XML & Web Services 第11回 読者調査結果発表 〜 XML&Webサービスの活用はどこから進む? 〜 小柴 豊 アットマーク・アイティ マーケティングサービス担当 2004/1/24 |
XMLやWebサービスが“革新的な新技術”として登場してから、数年が経過した。最近では、一時に比べてメディアの熱狂も落ち着いた感があるが、XML/Webサービス技術はすでに“コモディティ”となったのだろうか? あるいは、一過性の流行として過ぎ去ろうとしているのだろうか? @IT XML & Web Servicesフォーラムが実施した第11回読者調査から、IT現場の状況をレポートしよう。
■XML/Webサービスの活用状況は?
はじめに読者がかかわるシステムにおける、XML/Webサービス(WS)の活用状況を尋ねたところ、「すでに活用している」のは回答者全体の29%(XML)/19%(WS)となった(図1)。ちなみに2003年4月度調査で同じ質問をしたときの回答は、同32%(XML)/16%(WS)であった。調査回答者を固定していないので厳密な比較はできないが、この8カ月間で見る限り、XML/WS技術の採用はほとんど進んでいない状況だ。XML/WSは、現在普及段階の“踊り場”に差し掛かっているのかもしれない。
図1 XML/Webサービスの活用状況(N=419) |
Webサービス普及の停滞感について、ビーコンITの岩本幸男氏は以下のような警鐘を鳴らしている(関連記事「Webサービスの光と陰を考察する」参照)。
このままでは(中略)「Early Adopters」とその次の段階である「Early Majority」との間にある大きなギャップ(Chasm)を越えられずに、既存の分散技術であるDCOMやCORBAと同様の運命をたどりかねない……。 |
岩本氏はこの停滞要因として、「業務に依存して個別最適化された現在のシステム形態が、企業全体/企業間のデータ流通を阻害している」と論じている。であるならば、今後XML/WSが本格的に普及するためには、企業システムの全体最適化を図る視点が必要となるだろう。現在情報マネージャ層で話題となっている“エンタープライズ・アーキテクチャ(EA)”は、まさにその視点を概念化したフレームワークだ。2004年は、「EAを実現する技術としてのXML/WS」の動向にも注目したい。
○関連記事:
- 緊急提言:Webサービスの光と陰を考察する(1)
- 2004年押さえておくべきキーワード:「EA」(@IT情報マネジメント)
■XML/Webサービスの活用が進む業種は?
ではXML/Webサービスを活用(予定・検討中を含む)している読者は、同技術をどのようなユーザーに適用しているのだろうか? 図2のとおり、多様な業種が挙げられた中、現在最もXML/WS適用が進んでいるのは「電子/電機」業界だった。電子/電機業界でXML/WS活用が進んだ理由としては、情報技術導入の当事者が多いことに加えて、RosettaNetのような業界標準が早期に確立された点が大きいだろう。現在も医療/会計/旅行など、さまざまな業界ごとの標準作成が進められていることから、XML/WSユーザーのすそ野は、今後さらに広がっていきそうだ。
図2 XML/WSシステムのユーザー業種(XML/WS活用者+予定・検討者 n=306) |
○関連記事:
■XML/Webサービスの用途とは?
次に上記ユーザーのシステムで、XML/WSがどのように活用されているか尋ねたところ、「社内システム間のデータ転送」が最も代表的な用途であることが分かった(図3)。一般にXML/Webサービスといえば、社内外の複数システムを連携/統合させるBtoBやEAIソリューションが連想される。しかしセキュリティやトランザクションに関する仕様の標準化が完了していない現段階では、社内データ転送のようなシンプルな取り組みが、XML/WS利用の現実的な典型例であるようだ。
図3 XML/WSの用途(XML/WS活用者+予定・検討者 n=306 複数回答) |
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■XML/WSシステムで利用するプラットフォームは?
XML/WSの利点の1つに、“プラットフォーム非依存”な性質がある。しかし実際のところ、その実装にはどのようなプラットフォームが利用されているのだろうか? XML/WS活用者および予定・検討者にその状況を尋ねた結果、現在は「Java/J2EE環境」の利用率が、ほかを大きく上回っていることが分かった(図4)。2003年11月に仕様が確定した J2EE 1.4 では、WS相互運用性に関する標準規格 WS-I Basic Profile 1.0 をいち早くサポートするなど、確かに“WebサービスのプラットフォームとしてのJava”は着実に強化されている。
その一方、.NET環境においても、プログラミングレスでWSクライアントを開発できるInfoPathが登場するなど、XML/WS開発の敷居を下げる動きが続いている。XML/WSが普及する過程では、多様なテクノロジで構築されたシステム間のデータ交換が想定されるだけに、今後のITエンジニアにもプラットフォーム非依存のスキルが望まれるだろう。
図4 XML/WSシステムのプラットフォーム(XML/WS活用者+予定・検討者 n=306) |
○関連記事:
■XML/WS関連の情報ニーズとは?
最後に、現在読者がXMLやWSのどのような情報に興味があるのか、そのニーズを尋ねた結果が図5だ。全体的にはXML/WS初心者を中心に、「概要/基礎知識」「関連要素技術の仕様」といったベーシックな情報への興味度が高くなった。また一歩進んだ読者からは、「XMLデータの入出力や変換に関する実践的なノウハウ」「XMLやWSを活用したソリューション事例」などの実践情報を望む声が多かった。@ITではこうしたニーズにこたえたコンテンツを、それぞれ“XMLカレッジ”“XML&Webサービス開発支援”としてまとめているので、興味のある方は下記関連記事も併せてご覧いただきたい。
図5 XML/WSに関する情報ニーズ(N=419 複数回答) |
○関連記事:
- XMLカレッジ(XMLとWebサービスを効率よく学ぶ@ITオンライン・カレッジ)
- XML&Webサービス開発支援(開発者のためのプログラミング、ツール、製品、開発事例を紹介)
■調査概要
- 調査方法:XML & Web ServicesフォーラムからリンクしたWebアンケート
- 調査期間:2003年11月17日〜12月10日
- 回答数:419件
「XML & Web Services フォーラム読者調査」 |
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