
連載:IFRS準備のイロハ(2)
IFRS対応ロードマップの作り方
榎本義広、伊藤雅彦(監修)
株式会社日立コンサルティング
2009/8/31
限られた時間やリソースの中でIFRS導入を円滑かつ確実に進めるためのキーとなるのが、「IFRS導入の影響度を踏まえたロードマップの策定」だ。その必要要素を説明しよう(→記事要約<Page 3>へ)
PR
前回述べたように、IFRS(国際財務報告基準、国際会計基準)導入に向けては、単なる会計制度の見直しのみならず、業務、ITシステム、体制、要員育成、文書整備、各種調整等、多岐にわたる検討事項が存在する。また、仮に2015〜2016年にIFRS強制適用とした場合、比較年度の準備を考慮すると、2013年までにはIFRS導入の準備を完了させておくことが望ましく、必ずしも十分な時間があるとは言えないのが実情である。
このように限られた時間やリソースの中で、IFRS導入を円滑かつ確実に進めるためのキーとなるのが、「IFRS導入の影響度を踏まえたロードマップの策定」である。今回は、「ロードマップ」策定の意義や、その内容(要件)、標準的な策定作業手順について論じたい。
IFRS導入は3ステップで
IFRS導入は、大きく、「調査・分析」→「適用・構築」→「運用・改善」という3ステップで進めていくことが望ましい。それぞれの概要は以下の通り。
(1)調査・分析:全体の方向性を定めた上で対応アクションを定義し、それぞれを具体的な計画(実行計画)に落としこむフェイズ
(2)適用・構築:業務ルール見直し、ITシステム改定、運用体制構築等、IFRS導入の準備を行い、範囲を定めて試行を行うフェイズ
(3)運用・改善:IFRS対応を実現する新業務・システム・運用体制等をグループ会社へ展開しながら、順次監査法人のレビュー含めたテスト運用・改善→本番運用を進めていくフェイズ
前回述べたとおり、IFRS導入には様々な準備事項が想定されるため、「適用・構築」フェイズに十分な期間を見込んでおく必要がある。また、計画なく実行に入ると、不要なコストの発生、抜け漏れの発生、あるいはIFRS強制適用の対応不可能な状況に陥るといったことにもなりかねないので、「調査・分析」フェイズでは、自社にとって最適な計画を策定することが重要になる。従って、どのステップも省略すべきではないと考えられる。
![]() |
IFRS導入完了までのアプローチ(日立コンサルティング資料から作成) |
この全体アプローチの中で、「IFRSロードマップ策定」は、「調査・分析」フェイズの初期段階に当たり、全体の方向性を定める。ここで策定したロードマップに基づき、個々の施策を(整合性を維持しながら)具体化し、実行計画を策定することになる。
では、なぜ、IFRS導入の初期段階で「IFRSロードマップ策定」を行うことが望ましいのか、次に述べることにする。