今世紀最後を飾るITイベント、OOW

2000/12/15

ビデオで日本のユーザーにメッセージを送るエリソン会長

 日本オラクルが2年ぶりのOOW(オラクル・オープン・ワールド)を開催中だ。初回の94年から振りかえると、「オープンシステム」「クライアント/サーバ」が流行、その後、エリソン会長の提唱する「ネットワークコンピューティング」とともに、90年代後半にはインターネット対応を示す製品群の“i”化を行った。そんな歴史を経て、今年は「Software Powers the Internet」(インターネットを加速するソフトウェア)がテーマ。

 初日の12月14日、会場となった東京ドームには開場前から長蛇の列が続く。セッション数は178、出展社数は100を超えるなど、同社のみならず、ユーザーやパートナーが待ち望んだ「20世紀最後を飾るIT業界のイベント」(同社 新宅正明社長)、第6回OOWとなった。

「オラクルはRDBMSでシェア1位、ERPでは2位」と強さをアピールする新宅正明社長

 オープニングセッションで登壇した同社代表取締役社長最高執行責任者新宅正明氏は「スモール“e”からラージ“E”の時代。本格的に企業が自身の事業を“イー”化する時代が到来した」と語り、同社は“イー”を支える基盤ソフトウェアを提供すると宣言した。

 新宅社長は「Oracle 9i」「Oracle Exchange」とサービス事業の3つの柱で「B、BtoB、そしてBtoBtoC、企業活動全体をカバーする」という。さらには、衛星デジタルやモバイルなど新しい分野へ着目していることもアピールした。

エリソン会長の“新ミレニアムのソフトウェア”とは

 同じ14日の夕方開催された基調講演では、予定されていたOracle Corporation会長兼CEOのラリー・エリソン(Lawrence Ellison)の講演は、「のっぴきならない理由のため来日が実現せず」(同社代表取締役会長佐野力氏)、ビデオによるメッセージとなった。

 創業23年の同社は現在、2つの技術製品(データベースとアプリケーション・サーバ)しかもたない。エリソン氏はビデオの中で、その決断に至った経緯を話す。「今の企業システムでは、カスタマーがそれぞれ異なる製品を組み合わせたコンフィギュレーションを行っている。これではだめだ」とエリソン氏。アプリケーションでも同じことがおこっているという。「IBMではソフトウェア事業は減収で、SI事業が伸びている。ほとんどの産業で、人手を省き機械化・自動化を進めているのに、コンピュータ業界だけが逆行中。根本的に間違っている」(エリソン氏)。そのために「ソフトウェアはソフトウェア企業が開発するのであって、カスタマーが開発するものではない。皆が検証済みの同じもの、完全な(complete)スイート製品を用いる。これが新しい時代の成熟したソフトウェアの形だ」。

データベースの域を越えるオラクル

 展示会場では、オラクルを中心にハードウェア・ベンダーやSIベンダー各社がそれぞれ最新のソリューションを展示、多くの来場者の注目を集めていた。展示会の性格上、新製品等の展示はほとんど見られなかったが、気になったトピックを紹介しておこう。

日立製作所のブースでは、携帯を利用して家電をコントロールするデモが行われた 50色から選べるフリースをネット上で販売して話題になったUNIQLOブースも登場。UNIQLOのネット販売システムは、コンパックのクラスタサーバにOracle Parallel Serverを組み込み、Internet Application Serverでシステムが記述されているという

 日立製作所のブースでは、「Portal-to-Go」を用いて携帯電話等で家庭内の電気機器をリモートで管理するソリューションのデモストレーションを行っていた。「Field Server」と呼ばれるゲートウェイサーバを各家庭に設置、家庭内の家電ネットワークをインターネットと結び、携帯電話などを利用してリモートで家電のコントロールができるようになるという。ゲートウェイサーバにはセキュリティ機能が搭載されるほか、各種のニュース情報などを収容できるようになっている(家庭側の家電ネットワークには家電業界標準の100V電源を利用する予定)。説明ではさらに、各家庭のField Serverを集中管理するコントロールセンターを設置する予定だという。センター内には顧客情報をストアするストレージ機器とOracleデータベースのほか、携帯電話などからの操作を容易にするため「Portal-to-Go」を用いてアクセスの玄関口を用意する。

インターネットと家庭内の家電ネットワークとを結ぶホームゲートウェイ「Field Server」の参考展示

 今回、展示場全体を眺めて感じたのは、Oracleというデータベース製品をキーに、ERP/SCM/CRM/SFA/BtoBなど、企業のバックエンドシステムにおいて、じつにソリューションが多様化してきていることだ。オラクル自体も、アプリケーション・サーバ「Internet Application Server」やERPの「E-Business Suite」、ポータル機能を提供する「Portal-to-Go」など、多様な製品のリリースを続けており、もはや、"データベース・ベンダー"という枠だけでは囲いきれなくなってきたといえるだろう。水平方向への展開を始めたオラクルが、今後どのような展開をしていくのかに注目したいところだ。

 オラクル・オープン・ワールドは12月15日まで開催されている。

(編集局 鈴木淳也、末岡洋子)

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