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連載:IFRS準備のイロハ(2)

IFRS対応ロードマップの作り方

榎本義広、伊藤雅彦(監修)
株式会社日立コンサルティング
2009/8/31

限られた時間やリソースの中でIFRS導入を円滑かつ確実に進めるためのキーとなるのが、「IFRS導入の影響度を踏まえたロードマップの策定」だ。その必要要素を説明しよう(→記事要約<Page 3>へ)

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ロードマップ策定の意義

 IFRS導入に必要な期間・コストは、業界特性や自社の現状、取り組みに対する考え方などにより、各社で異なってくる。

 例えば、既存の仕組みでの対応が困難で基幹システムの大幅な改修が必要となった場合や、グループガバナンスの強化や業務標準化など、IFRS導入を契機として業務品質の向上やコストの削減を狙う場合には、それなりの期間や投資コストが必要とされるだろう。一方、IFRS対応による影響が限定的で、かつ、すでに充分な体制・仕組み・規定等を備えているような企業では、さほど大きな期間・コストを必要としない可能性もあり得る。

 従って、IFRS導入は、決められた基準に則ってどの企業も横並びで同じような対応を行えばよいというものではなく、自社の意思に基づいて取り組みを明確化し、推進していくことが重要である。その判断を見誤り、準備に着手してしまうと、コストの増大やメリットの喪失につながりかねない。よって、具体的検討着手の前段階として、自社の実情に即して、IFRS導入の全体感を把握することがポイントとなる。これを実現するのが「IFRSロードマップ」であり、ロードマップ策定を行う意義は以下の通りとなる。

  • IFRS対応事項の抜け漏れ防止
  • IFRS導入に係る重複作業や手戻りの発生防止
  • 恒久対応策と暫定対応策の早期見極め→IT投資計画の策定
  • 現在進めている他の取り組みへのインパクトの早期見極め→各取り組みの継続や進め方・スケジュールの判断
  • 早期の全体コスト見通し→取り組み予算の確保
  • 早期の取り組み内容・全体ボリューム見通し→取り組みリソースの確保
  • 取り組みに必要な社外リソースの早期見極め、確保
  • 全体感の共有・可視化による、社内のベクトル合わせ(方向性の一致)


  なお、ロードマップ策定は、できる限り早いタイミング、可能であれば2009年度中に取り組んでおくことをお薦めする。前述の通り、準備完了に至るまでにどのくらいの期間・工数・コストを要するのか、早い段階で見極めることが重要であり、そうすることで、時間をかけることでより高いメリットを生み出す選択肢の採用や、経済状況等に応じた柔軟な投資予算・リソース配分、トレーニング・試行・検証等に対する十分な期間の確保、といったことが可能になる。

IFRSロードマップの要件

 上記の意義を果たす具体的なアウトプットが「IFRSロードマップ」である。その書式等は各社各様になることが想定されるが、少なくとも以下の要件を事前に備えておくと、その後の作業を円滑かつ確実に進めることができると考えられる。

  • IFRS制度状況(コンバージェンスやアダプションなどの動き)と整合していること
  • IFRS導入の自社への影響度を、経営レベル・実務レベル、組織・業務・ITといった様々な観点で把握できていること
  • 自社の方針・意思を踏まえた取り組みテーマの洗い出しができていること
  • 複数の取り組みの関係性が整理されており、前後関係等の整合性が取れていること
  • 自社の方針・意思や現状、制約条件等を踏まえて各取り組みテーマの優先度が明確になっていること
  • 取り組みテーマごとに、必要な対応方法(業務・IT・組織・人材育成……)が明確になっていること
  • 導入前のコストと導入後の運用に係るコストの双方を踏まえた検討がなされていること
  • 個別対応の積み上げでなく、全体感をつかめる内容になっていること
  • 導入後のスムーズな導入・定着化を実現するために必要な準備事項(トレーニング等)や期間も織り込まれていること
  • リソースや時間の制約等を踏まえた、合理的なタイムラインになっていること

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