ディスクでテープをエミュレートするバックアップの新手法

2002/5/16

 日本クアンタム ストレージは5月15日、米国本社のATLプロダクツ統合に伴う日本法人の新体制を発表するとともに、戦略を明らかにした。また独自技術を用いてバックアップの課題を大幅に解決するという新製品「ADAM DX30」も発表した。

 新製品ADAM DX30はハードディスク・ベースのバックアップ装置で、テープライブラリをエミュレートする“仮想テープライブラリ”製品。高さ2U(約9cm)の筐体にハードディスクを最大30台搭載可能で、記憶容量3TB、スループット140GB/時(40MB/秒)を実現する。従来のテープ装置にあった信頼性の問題やリカバリ時の待ち時間といったバックアップの課題をハードディスクによって解決した。コストも1GBあたり15ドル以下と低コストを実現するという。ネットワークのインターフェイスは、データ転送用にファイバチャネル、管理機能用にギガビット・イーサネットが使える。

「ADAM DX30」

ドライブは120GB ATAドライブで、1レール5ドライブを左右に2レール持つ。3ドライブで1ドライブパックの3層構成となっている

 同社はこのハードディスクをベースにRAID技術を採用した独自バックアップ技術を「ADAM(Adaptive Disk Array Management)」と呼んでいる。新製品は同技術を採用した最初の製品となる。

米クアンタムのスティーブ・モリヒロ氏 ADAM DX30は発表済みの米国では高い評価を得ているという

 新製品の説明を担当した米クアンタム ストレージ・ソリューションズ・グループ 技術開発担当 副社長 スティーブ・モリヒロ(Steve Morihiro)氏は、新製品のコンセプトは「既存のインフラ環境を有効に活用する強化バックアップ製品」で、アーカイブに適したテープライブラリを置き換えるものではないと強調する。

 新製品で同社が提唱するバックアップ手法は、履歴を残すテープアーカイブ機能とリアルタイムでデータのバックアップを行う機能とを分離するもの。ADAM DX30で高速にバックアップを実現し、その後、バックアップからテープアーカイブへの移動を行うという手法だ。「この3層バックアップ構成により、バックアップを強化できる」とモリヒロ氏は述べる。これにより、時間外にオフラインでバックアップを行い、テープにコピーするといった使い方が可能という。

 ADAM DX30の日本での出荷開始は今年9月の予定。価格はオープンだが、市場予想価格は895万円程度という。

■ATLを吸収、NASとテープライブラリをトータルで提供

日本クアンタム 代表取締役 桑畑俊一氏 引き続きパートナーと協業し、複数販売チャネルモデルを進めていく

 米クアンタムは10月末、100%子会社のATL プロダクツを統合し、テープライブラリとNAS(Network Attached Storage)を有するStorage Solution Group(SSG)として運営してきた。今年4月、同社はさらにSSG内の2つの部門を一本化し、営業やマーケティング部隊を実質的に1グループにした。これにより、トータルソリューションとしてテープライブラリ、NASを提供していくという。現在、年間売上高約11億ドル、DLT(ミッドレンジ・テープドライブ)市場でトップのシェア(70%)、データプロテクション(DLT、SDLT、LTOテープライブラリ)市場でトップのシェア(30%)、さらにはNAS(エントリー/ワークグループレベル)でトップのシェア(70%)を誇る企業となった。

 日本側も米国本社に合わせ、日本クアンタムとATL プロダクツ ジャパンの統合を行う。新生日本クアンタムの代表取締役は日本クアンタム 代表取締役 桑畑俊一氏が就任し、オフィスも統合する。この6月には体制を整え、最終的には、営業やマーケティング、技術などの部門を製品ラインで区分することなく1つにまとめるという。

 桑畑氏は、新体制下のミッションを「ネットワークストレージ・ソリューションでリーダーとなること」と語る。ターゲット市場は中規模、つまりミッドレンジ市場。特にNASは、ミッドレンジにおけるニーズが高いことから100万〜1000万円程度の価格帯に照準を絞る構えだ。

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クアンタムの発表資料

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