper-Vの役割を追加したものに近いが、無償で提供されている。ただし「Hyper-Vのハイパーバイザ以外の役割は何も追加できない」「チャイルド・パーティションとして利用できるWindows Server 2008の仮想化の権利は何も付属していない*」という大きな違い(制約)があるため、Hyper-Vの実行用途にしか利用できない。

* Windows Server 2008にHyper-Vの役割を追加する場合、ホストOSとしてインストールされているWindows Server 2008を、そのVM上にもインストールして利用できる権利が付与されている。Standardエディションでは1つまで、Enterpriseエディションでは4つまで、Datacenterエディションでは無制限に、Hyper-V上の各VM上にそれぞれのOSをインストールできる(Webエディションでは利用不可)。だがHyper-V Server 2008の場合は、VM上にインストールする権利は与えられておらず、VMごとにゲストOSのライセンスが必要となる。

 無償で提供されているとはいえ、各VMごとにOSライセンスが必要なため、Windows Server 2008+Hyper-Vの場合よりも利用可能なシーンは限定される。例えば、すでにライセンスのある既存のサーバ・システムを仮想化/統合する場合や、実験用途などで利用する場合にはこれで十分だろう。本TIPSでは、このHyper-V Server 2008のインストールについて解説する。

操作方法

OSイメージのダウンロード

 Hyper-V Server 2008のインストール用イメージは、無償でダウンロード・センターで公開されている。

 英語版とそのほかの言語を含む多言語版の2種類のイメージ・ファイルがあるので、いずれかのイメージをダウンロードする。言語が異なっても、Hyper-Vとして機能は同じである(Windows Server 2008なので、必要ならばユーザー・インターフェイス言語を後で英語に切り替えることも可能。TIPS「Windows Server 2008/Windows Vistaに言語パックを追加する」参照)。

 ダウンロードしたファイル(.iso)はDVD-ROMのイメージ・ファイルなので、これをDVD-Rに書き込んで利用する。

Hyper-V Server 2008のインストール

 Hyper-V Server 2008をインストールするために必要なシステムの要件は、Windows Server 2008のServer Core+Hyper-Vとほぼ同じである。x64アーキテクチャのCPU(VTおよびDEP機能を持っていること)に、VM用に十分なメモリを持ったサーバであればよい。必要なメモリやディスクのサイズは稼働させるVMの規模によって異なるが、最低1Gbytesのメモリは必要である(Hyper-V Server 2008では最大32Gbytesまで利用可能)。Hyper-V Server 2008のコアをインストールするのに必要なディスク領域は2Gbytes程度であるが(これ以外にページ・ファイル用のディスクが必要)、Hyper-VのVM用のディスク領域と分けて、OSインストール用に数十Gbytes程度確保しておけばよいだろう。OSを独立したパーティションにインストールすることにより、管理(システムのバックアップや、Hyper-V関連のファイルの管理など)が容易になる。なお、ページ・ファイル用にもディスク領域が必要であるが、Hyper-Vでは仮想記憶は使わないので(VMは実メモリ上にのみ確保される)、ページ・ファイル領域は最低か、なしでもよい。Hyper-V Server 2008のインストールや運用に関しては、次のドキュメントなども参照していただきたい。

 イメージを書き込んだDVD-Rをシステムにセットして起動するとHyper-V Server 2008のインストールが始まる。このOSはHyper-V専用であり、管理者がHyper-V役割を追加したりする操作は必要ない。通常のMUI版のWindows Server 2008をインストールするのと同様に、最初にインストールする言語の選択、インストールするパーティションの選択などが表示される。ボリューム・サイズはインストール後にdiskpartコマンドで縮小できるので、必要なサイズが不明な場合はデフォルトのままインストールしておけばよい(TIPS「ディスクのボリューム・サイズを縮小する」参照。インストール後に適宜縮小する)。

言語の選択
MUI版(多言語版)のWindows Server 2008なので、最初にどの言語(のユーザー・インターフェイス)をインストールするかを選択する。この後、インストール先のディスク(ボリューム)の選択画面が表示されるが、それ以外は特に指定する項目はない。
日本語を選択する。

 インストール作業が終了すると、最初のログオン画面が表示されるので、Administratorのパスワードを設定する。次の画面で「Administrator」としてログオンすると、パスワードを変更する画面が表示されるので、新しいパスワードを入力する。

