XML eXpert eXchange 第8回 読者調査結果発表 〜 XMLデータの出力状況は? 〜 小柴 豊 アットマーク・アイティ マーケティングサービス担当 2003/2/20 |
XMLがさまざまなデータのフォーマットとして採用されるにつれ、次に課題となるのはその出力方法ではないだろうか? マシン間のデータ交換で完結するシステムもあるだろうが、最終的に人間がデータを活用するためには、紙や画面などへの出力が求められるはずだ。本稿ではXML eXpert eXchangeフォーラムが実施した第8回読者調査から、読者のXMLデータ出力実態と、XML出力ツール利用意向についてレポートしよう。
■XMLデータ出力状況:XMLはペーパーレス化を推進する?初めに、読者のかかわるシステムでXMLデータをどのように出力しているかを尋ねた結果が、グラフ1だ。ご覧のとおりおよそ半数の読者が「Webブラウザによる表示など、デジタルデータとして出力する」と答えており、「帳票など、紙に直接印刷する」を大きく上回った。近年では情報共有や資源保護の観点からドキュメントの電子化が求められているが、デバイスを問わず柔軟な表示形態に対応できるXMLは、ペーパーレス化推進の重要な要素技術となりそうだ。
グラフ1 XMLデータの出力状況 (N=460) |
■XMLデータ出力フォーマット:主流はHTML
ところでひとくちに「デジタルデータ」といっても、現代においては多様化が進んでいる。そこでXMLデータをデジタル出力している読者を対象に、その出力フォーマットを尋ねたところ、「HTML/XHTML」利用率が8割に達していることが分かった(グラフ2)。「プレーンテキスト」「CSV/Excel/Access形式」「PDF」といったフォーマットの利用者もそれぞれ2割前後いるが、読み手の環境を問わずレイアウト/出力できるHTMLが、現在のXMLデータ出力の主流であるようだ。
グラフ2 XMLデータの出力フォーマット (デジタル出力者 n=278:複数回答) |
■XMLデータ出力用途:主目的は社内パブリッシング
続いて、読者がXMLデータを出力する際の用途/目的を見てみよう。グラフ3のように、現在は「報告書などの社内向けドキュメント」や「マニュアル/ホワイトペーパー/論文などの文書類」といった、主に社内向けのパブリッシング用途で多く使われているようだ。ただし「取引先に発行する請求書/受発注伝票などの帳票」出力者も現時点で2割を超えており、今後BtoBなどの電子商取引が進めば、社外向けの出力機会も増加すると思われる。
グラフ3 XMLデータの出力用途(XMLデータ出力者 n=318:複数回答) |
■XMLデータ出力方法:現在はHTML+CSS変換が一般的
ここまでXMLデータの出力フォーマットや用途を見てきたが、これらの出力を行う際、具体的にはどのような手順が取られているのだろうか? 読者が実施している出力方法を尋ねた結果、現在最も利用されているのは「XSLTでXMLデータをHTML+CSSに変換する」ものだった(グラフ4)。
HTMLによる出力は便利な半面、「Webブラウザによって表示が異なる」「HTMLにページの概念がないため、ページ単位できれいにレイアウトできない」といった弱点もある。XMLデータ出力を取引先など社外に発行する際は、これら弱点の克服が求められそうだが、XSL-FOによる組版(「XSLTでXMLデータをXSL-FOに変換し、組版エンジンでフォーマット」)や帳票ツールの利用は、いまだ少ない。XMLデータ出力にシビアなレイアウトを求める需要がまだ少ないこともあるだろうが、読者からは“XSL-FOの記述が難しい” “市販の帳票ツールは高価なものが多く、おいそれと導入を決められない”との声も寄せられており、今後XMLを普及させるうえでの課題の1つになりそうだ。
グラフ4 XMLデータの出力方法(XMLデータ出力者 n=318:複数回答) |
■XMLデータ変換/出力ツール利用意向:Apache XML Projectの成果に注目集まる
さて今回の読者調査では、XMLデータの変換/出力を支援するさまざまなツールの利用意向も聞いている。XML技術者が今後どのようなツールに注目しているのか、後半はその結果を紹介していこう。
まずモバイル機器にも対応した【コンテンツ変換ツール】を並べたところ、オープンソースの「Apache Cocoon」利用意向が商用製品を大きく上回る結果となった(グラフ5)。
グラフ5 コンテンツ変換ツール利用意向(XMLデータ出力者 n=318:複数回答) |
次に尋ねた【XSL-FO関連ツール】でも、変換ツール同様オープンソースの「Apache FOP」に人気が集まった(グラフ6)。FOPと上述したCocoonを組み合せることで、利用者に合わせたXMLデータの自動変換(HTMLやモバイル対応ページなど)に加え、FOを介したPDFの生成まで実行することができる。日本語情報の不足などの壁はあるものの、無料でこうした高機能なツールを提供している点が、Apache XML Projectの魅力といえる。
グラフ6 XSL-FOツール利用意向(XMLデータ出力者 n=318:複数回答) |
最後に【帳票設計/印刷ツール】の利用意向を尋ねた結果では、「Adobe Accelio Capture FormFlow」(アドビシステムズ)および「Super Visual Formade」(翼システム)といった製品の利用意向が高くなった(グラフ7)。日本独自の商習慣に基づいた複雑な罫線レイアウトや、改ざん防止など高度なセキュリティが求められるこの分野では、やはり商用製品ならではの対応力が求められるようだ。
グラフ7 帳票ツール利用意向(XMLデータ出力者 n=318:複数回答) |
■調査概要
- 調査方法:XML eXpert eXchange フォーラムからリンクした Webアンケート
- 調査期間:2002年11月6日〜29日
- 回答数:460件
- QAフレームワーク:仕様ガイドラインが勧告に昇格 (2005/10/21)
データベースの急速なXML対応に後押しされてか、9月に入って「XQuery」や「XPath」に関係したドラフトが一気に11本も更新された - XML勧告を記述するXMLspecとは何か (2005/10/12)
「XML 1.0勧告」はXMLspec DTDで記述され、XSLTによって生成されている。これはXMLが本当に役立っている具体的な証である - 文字符号化方式にまつわるジレンマ (2005/9/13)
文字符号化方式(UTF-8、シフトJISなど)を自動検出するには、ニワトリと卵の関係にあるジレンマを解消する仕組みが必要となる - XMLキー管理仕様(XKMS 2.0)が勧告に昇格 (2005/8/16)
セキュリティ関連のXML仕様に進展あり。また、日本発の新しいXMLソフトウェアアーキテクチャ「xfy technology」の詳細も紹介する
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