「効果が出ない日本のCRMを変える」とSAPが本格参入

2001/10/19

 SAP ジャパンは10月18日、CRMの最新版「SAP CRM 3.0」を発表した。新バージョンより単体でも導入が可能となり、新規顧客獲得も視野に入れてCRM事業に本腰を入れる。出荷は10月22日より開始する。

就任2年目の藤井社長 日本市場は好調で、ERP事業(ソフトウェアの売り上げベース)は対前年度比30%増で伸びているという 

 冒頭であいさつをした同社代表取締役社長 藤井清孝氏は、今バージョ ンよりR/3を導入していない顧客でも導入できるようにしたことに触れ、「それだけ市場のニーズが高まっている」とした。「デフレ経済ではコスト削減が最大の課題となる。コスト削減や業務の効率化は、アジアや欧米の企業に比べ、日本企業の対応の遅れが指摘される分野、「ERPやCRMは日本企業の課題を解決するツールだ」(藤井社長)。

 ERPのイメージが強い同社、この分野ではシーベルやオラクルなどの競合で必ずしもリードしてきたわけではない。藤井社長は、「これまで、(他社製品と比べると)必ずしも最前線の製品を提供できていたわけではない」と認めながら、新製品では専業ベンダの製品並みの機能を実現した、と自信を見せる。同社では全社方針として、CRMをはじめとしたERPの周辺事業に取り組んでいく。そのために体制も整えており、10月1日に新事業部「ストラテジ ックソリューショングループ」を設けた。ERPが浸透した後の主軸を担うように、いまから育てていくという。

 SAPでは、SAP CRM 3.0を“第3世代のCRM”と位置付ける。第1世代がポイントソリューションのCRM、第2世代がフロントオフィス・ソ リューションだったのに対し、第3世代では、eビジネスを含めた企業の全プロセスのリアルタイム統合を実現するという。「日本のCRM導入で効果が出ない要因は、ポイントソリューション製品を部門内で導入していたため。顧客ライフサイクルの視点がなかった」。

 第3世代の製品となるSAP CRM 3.0では、これまでのCRMで欠落していた、ERPなどバックオフィスとの連携、顧客との各接点で収集したデータの統合などの実現により、「セールスからサービスまで、顧客のライフサイクルのバリューチェーンを一気通貫してサポートできる」と製品担当のストラテジック ソリューショングループ CRMビジネスディベロップメント ディレクター三村真宗氏は説明する。

 ERP導入済みの顧客をターゲットとしていた前バージョン(2.0)に比べ、新バージョンで強化された点は、マルチチャネルの完全な対応、オペレーショナル機能の充実、グループ企業間での導入が可能 となったことなど。特に、分析系機能を大幅に強化、「Business Warehouse」に蓄積されたデータを含むデータマイニングによるマーケティング活動が行なえる。また、LRP(作業員リソース管理)の自動化とGIS機能を連携させることににより、サービス担当者の地理情報、スキル情報などに基づき、最適 な人員を配置できるという。ビジネスマネジメント側では、バランススコアカードとの連携をさらに強化した。

 提供は、ユーザー単位でのライセンス契約。同社によれば、すでに3社が新バージョンの導入を決定しており、検討中の企業は80社弱あるという。来年までに契約者数50〜60社の達成を見込む。

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SAP ジャパン

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