連載
BPMとBPMSの常識(1)


“経営とITの融合”を実現するBPMとBPMSの基礎知識

日本BPM協会 副事務局長
宇野澤 庸弘

2006/3/2

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BPMSの位置

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 BPMSは現場の業務プロセスを対象として、ERPCRMなどの基幹業務とのデータ連携・システム連携を担います。

 そこではBPMSは、図にあるように既存の業務システムと人との間に位置し、現場の業務を仲介・実行していきます。すなわちBPMSはミドルウェアという位置付けで、そのうち「ポータル」「BPMS」「EAIESB」は、Webシステムの三種の神器と呼ばれます。

図2 新しい領域を広げるBPMS(出所:Savvion)

 

BPMSの機能

 経営との融合を図るITシステムは、業務の成長・企業の発展と同期して変更・成長できることが必要です。つまり将来の変更・成長を担保する仕組みが、BPMSには求められるわけです。そのためにBPMSは、図3のような多くの機能とそれらの均整の取れたリンクが必要となります。さらに、実行プラットフォーム/実行エンジンとして強固な基本機能(可用性・拡張性・安定性・オープン性)も必要で、極めて大切なポイントです。

図3 BPMSの機能

プロセスモデラー 業務プロセスのモデル化ツール。モデルの表記法としては、国際標準のBPMNが主流です
組織モデラー 企業組織・人事組織のモデリングが業務のモデル化とリンクして必要となります
シミュレーション モデル化された業務プロセスをシミュレーションし事前評価を見ます
ワークフロー モデル化された業務プロセスを自動的にシステム化します
ビジネスルール管理 業務ノウハウをビジネスルール化し、きめ細かな実行をします
ソフトウェア開発 ほかのシステムとの連携・制御のために柔軟な開発が必要です
EAI EAI(Enterprise Application Integration)機能です
プロセスモニタリング BAM(Business Activity Monitoring)も含め、業務の実行経緯・結果の情報が業務の改善には必要になります
ビジネスプロセス標準言語 BPM実行のために各種言語が策定されてきます。そのサポートもBPMSには大切な要件です

 

BPMSはシステム全体の中核

 BPMSの下位にERP/CRMなどの既存の業務アプリケーションが、そして上位にはレポーティングやポータルなどのフロントエンド・ツールが位置付けられています。BPMSはまさに企業システム全体を結び付ける中核エンジンとして、大きな役割を担っています。上記の強固な基本機能とは、このことを示しています。

図4 BPMSはシステム全体の中核

 次回は、BPMSを実際に導入する際のポイントや先行する米国市場の状況、そしてBPMがつくり出す新しいIT産業などについて解説していきます。

筆者プロフィール
宇野澤 庸弘(うのざわ つねひろ)
日本BPM協会 副事務局長
アレス株式会社代表取締役
日本プロセス株式会社 サヴィオン事業部 事業統括本部長
東芝、ノベルで通信ソフト・ネットワークソフトの開発・販売に携わり、SSC栃木でテスティング事業を創設する。2000年、BPMと邂逅。現在、日本プロセス サヴィオン事業部 事業統括本部長としてBPM事業を展開中。BPMがIT産業の変革を促し、ユーザー視点からのITシステム実現を促進するため、業界横断的に活動を行っている。
オルタナティブ・ブログ「Hello! BPM」
■要約■
“俊敏な企業”への変革を目指すには、企業固有の組織風土・ビジネス構造の違いはあっても、ビジネスプランナーとIT(広い意味では情報技術)技術者が戦略的整合を持つことが必要だ。

そこで、KIU研究会では、旧来の組織/ITに替えて「業務プロセス主導型組織」「SOAなどに基づいた柔軟なITシステム」が連携するBPM指向の組織革新を提唱する。

しかし、SOAの考えを企業システムに適用し、BPMシステムを導入したとしても、それだけで“俊敏な経営”が実現されるわけではない。

今回、「BPM導入成熟度ロードマップマトリックス」をまとめた。これは5つの変革視点と5段階成熟度(マネジメント度とIT機能との連携度)からなり、「企業の俊敏性を追求するBPM/SOA導入」の要諦を示すものである。KIU研究会では、今後ロードマップのさらなる精緻化を進めるとともに、KIU研究会メンバーによる各種診断プログラム、ソリューションなどのマッピングも進めていく。

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