「企業のDB数は過剰」とDB単一モデルを説くオラクル

2002/5/2

 オラクルは2000年秋に出荷を開始したeビジネス向けアプリケーション・スイート製品「Oracle E-Business Suite 11i」(以下、11i)を積極的に売り込んでいく。特に同製品の前バージョンを導入している顧客に対し、アップグレードを促進していくという。また、アウトソーシングプログラムも充実させ、何とかしてユーザーを増やそうとする構えだ。

 先月、米国で開催された「Oracle AppsWorld 2002 San Diego」において、米オラクル CEO兼会長 ラリー・エリソン(Larry Ellison)氏は、11iを売り込んでいくうえで、以下の点を特徴に挙げた。

・ユニーク・インフォメーション・アーキテクチャ
・完全な自動化
・デイリーBI(ビジネス・インテリジェンス)

 “ユニーク・インフォメーション・アーキテクチャ”とは、データベースを物理的に1カ所1台にしたシステム構成のこと。「現在、レポート作成において最も手間取っているのは、必要な情報がどこにあるのかを探し出すことだ」とエリソン氏は述べ、複数台のデータベースを導入したシステム構成をとった結果、データが散在してしまっているという多くの企業の抱える課題を指摘する。「データベースを売るのがビジネスのわれわれが言うのも変な話だが、企業は必要以上のデータベースを所有してしまっているのだ」(エリソン氏)。

 同氏によると、11i開発の出発点となったのも、この課題を解決するためだったという。この“ユニーク・インフォメーション・アーキテクチャ”では、すべての情報を単一のデータベースで管理し、財務部門、営業部門などの各部門が同じデータベースにアクセスし、情報を得る環境を実現する。これにより、ユーザーは必要な情報をすぐに引き出せるだけでなく、効率のよいデータの同期化や修復などのメリットも得られる。これらは、コスト削減にもつながる。もちろん、ここでオラクルは同社の最新データベース製品である「Oracle 9i」をアピールしていく。

 日本オラクル 執行役員 保科実氏は、「すべての情報を一カ所に、という“ユニーク・インフォメーション・アーキテクチャ”コンセプトは、実際には難しいチャレンジだった」と振り返る。「初期の(アプリケーション・スイート)製品では未完成な部分を残していたが、11iはかなり成熟の域に達したといえる」と自信を見せる。保科氏によると、オラクル自身も同モデルへの移行を進めており、全世界約220台あったデータベースを現在4台にまで集約したという。今後は最終段階の1台を目指す。

 2点目、3点目は、“ユニーク・インフォメーション・アーキテクチャ”を前提としている。2点目の完全自動化は、ビジネスフローやコラボレーションをエンド・ツー・エンドで途切れることなく実現するもの。eビジネスの要求をトータルで実現できるという。3点目のデイリーBIは最新の在庫や販売情報などビジネス状況の把握、およびそれによる迅速な意思決定を意味する。

 同社はこれらのメリットを訴え、最新版へのアップグレードをさらに推進していく。その背景には、同社が11iで製品コンセプトを大きく変更していることがある。「あらゆる顧客のニーズを満たすシステムなど、ありえない。オラクルはこれを学んだ。オラクルの解は、オープンなシステムを提供し、カスタマイズを少なくして、必要な機能をアドオンしてもらうこと」(エリソン氏)。同氏の言葉にもあるように、11iはオープンで完全なインターネットベース。ユーザーは11iをベースに(変更ではなく)拡張することを想定している。

 米国では、前バージョンである「10.7」と「11.0.3」のユーザー数は過半数以上の65%を、日本では72%を占めている。同社は先の3つの利点を挙げて、新バージョンへの移行を促進していく。また、米国では11iをアウトソーシングサービスとしても提供する。アウトソーシングに関しては、パートナー重視の日本では同社が単独で行うのではなく、パートナーと組んで進出していくという。すでにNTT-MEやアイさぽーと、日立製作所などとの提携しているという。

 「Oracle AppsWorld」はオラクルのアプリケーション用のイベント。来月には成長市場の中国・北京でデータベースのプロモーションも兼ねたイベントを開催する予定という。日本オラクルも中国市場に事業展開を考えている日本企業をサポートする意味で参画する予定という。

(編集局 末岡洋子)

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