最初のログオン
最初に利用可能なアカウントはAdministratorのみである。パスワードを空のまま、Administratorでログオンする。
「Administrator」を指定する。
パスワードは空。
これをクリックすると、Administratorの初期パスワードを入力する画面が表示される。

管理ツールの利用

 最初にAdministratorとしてログオンすると、次のようなCUIのメニュー画面が表示される。これはHvconfig.cmdというコマンドによる、文字形式のメニュー画面である(このようなメニュー画面のツールはWindows Server 2008のほかのエディションには用意されていない)。

初期管理画面
CUIによる管理メニュー画面。再度実行する場合は、コマンド・プロンプト上で「hvconfig」と入力する。
ここに番号を入力すると、該当する作業が行われる。必要に応じて、さらにパラメータなどを入力するダイアログなどが表示される。

 この画面を見ると、Hyper-V Server 2008に対して行うべき初期作業がだいたい分かるであろう。一般的には次のような作業を順番に行い、Hyper-Vの実行環境とする。

  1. コンピュータ名やTCP/IPアドレスなどの変更
      安定的に運用するためには、コンピュータ名を組織のルールに合わせて変更したり、IPアドレスなどの設定を(必要ならば)固定IPアドレスにするなどの変更が必要である。この作業のためには、メニューの「2」と「3」を実行する。

  2. ワークグループからドメインへの変更
     Hyper-V Server 2008はGUIによるツールを持っていないので、ドメインに参加させてリモートから管理したり、グループ・ポリシーなどで制御するのがよいだろう。ドメインに参加させるためには、メニューの「1」を実行する(ワークグループのまま運用するなら、この操作は行わなくてもよい)。

  3. リモート管理の許可
      リモートから管理できるようにするためには、リモート・デスクトップを許可したり(メニューの「7」を実行)、リモート管理関連のポートを開けるなどの作業が必要である。このためにはファイアウォール(セキュリティが強化されたWindowsファイアウォール)の設定を変更する。具体的な手順については別稿の「Hyper-V実践サーバ統合術「より安全性の高いサーバ構築を可能にするServer Core」などを参照。なお、ファイアウォールの設定変更は、ドメイン参加後に行うこと(参加前に操作した場合は、参加後にも改めて行うこと。ワークグループとドメインでは利用されるファイアウォールのプロファイルが異なるからだ)。

 それぞれの具体的な操作は簡単なので省略するが(数字を入力すると、必要なパラメータを問い合わせるダイアログが表示されるので、それらに順に答えていくだけでよい)、基本的な操作はWindows Server 2008のServer Coreとほぼ同じである。ただしocsetupのような役割を追加する機能がないなど、かなり限定されたシステムとなっている。

Hyper-Vマネージャによる管理

 以上の設定が済めば、すでにHyper-Vが利用可能になっている。あとはHyper-Vの管理ツールで操作すればよいが、実はHyper-V Server 2008にはそのためのツールは用意されていない。リモートのWindows Server 2008やWindows Vista上にインストールしたHyper-Vマネージャでリモート管理するか、SCVMMツールを利用しなければならない。これらのツールのインストール方法についてはTIPS「Windows Server 2008のHyper-Vをリモートから管理する(ドメイン編)」や「Windows Server 2008のHyper-Vをリモートから管理する(HVRemote/ワークグループ編)」、連載「Hyper-V実践サーバ統合術」を参照していただきたい。ファイアウォールを設定して、リモートからHyper-Vを管理できるように設定しておく必要がある。

 なお、Hyper-V Server 2008をインストールしただけでは、VMではネットワークが1つも利用できない状態になっている。内部ネットワークや外部ネットワーク、プライベート・ネットワークなどのインターフェイスをまず自分で作成しておかなければならないのだ(デフォルトでは仮想ネットワーク・インターフェイスは1つも用意されない)。Hyper-Vマネージャを起動してHyper-V Server 2008にリモートから接続したら、[操作]メニューの[仮想ネットワーク マネージャ]を起動して、新しい仮想ネットワーク・インターフェイスを作成する。例えば外部と通信するVMに対しては、[外部]タイプの仮想ネットワークを作成して割り当てておく。End of Article

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