レッドハット、基幹システム攻略へ進軍を開始

2002/5/22

 レッドハットは5月21日、基幹システムに特化したLinux OSの「Red Hat Linux Advanced Server 2.1」を発表した。同製品の出荷は6月21日から、価格は19万8000円となっている。

 レッドハット代表取締役 平野正信氏はまず、「この製品で、Red Hatが基幹システムでも使用できるようになったことを報告したい」と語り、同社のエンタープライズ分野への意気込みを見せた。

 実際、Red Hat Linux Advanced Serverが想定するシステムは、EコマースやCRM、ERPなどの業務アプリケーションサーバ、基幹/部門のデータベースサーバ、ISPやiDCなどのWebのインフラやファイルサーバシステムなどの基幹システムだ。

レッドハット セールスマネージャ 三橋秀行氏 「これまでの製品とはまったく違う」と強調した

 製品説明を行った同社セールスマネージャ 三橋秀行氏は、「Red Hat Linux Advanced Server 2.1は、当社が販売している「Red Hat Linux 7.1」や「Red Hat Linux 7.2」のラインとはまったく別の製品ラインだ」と強調、その特徴は、「3点ある。まずは性能、信頼性、安定性とサポート。次にさまざまなパートナーとの提携によるソリューションの提供、そしてオープンソースの柔軟性だ」という。

 Red Hat Linux Advanced Serverの特徴としては、安定したカーネル(Linuxカーネル 2.4.9)を採用したほか、プロセス・スケジューラの変更によるSMP性能の向上、I/O性能の向上、非同期I/Oのサポート、Red Hat Cluster Manager/Piranhaによるクラスタリング機能の実現、障害解析機能の向上が挙げられる。また、今後のバージョンアップなど、製品のリリースを計画的、長期的に行っていくという。同社によれば、メジャー・リリース(カーネルの大幅なバージョンアップを伴う機能向上)は12〜18カ月、マイナー・リリースは6〜9カ月、プラットフォーム・リリースは3〜4カ月に1度、エラータ・アップデートは適時提供するという。

 サポートでは、標準年間サポートを提供する。具体的には、24時間365日のサポートが付く(ただし、回答は午前9時から午後9時まで)。同製品の各種インストール、セットアップの構成、利用の仕方に関するアドバイスを、電話または電子メールで対応する。問い合わせ回数は無制限。また、翌年以降アップデート製品で再度サポートを利用したい場合、製品の金額と同額を支払えば同じサポートを受けることができるという。こうしたサポートは同社のこれまでのサポート(インストール時だけの質問を30日または60日まで)とはまったく異なる。そのために「現在フィリピンのマニラ、それにこれは検討中だが、中国の上海に(日本における)サポートの拠点を作る予定だ」(平野氏)という。

 同製品に対してすでに米国では、オラクル、ベリタスソフトウェア、BMCソフトウェア、ボーランド、コンピュータ・アソシエイツ、BEAシステムズ、ノベル、SAP、チェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズ、IBM(チボリ、ロータス、DB2、WebSphere)、レガト・システムズ、ティブコ ソフトウェアがサポートを表明している。

 記者発表でも、ミラクルリナックス、コンパックコンピュータ、日本IBM、NEC、日立製作所、富士通、テンアートニが、製品への期待やサポートを表明した。各社が共通して話すのは、ようやく基幹システムでもLinuxを採用する企業が現れ、増えてきたこと。この動きを後押しするのが、レッドハットによる今回の発表だという。また、バージョンアップなどの製品サイクルを明確にしたことも、企業が導入する場合のスケジュールの決定をしやすくするという。

 これまで、基幹システムでのLinuxの導入は、各ベンダが個別に手がけ、ようやく緒についたばかりの感があった。だが、今回のレッドハットの発表により、各社共通の土俵ができた。今後の課題は、どれだけ導入と安定稼働した基幹システムの“実績”を作るか、そして不足しているLinuxエンジニアを育てるかにある。まさに、Linux陣営のエンタープライズ分野における基幹システム攻略への進軍が、やっと本格化しそうだ。

[関連リンク]
レッドハット

[関連記事]
米レッドハット、「Red Hat Linux 7.3」を発表 (@ITNews)
米レッドハットがエンタープライズLinux本命製品 (@ITNews)
今年のITはセキュリティ、Linux、オンライン個人認証 (@ITNews)
ベンダの姿勢が問われるLinux (@ITNews)
[ガートナー特別寄稿] Linuxバブルははじけてしまったのか? (@ITNews)
漏えいした社内メモから明らかになったMSの対Linux戦略 (TechWeb/@ITNews)
渋谷に現れたリーナス、日本の技術者らと懇談 (@ITNews)

 

情報をお寄せください:



@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)