KDDIの携帯Java仕様はMIDP、NTTドコモへの包囲網が進む
2001/4/13
KDDIは4月12日、今夏に出荷を予定しているJava搭載携帯電話の仕様を発表した。NTTドコモのiモードJavaが独自仕様であるのに対し、KDDIはサンが携帯端末向けの標準的なプロファイルとして策定したMIDP(Mobile Information Device Profile)ベースの仕様を採用する。携帯Javaの仕様に関してはJ‐フォンもMIDPの採用を表明しており、これでNTTドコモ以外の主要キャリアは揃ってMIDPを採用し、NTTドコモの仕様に真っ向から対立するかたちになる。コンテンツプロバイダはキャリアごとの仕様に対応したJavaプログラムを書く必要に迫られることになり、Write Once, Run AnywhereのJavaのメリットはますます生かせそうにない。
Java実行環境にはJ-フォンも採用を決めているアプリックスの「JBlend」を採用する。JBlendはソニーやサンヨーなどの家電製品に採用されてきたことで知られるITRONベースのJava実行環境。NTTドコモの503iシリーズの一部の機種にも採用されており、非常に高速に動作する携帯電話向けのJava実行環境としても注目を集めつつあるプラットフォームだ。
ダウンロード可能なサイズは、JADファイル(JARファイルのファイル名やサイズなどを記述)とJARファイル(Javaプログラム本体や画像等のアーカイブ)を合わせて50Kバイト以下と、iモードJavaの10Kに比べれば制限が緩い。また、iモードJavaがセキュリティ上の理由からJavaプログラムから携帯電話内のメモリアクセスを許可しないのに対し、KDDIの仕様はそれを可能とした。これは例えば携帯電話内のアドレス帳を共有するJavaプログラムも実現できることになり、より工夫を凝らしたJavaアプリケーションの作成が可能になる。
しかし、携帯内へのメモリアクセスが許可されるのは、セキュリティ上の問題から公式コンテンツプロバイダから配信される安全が確認されたJavaアプリケーションに限られる。KDDI網のサーバで配布元が公式コンテンツプロバイダであるかを確認してセキュリティレベルを設定し、勝手サイトと呼ばれる一般のサイトからのJavaアプリケーションに対してはメモリアクセスが許可されない仕組みを導入する。J-フォンもKDDIと同様にメモリアクセスできる仕様を採用したが、Javaアプリケーションは公式コンテンツプロバイダのものしか利用できないとしている。
注目の機能としては、auのメールサービスである「Cメール」を利用したJavaアプリケーション間での通信があるほか、オムロンが開発を進めているモバイル・エージェント技術「Jumon」を利用すれば、コンテンツプロバイダは、これまで以上にコンテンツサービスの多様化と差別化を図ることができる。
Jumonはオムロンが研究開発を進めてきたモバイル用のエージェント技術。小型のモバイルエージェント・ミドルウェアという特徴だけでなくORBとしての機能も持つ。ネット対戦型のゲームやチャット、さまざまなPtoPのサービスが構築しやすくなるほか、エージェント独特の機能として、携帯電話間をJavaアプリケーションが自立的に渡り歩いて全員に都合のよいスケジュールを作成したり、希望する条件を指定しておくとそのうちに期待に沿った旅行ツアーを検索してきてくれるといったサービスを構築できる。なお、オムロンは昨年よりバンダイと共同でJumonを使った携帯Java向けのコンテンツサービスの開発を行ってきている。今後、キャリアを越えて幅広くサービスが展開される予定だ。
端末の発売は6〜7月くらいになるという。具体的な仕様や開発環境についてのアナウンスはその直前になるとみられる。
一方でKDDIは、C/C++でコードを書く携帯アプリ用プラットフォーム「BREW」を年内にも採用すると発表している(「クアルコム、携帯アプリ向けの新プラットフォームを発表」を参照)。BREWはJavaよりも高速でアプケーションの自由度が高いプラットフォームとして注目されているが、KDDIはこのBREW上でJavaVMを動作させる可能性もある。NTTドコモのiモードへの巻き返し策が着々と準備されている。
(宮下知起)
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