「IBMを凌ぐ」とサンのエド・ザンダーCOO
2001/3/23
米サン・マイクロシステムズの社長兼COOのエド・ザンダー(Ed Zander)氏が3月22日、都内で会見を開いた。同氏はサンのビジョンを実現し、ビジネス全般を統括する役割を果たす人物。この日は米国経済減速という環境下での同社の今後の戦略を中心に、記者団の質問に答えた。戦略は引き続き“インターネット・インフラ企業のトップ”
「方向としてはこれまでの戦略で正しいと思っている。引き続き現在の路線を進めていく」と開口一番に述べたザンダー氏。サンはこれまで、「インターネット・インフラ企業のナンバー1になること」をミッションに掲げてきた。先週発表された世界サーバ市場シェアの調査結果で、同社はIBMに次ぐ第2位の座に着いた(ちなみに前年は4位)。ザンダー氏は「小さなワークステーション・カンパニーからトップクラスのエンタープライズ・サーバのベンダーへと成長を遂げた」と語る。
このところ、米国IT業界の業績不振やレイオフ(解雇)、株価下落が話題だ。同社では、2000年度の業績は4%アップする見込みだという。だが、株価は(緩やかではあるが)例外に漏れず下落している。こういう状況について、「私はエコノミストではない。ストックマーケットの短期的なアップ・ダウンでビジネスを管理すべきではない」とザンダー氏は同社の経営方針が長期的視野に基づいたものであることを強調する。
軽快な口調が印象的だったザンダー氏は54歳。マーケティングや経営での手腕の評価は高く、米ビジネス誌では“Web界の指導者25人”に選ばれた |
同社は今後も引き続き、マイクロプロセッサ、ストレージ、サーバなどのハードウェア、SolarisやJavaなどのソフトウェア、教育を含むサービス、といった分野に注力していくという。「インターネットやドット・コムがビジネスや個人の生活を変える技術であることには変わりはない。わが社は引き続きその技術を提供していく」(ザンダー氏)。特にストレージには力を入れていく模様。「巨大なビジネス機会がある」とし、昨年来営業やサポート部隊を強化するなど、積極的に取り組んでいることをアピールした。
「ライバルは?」との問いに対し、具体的な企業名を挙げず、「マーケットシェアをとる」と返した。サーバ部門では、IBMやHP、コンパックらに対し「(わが社のほうが)競争力はある」と優位性を強調、中でも「IBMはシェアを失っているし、価格性能比やスケーラビリティではサンの方が優勢だ」とトップの座を狙っていることを隠さなかった。
Linuxに関してはやや否定的な表情で応じた。「われわれはオープンソースには賛同する」としながら、巨額をLinuxに投じるIBMや各ディストリビューターの動きを「市場にあるLinuxは無償ではない。しかも、提供するベンダーに依存している」と注意を喚起した。
新サーバーシリーズ「Sun Fire」
同社は米国時間3月21日、新サーバシリーズを発表した。メインフレームレベルの性能・機能をミッドレンジの価格で実現する新しいハイエンドサーバシリーズ「Sun Fire」だ。“availability is everything(可用性がすべて)”を合言葉に、さまざまな部品を冗長構成とすることで可用性を高めている。また、稼動中のマシンのシステム構成や部品の交換が動的に可能であることも特徴だ。例えば、マシンを稼働させたままCPUやメモリ、I/Oシステムのアップグレードや交換ができるという。
ザンダー氏はIBMやHPといったコンペティタに大きく差をつける製品と自信を見せる。「14年かけて到達した、あっと驚く製品だ。シングル・バイナリ・コンパティブル・アーキテクチャにより3tierコンピューティングを実現するものとなる」。
PtoPは時期尚早
Java、Jiniといった技術を考案してきた同社は、先月PtoPの構想「juxtpose」を発表した(2月24日付け記事参照)。が、これに関しては「まだ早い」と制する。「まだコンピューティングで行うべき課題はある。次の課題はJini、これでプラグ&プレイを実現する。PtoPでどんなアプリケーションが登場するかといった話はその後」。
ザンダー氏は技術を取り巻く環境が加速気味であることに警告を発する。「われわれはまだ、インターネット時代の第1章にいる。技術が心理的、社会的に適応されるには時間がかかる」とザンダー氏。「1970年代にPCが登場したとき、だれが今の時代を予測できただろうか?」
「技術や革新をもっと自由に発達させるべきだ。ある技術がどう利用されるか、どんな利用方法があるのかはすぐには分からない。それには我慢(patience)が必要」(ザンダー氏)。
(編集局 末岡洋子)
[関連リンク]
サン・マイクロシステムズ
「Sun
Fire」の発表資料(英語)
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