Linuxの研究施設OSDLが日本に施設を設置

2001/5/31

 米オープン・ソース・デベロップメント・ラボ(Open Source Development Las:OSDL)は米国に次いで2番目の施設を日本に開設することとなった。来日した米OSDLディレクター Timothy Witham氏は、日本のスポンサー企業とともに会見を開き、OSDLの趣旨や日本の開発者への期待について語った。

 OSDLはLinuxを企業システムや通信インフラなどに適用できるレベルにすることを目的に、米国で2000年に発足した非営利団体。現在、オレゴン州に研究施設を持ち、参画企業数は19社にのぼる(「業界リーダーらがLinux開発者のためのオープンソースラボを開設」参照)。

 Witham氏は「Linuxをミッションクリティカルな領域に対応できるシステムにするためには、設備が課題だった。OSDLではオープンソース・コミュニティの概念に基づき、開発者に無償で施設を提供する」と語る。

Witham氏 Linuxを企業システムとして見たときの課題として「可用性、高信頼性を実現することはもちろん、ユーザビリティも重要」と語る

 OSDLを利用するためには、自分のプロジェクトがODSLから認可される必要がある。プロジェクトの選定に関しては、オープンソースかどうか(オープンソース・イニシアティブにのっとったもので、Webサイトを持っていること)、大規模な設備が必要かどうかの2点が問われる。これらの条件をクリアすれば、先着順で施設の使用が許可される。

 中立性を保つため、スポンサー企業はハードの提供を行うのではなく資金を提供する。機器はプロジェクトに基づきOSDL側の意思で購入する。「(マーケティング色の強い)ベンチマークではなく、パフォーマンスを検証する場」(Witham氏)。現在、集まった資金は約2400万ドル。

 日本に世界で2番目のOSDLを設置することについて、「日本およびアジア地区でのLinuxの採用が積極的なこと、参加企業19社のうち5社が日本企業であること」の2点を挙げる。日本の研究施設の位置付けはOSDLの拠点で、米国本体と離れて活動することはない。新施設を利用して進められるプロジェクトの決定も本体が行う。施設は東京近郊に設置予定で、2001年10月以降には日本語のWebサイトを用意し、活動状況を知らせたり、プロジェクトを募る場とする。

 「Linuxはオープンソースで発達してきた経緯を持つ。オープンソースの場でエンタープライズ・レベルに押し上げて行く活動を盛り上げたい」と出資企業の1社であるNECソリューションズ コンピュータソフトウェア事業本部長の伊久美功一氏。同じく出資企業の1社である富士通 ソフトウェア事業本部Linux統括部 統括部長代理 工内隆氏は、「Linuxが進化するためにはある一定のスピードで機能が実装されていくことが必要。それには個人や企業内では限界がある」とオープンソース活動への期待を語る。それに付け加えオープンソースならではの「(企業が思いつかないような)画期的なプロジェクトが出てくることにも期待したい」と工内氏。

 同組織への出資企業は19社。日本企業の富士通、日立製作所、ミラクル・リナックス、三菱電機、日本電気のほか、Caldera International、コンピュータ・アソシエイツ、Covalent Technologies、デル・コンピュータ、ヒューレット・パッカード、IBM、インテル、Linuxcare、LynuxWorks、Red Hat、SGI、SuSE Linux AG、ターボリナックス、VA Linux Systemsがある。

[関連リンク]
OSDL
NECの発表資料
日立製作所の発表資料
富士通の発表資料
ミラクル・リナックスの発表資料
三菱電機

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