IT部門とユーザーとの意識のギャップを埋めるには?

2002/7/19

 SLA(サービスレベル保証)の必要性が叫ばれて久しい。認知は広まりつつあるが、導入が進んでいるかというとそうでもない。昨年よりサービス管理ツール「iCan Provider Suite」を提供しているコンピュータ・アソシエイツはサービス管理によるメリットを訴え、導入促進を図っている。

 ことサービスに関しては、“安全と水はタダ”という意識の強い国、日本ではコンセプトが正しく理解されていないことが多い。同社 プロダクトマーケティング ビジネス・マネージャー 城山泰ニ氏はサービスマネジメントを経営コンセプトとして、「ユーザーの視点からITを評価可能にし、投資コストの最適化を継続的に図るもの」と提唱する。

 では、なぜITにおけるサービスマネジメントがこんなにも重要なのだろうか? これについて同氏は興味深いデータを示す。ITを付加価値を創造する戦略的ツールと位置付けたとき、その役割を「実現している」「どちらともいえない」と肯定的な回答を示した割合が、IT部門では88%とほぼ9割に達しているのに対し、ユーザー部門では44%と過半数に達していないというのだ。つまり、サービスを提供する側と利用する側では、ITに対する認識に大きなギャップがあるということだ。このような意識のズレと昨今の景気低迷が相まって、製造業では今年、IT投資額を減少する企業が前年比2倍の34%となった。この傾向はほかの業界にも波及する可能性がある。

 IT部門(またはベンダ)側とユーザー側の認識のズレを解消するためには、共通の指標を用いて効果を示す必要がある。これに役立つのがサービスマネジメントというわけだ。

 同社では、同社の100%子会社の米iCan SPのソフトウェア製品「iCan Provider Suite」を展開している。同スイートは「iCan Meter」「iCan Assure」「iCan View」「iCan Provision」「iCan Bill」の5つの機能モジュールにより構成される。ベースとなるサービスのプロビジョニング(マニュアルや人を介さずにサービス開始や追加、停止を自動化する)から、計測、保証、社内課金とコストの配賦、サービスメニューとしてのカタログ作成、とサービスマネジメントのライフサイクルをサポートする。

米iCan SP シニア・バイス・プレジデント ロバート・ストラウド(Robert Stroud)氏 「サービスマネジメントという考え方は決して新しくない。1980年代からある」

 これにより、得られるメリットは多大だ。来日した米iCan SPのシニア・バイス・プレジデント ロバート・ストラウド(Robert Stroud)氏は、プロセスの簡素化、運用の自動化などによるコスト管理や抑制、サービスレベルの改善や選択肢の多様化によるサービスの質の向上、リソースの活用によるROIの改善などを挙げた。IT部門に対する数値に基づいた適正な評価が実現し、アウトソーシングサービスを利用するか否かの判断基準としても有効だという。

 導入すると効果が上がるのがサービス管理ツールの利点だ。ストラウド氏の紹介した12万人以上の従業員を抱える仏ALSTOMの事例では、同ツールを用いて抜本的なIT部門の改革を成功させている。7部門が個別に有していたIT機能を1つのビジネスとして統合して立ち上げた結果、ユーザーに従量課金を行うなどサービスを充実させ、運用コストは導入後3年間、年間10%ずつ削減できたという。

 日本にも事例はある。「iCan Provider Suite」を提供するSIパートナーでもあるCSKは、すでに社内課金制度を導入している社内IT部門で同ツールを適用し、従量課金による集計作業の自動化や申請やサービス管理、課金などの業務を連携することにより、さらなるサービスのレベル向上を図るという。

 将来のコンピューティングは、電気や水のようにユーティリティ化すると言われている。そのためにも、使用量に応じて支払う従量課金制度やサービスとしての質の向上は欠かせない。また、同社が指摘した、「IT部門の適正な評価」というメリットも、これまであまりいわれていなかったが重要なことだ。いずれにせよ、IT不況の中、ITと経営戦略との結びつきが強まっていく以上、何らかの指標を導入しなければならない時期に来ていることは間違いない。

(編集局 末岡洋子)

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