[Brocade Conference 2002開催]
SANはもはやストレージのメインストリーム

2002/6/6

 米ブロケード コミュニケーションズ システムズは6月3日より、同社が主力分野とするSAN(Storage Area Network)技術に関するプライベート・カンファレンス「Brocade Conference 2002」を、米国ネバダ州ラスベガスにて開催している。不況下においてなお成長を続けるストレージ分野だが、同社は、ストレージ・ネットワークのコアとなるファイバ・チャネル・スイッチ製品を主に提供しているベンダだ。世界約20カ国から1200名の参加者が集まり、3日間にわたって開催される同カンファレンスで、その最新潮流を見ていこう。

■SAN導入のコストメリットを強調

 開催初日、基調講演に登場した同社会長兼CEO グレッグ・レイズ(Greg Reyes)氏は、従来までのサーバ直結型ストレージ(DAS:Direct Attached Storage)からネットワーク型ストレージ(SAN)への移行のメリットは、「サーバ/ストレージ統合」「集中管理」「バックアップ」「コスト」「可用性」「アプリケーション・パフォーマンス」といった点にあると説明した。SAN導入により、50%以上の管理コスト削減のほか、サーバ/ストレージ統合で300%の投資対効果(ROI)、バックアップ時間短縮で400%のROI、SANによる高可用性環境の構築で525%のROIが実現できるなど、特にコスト面でメリットが大きいことを強調する。

SANのメリットの数々について語る、米ブロケード会長兼CEOのグレッグ・レイズ氏

 米ガートナー・グループが2002年にITリーダー企業400社に向けて行った調査結果では、58%の企業がすでにSANを導入済みであり、また29%の企業が1年以内にSANの導入を予定するなど、今後1年以内に87%の企業がSANを利用することになるという。レイズ氏は、「もはやSANがストレージ分野におけるメインストリームの技術である」とする。

 レイズ氏に続いて基調講演に登場した米ガートナー副社長のニック・アレン(Nick Allen)氏も、「SANがこのまま浸透していけば、3〜4年後にはストレージ市場全体におけるシェアは70%に達するだろう」と付け加える。

■ブロケードの優位性はASIC技術にあり

 2日目の基調講演に登場した副社長兼CMOのジェイ・キッド(Jay Kidd)氏は、前日にアレン氏が解説したSANのメリットや最新トレンドを振り返りつつ、同社製品優位点について説明した。

 バックアップ面において、従来のDASでは比較的低速なLANを経由するために時間がかかるほか、他のアプリケーションの帯域を圧迫するという問題がある。だが、Gbpsクラスの専用の高速ネットワークを提供するSANでは、短時間でかつ可用性の高いバックアップ環境を提供することが可能だという。また、可用性の面においては、2台のサーバに1台のストレージが結びつく従来型DASの1:1のフェイルオーバーに対し、SANでは1:Nのフェイルオーバーが可能であり、より安価に高可用性環境が提供できるという。

 ファイバ・チャネルのインターフェイスは現在2Gbpsのものが主軸だが、同社独自の第3世代ASIC技術により、スイッチ製品の「SilkWorm」シリーズでは4本の回線のトランクによる8Gbpsの高速インターフェイスの提供を行っている。キッド氏は、「他社がどこも実現できていない優位点だ」とする。トランク技術は、複数の回線を束ねることで高速なインターフェイスを提供する以外に、回線の冗長性も高める効果もある。この機能によりSANのメリットをさらに引き出すことが可能になるだろう。

 またASIC技術においてはVirtual Channelという機能も提供する。これは、あるコネクションにおいて複数の優先度に応じたチャネルを用意することで、QoSをハードウェア・レベルで提供しようというものだ。このほか、SANネットワークのゾーニング(Zoning)機能や、フレーム・フィルタリング機能、PKIによる認証などのセキュリティ機能、そして、同社ファブリックOSが提供するオープンAPIによる他社製管理ツール群(コンピュータ・アソシエイツ、EMC、BMCソフトウェア、コンパックコンピュータなど)との連携などの豊富な機能、他社製品とのリンクなど、同社製品のメリットを紹介した。


 SANを導入するメリットの数々は各所で紹介されており、興味を持っている方も多いことだろう。一昔前にいわれた、ベンダ主導型の独自技術色は薄れ、市場はブロケードなどを中心としたオープン・ネットワーク型へと移行しつつある。だが、いくらTCO削減が実現できて、高いROIが得られることは分かっていても、導入の際には、最初にある程度以上の投資が必要なことと、構築や運用のためのノウハウが必要という壁があることも事実だ。

 同社では、同カンファレンス開催直前の5月初旬に、SilkWorm 12000とSilkWorm 3200という2つの新製品を発表している。前者が128ポートを搭載したコア・スイッチ製品で、後者が8ポートのエントリー製品の位置付けとなっている。まずはSilkWorm 3200でSAN導入の足掛かりをつかみ、以後はSilkWorm 12000などの製品で複数のSANを統合していくという、段階的な戦略が感じられる。

 このあたりの戦略について、同社のエグゼクティブにインタビューを行う機会を得られたので、近々その内容を紹介させていただく予定だ。

(編集局 鈴木淳也)

[関連リンク]
Brocade Conference 2002
ブロケード コミュニケーションズ システムズ

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