ディザスタ・リカバリは、企業の負うべきコスト

2002/3/1

 サイベースは2月26日、昨年9月11日に起きた米国同時多発テロの教訓を生かした、災害時の情報資産、情報システム、ビジネスに及ぼす影響を最小限に抑え、最短時間で復旧させるためのノウハウを、「ディザスタ・リカバリ(災害復旧)セミナー」という形で公開した。

米サイベース上級副社長兼エンタープライズ・ソリューション事業部ゼネラルマネージャ Dr.ラジ・ネーサン(Dr.Raj Nathan)氏

 阪神大震災や米国同時多発テロのような事件・事故が起きた場合は、システムが利用できないだけでなく、業務の遂行に必要なすべての機能が停止してしまうという最悪の事態となる。これら災害への最善の対応策としていま注目を集めているのが、「ディザスタ・リカバリ・ソリューション」で、サイベースは、災害に対応できるディザスタ・リカバリ環境への移行を、企業は急ぐ必要があるという。

 同セミナーの冒頭、米サイベース上級副社長兼エンタープライズ・ソリューション事業部ゼネラルマネージャ Dr.ラジ・ネーサン氏は、災害復旧対策の必要性を述べた。同氏によると、ITアプリケーションは、アベイラブルでない(利用できない)場合にどのように対応したらよいかを考え作られてきたが、米国同時多発テロのような事態への対応は考えていなかったという。しかし、この事件を境にして、今後同様の事態が起きるということを、考慮しなければならない時代になった。ネーサン氏はその事態に対処するために、「現在の基幹業務を行っているシステムなどは連続性・安定性に対して、万が一のときのシステムリカバリ、Webサイトリカバリなどが重要であることを認識すべきだ。これらリカバリは、システムの一部であり、事前にプロジェクトの一部として準備しておく必要があると理解すべきだ」と、来場者に意識改革を促した。

 続く同セミナーの基調講演では、マーシュ・ジャパン バイス・プレジデント リスク・コンサルティング・グループ プラクティス・リーダー 平賀暁氏が、世界貿易センタービルにオフィスを構えていた親会社の米マーシュ(リスクマネジメントおよび保険関連業務を専門とする企業)の実体験を踏まえて、企業が準備しておくべきリスクへの取り組みを述べた。

 米国同時多発テロが起きたとき、同社の情報システム自体はニューヨークにあったが、バックアップは別の3カ所の州にあり、1日で復旧のめどが立てられたという。あらかじめバックアップを取り、復旧マニュアルを用意しておくことが、どれだけ重要かということが分かったという。これは情報システムだけに限ったことではなく、営業、管理部門すべてにかかわることでもあると、平賀氏は力説した。

マーシュ・ジャパン バイス・プレジデント リスク・コンサルティング・グループ プラクティス・リーダー 平賀暁氏

 また、災害発生後に取るべきリスクマネジメントのプロセスとして同氏が挙げたのは、人員の安全確保、非難誘導などの緊急災害対策プランの発動、建物・工場などの再構築、システム再構築、バックアップ体制などの準備だという。中でも情報システムの復旧プランとして、1.迅速な被害の把握、2.トップからの復旧作業の発動、3.時間軸で管理した主要データ復旧計画、4.全体的な情報システムの復旧、を準備すべきであるという。

 これらのリスクマネジメントの欠如は、企業に多大な損失を被らせてしまう。平賀氏が例として挙げたのは、操業停止、利益損失、罰則、マーケットシェアの低下、ブランドの失墜、損害賠償請求の補償、復旧コストなどだ。これらを防ぐには、企業の経営者などの意識を変える必要がある。問題が起きることを企業のトップが認識しておくこと、リスクはコストの一部であるということを理解しておかなければならないという。

 最後に平賀氏は、「リスクマネジメントは、企業全体の共通認識が必要であり、IT部門だけに任せず社員すべてが理解してこそリカバリができる。企業存続のためにいま一度考え直してほしい」と、その意義を提言した。

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