【IDF Spring 2002 in Japan】ランチ直前のMcKinleyをデモ

2002/4/18

 4月16日〜17日の2日間にわたり、インテル・テクノロジを中心とした開発者向けカンファレンス「Intel Developer Forum Spring 2002 in Japan」(主催:インテル)が東京近郊のホテルにて開催された。今回は、カンファレンス初日である16日に行われた基調講演の内容を中心に、そのトピックを紹介していこう。

■100Mbps無線通信のUWBをデモ

 IT技術の進化は、PCを中心とした世界から、エンタープライズ・コンピューティング、ワイヤレス・コンピューティング、ブロードバンド・ネットワークと、よりいっそうの広がりを見せている。PC向けCPUを主軸としていたインテルも、こうした状況の変化を受ける形で、さまざまな分野への投資や研究開発を行っている。その取り組みの数々を、基調講演の中で見ることができた。

米インテル 副社長兼CTOのパトリック・ゲルシンガー氏

 基調講演の冒頭で米インテル 副社長兼CTOのパトリック・ゲルシンガー氏は、まず「ムーアの法則」について触れ、「私がインテルに在籍している期間は、問題なくムーアの法則の成長カーブが続いていくだろう」と、今後も20年以上にわたりムーアの法則が健在であるとした。そして、それを実践するのはインテル自身であるとも付け加え、近年の同社の研究成果の数々を披露した。テラヘルツ・トランジスタへの取り組みに見られる業界でのリーダーシップ、従来のFCPGAに比べプロセッサの厚みを半分以下に抑えるパッケージング技術「BBUL(Bumpless Build-Up Layer)」、EUV(極紫外線)露光技術、低消費電力回路やハイパー・スレッディングによる電力密度低減への試みなどだ。これらは、従来よりインテルが続けている試みの延長にあるものだが、ゲルシンガー氏はさらに最近インテルが注目しているものとして、「ワイヤレス」「センサ」「オプティカル」の3つの分野を挙げる。

 ワイヤレスの分野では、「Radio Free Intel」とすべてのチップへの無線技術の導入を標ぼうする。MEMS(Micro-Electro Mechanical System)などの微細加工技術やシリコン無線技術などを組み合わせ、究極的には、CPU/メモリ/無線といったすべての機能をシングル・チップにまとめ、ワイヤレス機器の低価格化や高機能化を実現していくという。

UWBのデモンストレーション。国内で非認可の帯域を使用しているため、シールド内での通信デモンストレーションとなった。シールドされていることもあり、エラー率は数%で、問題なく100Mbpsの無線通信が実現できていた

 そして、ワイヤレス分野でいまインテルが最も注目しているのが、UWB(Ultra Wide Band)という無線通信技術である。感覚的にはIEEE 802.11xやBluetoothといった近距離向けの無線通信技術。その大きな特徴は、100Mbpsを超える通信速度と低消費電力を同時に実現している点だ。従来までの無線データ通信技術では、限られた狭い周波数帯域で高速通信を実現する試みが行われていたが、UWDでは微弱な電波を数GHzの広範囲にわたって拡散して通信することになる。国内の電波法では使用する機器ごとに狭い周波数帯を割り当てる方式となっているため、ほかの機器にほとんど影響を与えない微弱な電波とはいえ、広い周波数帯を使用するUWBはそのままでは使用できない。インテルでは、総務省に働きかけを行っており、今後の国内での商用化に向けて力を注いでいくという。

■ネットワーク・プロセッサに注力するインテル

 近年のインテルは、XScaleに見られるように、PCやサーバ向け以外のプロセッサにも注力している。基調講演のスピーカの2番手として登場した米インテル インテル・コミュニケーションズ事業本部 副社長兼CTOのW.エリック・メンツァー氏は、同社のネットワーク分野での取り組みについて紹介した。

 特にここ数年、インターネット・トラフィックが急激に伸びているにもかかわらず、2001年のサービス・プロバイダの設備投資額はマイナスに傾いているという。これは、昨今の厳しい経済情勢を反映したものに間違いない。コスト対策に続々と登場する新サービス、この現状を打破するために、これまでの独自開発による高コストな機器から、共通なビルディング・ブロックを持つ機器で構成された「モジュラ・ネットワーク」の世界へと進んでいくことになるという。ここで重要なのは高性能なプロセッサにあるとし、インテルが提唱する「IXA(Internet eXchange Architecture)」をベースとした「IXP425」「IXP2400」「IXP2800」などのネットワーク・プロセッサ群を紹介した。特定機能にフォーカスしたASICなどに比べ、プログラマブルでチップ間のディレイの少ない点が特徴だという。

 また、ネットワーク・プロセッサの性能を向上させる「ハイパー・タスク・チェイニング(HTC)」という技術を紹介、そのためのツールを提供することで、簡単にプログラムが開発できる環境を用意するとした。そのほか、IXP2800のリファレンス・デザイン例を紹介し、10Gbpsのライン・スピードの実現が可能など、その高速性についてもアピールした。

■McKinleyのランチは目前

McKinley搭載のクラスタ・サーバによるDB2を用いたパフォーマンス・デモンストレーション。クラスタ間はInfiniBandで接続されている。2ノード(8プロセッサ)と4ノード(16プロセッサ)構成でパフォーマンスを測定し、2倍近い差を出していた

 初日の基調講演のラストに登場したのは、エンタープライズ・サーバ分野を担当する米インテル エンタープライズ・プラットフォーム事業本部 アドバンスド・コンポーネント事業部長のトム R.マクドナルド氏だ。

 いま、インテルでエンタープライズ・サーバ最大の話題といえば、2002年半ばに登場するとされているMcKinley(開発コード名)だろう。IA-64シリーズの先陣を切って発表されたItaniumだったが、アプリケーションの対応や演算性能の特性から、現状ではまだ科学技術計算などの一部の用途で限定的に利用されているのが現状だ。次世代バージョンにあたるMcKinleyの登場により、いよいよ本格的普及への第一歩を踏み出すことが期待されている。プレゼンテーションでは、金融サービス向けのアプリケーションの例を紹介し、最適化されたMcKinley-1GHz向けのアプリケーションが、PentiumIII-800MHzに比べ10倍、Itanium-733MHzと比較しても2倍近い性能を出せたとしている。

 McKinley以降の将来のプロセッサ計画として、2003年に0.13μmプロセスを採用した「Madison」と、デュアル・プロセッシングにフォーカスした「Deerfield」を、詳細は不明だが、2004年に90nmプロセスを採用した「Montecito(モンテシート)」をリリースする予定だという。McKinley以降のプロセッサについても、ソフトウェアの互換性を維持していくとのことなので、蓄積されたアプリケーション群が真価を発揮する日も近いだろう。

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