「今後5年間の1ユーザー当りの帯域幅は減少する」とガートナー

2001/3/29

 ブロードバンド関連のニュースが多い昨今、多くの人がブロードバンド普及を“必然”、あるいは“当然”と受けとめているのではないだろうか。そして、その流れを阻害する要因についてはあまり議論されていないようだ。それをブロードバンド普及に対し楽観的姿勢とするならば、今後5年間に限ってみた場合、われわれの楽観的な予測を裏切るレポートがあるアナリストより発表された。ガートナーが3月29日に開催するカンファレンスのために来日した同社アナリストのイアン・キーン(Ian Keene)氏は、記者に対して次のようなプレゼンテーションを行った。

イアン・キーン氏 第3世代(3G)携帯電話に関しては、市場成熟に2年ほどかかると見ている

 「今後5年間、1ユーザーあたりの使用帯域幅は減少する」というのが、ガートナー データクエスト部門 ワールドワイド・オペレーションズ・リサーチ E-ビジネスセグメント バイスプレジデントのイアン・キーン氏の主張だ。キーン氏の主張の根拠は、デバイスと市場を取り巻く環境の2つからきている。

 デバイスについては、PCが圧倒的に強かった北米市場に対してアジア、ヨーロッパは異なる経緯をたどるとキーン氏は予測する。そして、携帯電話などモバイルの環境からインターネットにアクセスする場合、通信速度は遅くなる。インタラクティブTVでも同様のことがいえる。また、PCからアクセスする場合でも、料金などの理由からISDNやアナログ環境のニーズは当面顕在だという。ユビキタス性(偏在性)と帯域の幅は比例して進展しないということだ。

 社会環境に関してだが、“デジタル・デバイド”という言葉を耳にして久しい。キーン氏はこの“デジタル・デバイド”に対し「政府は対策を打つというが、すぐに差(デバイド)が縮まるとは思えない」と見ている。そして、ネットワークにアクセスするユーザー層の広がりにより、結果として1ユーザーあたりの帯域は狭くなるのだという。

 キーン氏は、現在のブロードバンド普及の地図を“島”に例える。「今のところ、広帯域サービス提供社の要求する高額な料金を支払うことができる“限られた人・企業”の間で広帯域化が進展しているのにすぎない」。

 ケーブルモデムおよびxDSL、EthernetMAN(都市圏ネットワーク)の普及は確かに進むが、帯域の太さと料金の高さを軸に取った場合、ほとんどのユーザーがナロー(狭い)で安い方を選んでいるのが現状という。

 サービス・プロバイダに対し、「ブロードバンドに対してより現実的・実践的になるべきだ」と同氏は訴える。また、多種多様な技術が共存するため、「ある技術やサービスに特化して提供することが生き残りの策」ともコメントしている。

 eビジネスはたしかにベンダー、サプライヤーにとってビジネスの機会を創出するものだが、その進展のためにはネットワークの整備は不可欠だ。eビジネススと広帯域化がスパイラルに展開するというシナリオは簡単に実現しそうにないようだ。

(編集局 末岡洋子)

[関連リンク]
日本ガートナーグループ
「Dataquest Predicts 情報システム産業会議2001

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