東アジアの市場成長に照準を定めるサイベース

2002/2/14

 2002年2月1日、サイベース アジア・パシフィックはテレカンファレンスによるプレスブリーフィングを開催した。それによると2001年同社は、中国、韓国など東アジア地域でそれぞれ前年比137%、141%と高い伸びを見せた。特に中国では大規模案件を次々と獲得し、追い風ムードだという。3月には、新しい活動拠点として北京にChina Solutions Centerも設立するなど、同社は東アジア地域に対するコミットメントを強めている。2月上旬、定例ミーティングのために来日した米サイベース アジア パシフィック担当 上級副社長兼ゼネラルマネジャー、マーク・ワン氏、同 アジア・パシフィック担当上級ディレクター ホーレス・チョー氏に話を聞いた。取材にはサイベース 代表取締役社長 デーヴィッド・ワレン氏も同席した。

左から、サイベース 代表取締役社長 デーヴィッド・ワレン氏、サイベース アジア・パシフィック担当上級副社長兼ゼネラルマネジャー マーク・ワン氏、同アジア・パシフィック上級ディレクター ホーレス・チョー氏

 中国はいま、システム投資意欲がこれまでになく高まっているらしい。その大きな動機に、世界貿易機関(WTO)への加盟や2008年に開かれる北京オリンピックがある。名実ともに世界のリーダー国となるべく、国の威信をかけて近代化に傾注しているのだ。そうした中でサイベースは、モバイルフォン大手のチャイナユニコム、中国人民銀行、中国鐵道などから大口の受注案件を獲得した。特に中国鉄道の事例は、すべての駅に設置されるチケット販売システムにデータベースを提供するもので、日本でいうJRのみどりの窓口に匹敵する規模だという。

 マーク・ワン氏は、このように同国の市場で業績が好調な理由を次のように語る。 「決して一日にして成ったものではない。一番の理由はセールス、マーケティング、 トレーニングと地元スタッフが長い間に渡ってそれぞれによいオペレーションを行い、しかもそれらが相乗効果を生んだ。もちろん、国土が広大であるゆえに拠点が多岐にわたる同国に、分散データベーステクノロジーなどわれわれのテクノロジーが合ったということもある。まだオラクルを追い越したとはいえないが、通信業界に限っていえば、すでに45%のシェアを獲得した」とワン氏は誇らしげに語る。

 ホーレス・チョー氏は中国鐵道が同社を選択した理由をこう語る。「いくつか原因はあるが、彼らはAdaptive Server Enterpriseのレプリケーション機能を高く評価した。信頼性が高く、設定が容易で、運用管理が楽な点もポイントだった。また、地元スタッフが中国鉄道側の担当者と良好な関係を築くことができた。詳しくはいえないがこの顧客からはチケット販売以外にも受注しているシステムがあり、いまでも現在進行中だ。最終的にかなり大がかりなシステムがサイベース製品上で動くことになるだろう」。

 北京のChina Solutions Centerは、サイベース製品上で動くアプリケーションを中国で展開したいビジネスパートナーのためのものだという。パートナー企業が同国市場向けに中国語版を開発したり、一部の機能をカスタマイズするのを支援する。

 「これまでにも香港にAsian Solutions Centerを設立し、ビジネス・パートナーのサイベース製品の上で動くパッケージ・アプリケーションやソリューションを紹介してきたが、China Solutions Centerは、特に中国市場にフォーカスしたものだ。また前者は香港の行政府との協業により運営しているが、後者はサイベースが独自で展開する」(ワン氏)。

 China Solutions Centerは同社の中国市場への強いコミットメントを象徴する拠点となるようだ。
 
 一方、サイベース日本法人は2001年の売り上げは前年比114%とアジア・パシフィックの10カ国の中では控えめな伸びにとどまった。景気低迷によるシステム化投資意欲の減退が主な原因と見ている。このような状況にも関わらず、2002年、サイベース アジア・パシフィックは中国、韓国、日本の3国に関しては前年比140%の成長率達成を宣言している。日本では具体的にどう実現させていくのか。ワレン氏は思いのほか楽観的だった。同社では、e-Business市場、v-Businessと呼ぶ特定業界の市場、m-Businessと呼ぶモバイル市場を3つの大きな柱としてビジネスを展開しているが、v-Business市場、特に金融業界での、EAI(Enterprise Application Integration)ニーズ、モバイル・ソリューション・ニーズが非常に高いのだという。

 「われわれが強みを持っている金融業界は大型の企業再編の渦中にある。2つあるいは3つの銀行が所有していた100を超える既存システムを迅速に統合しなければならない。その意味でも、NewEra Of Networksの買収は英断だった。EDI ServerをはじめとするサイベースのEAIソリューションは金融業界のニーズを十分に満たす。また彼らはモバイル・アプリケーションの構築意欲も強いが、この分野でわれわれは68%という圧倒的なデータベース・シェアを誇っている。すでに複数の企業から強い引き合いを得ており、今年の成長には強い確信を持っている」(ワレン氏)。
 
 インタビューの最後、今年、最も高い成長率が期待できる上位3国を列挙するとどうなるかと尋ねたら、中国、韓国、日本の順だとワン氏は答えた。「中国、韓国は世界的なイベントが目白押しで、いまは何もかもが熱い。この2つの国に注力しない法はない」、とワン氏が語れば、「しかし、売り上げ高シェアという点では、いまも日本はサイベース・ワールドワイドの10%を占め、アジア・パシフィック地区の50%を占めている」と傍らでワレン氏が注釈を入れる。

 「いや、もう50%は切ったよ」(ワン氏)
 「今年は達成します」(ワレン氏)

――笑いながらも二人のトップが応酬している姿が妙に印象的だった。

(フリーランスライター 吉田育代)

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