ITベンダの価格に疑問を持ち始めたユーザー企業、IDCの投資動向から

2002/8/29

 IDC Japanは8月28日、2002年の国内IT投資額が前年比1.3%増の12兆5563億円になる見込みだと発表した。ソフトウェア、ITサービスへの投資の減少が目立っていて、ITベンダ側も対応が必要となりそうだ。

 IDCによると、2001年のIT投資実績は、年の後半からITサービス、ソフトウェア、PCサーバなどの成長にブレーキがかかり、同社が1997年に調査を開始して以来、初の前年割れとなった。2002年もIT投資は横ばいが続き、回復の兆しが見えるのは2003年前半、本格的な回復は早くても2003年後半以降と予測している。

 IT投資の減速要因は、投資全体の6割以上を占めるソフトウェアとITサービスの価格に対して、ユーザー企業が投資対効果を厳しく求めるようになったこと。投資に対するソフトウェア、ITサービスの対価を疑問視するようになったという。つまり、ITベンダの価格付け自体に疑問が広がっているとIDCは見ているようだ。すでにユーザー企業による価格の引き下げ圧力は強く、ITベンダの中には価格の引き下げを検討するケースも出ているという。

 業種別のIT投資動向では、2001年に投資全体の32.6%を占めていた製造業の投資が、2002年にはマイナス成長に転じるとIDCは予測している。中国への製造シフトやEMS(Electronics Manufacturing Services)の活用が主要因となり、国内投資が減少する。IDCは製造業について、2003年の一時的回復後の成長も鈍化傾向になると予測している。

 一方でIDCは、「IP化は2002年のITキーワードの1つ」と指摘し、IP-VPNや広域LANに関連する企業のネットワーク投資や、通信事業者のネットワークインフラへの投資は、高成長になると予測する。企業がコスト削減を考えて導入するIPを活用した企業PBXやコールセンター、MAN(Metropolitan Area Network)、無線LAN、それにITS(Intelligent Transport Systems)なども期待できるという。

 そのほかにも、IDCは行政の電子化など、電子政府関連のIT需要は2002年も高成長が続くと予測。同社によると中央官庁のIT投資は2003年ごろがピークとなり、その後は地方自治体のIT投資が増えていくだろうと予測する。

 このように、IPや電子政府関連など一部のIT需要に期待はできるが、投資額で最大規模の製造業の投資がマイナス成長になることが、ITベンダにはかなり厳しい風になりそうだ。

 だが、IDCのリサーチアナリスト 富田晃央氏は、「電機メーカーの中には売り上げがマイナスでも、在庫を過剰にならないよう抑えている会社が多い。SCM(Supply Chain Management)が浸透している証拠ともいえ、この分野での投資は引き続き期待できる」とコメントする。さらに、製造業の中国シフトについて富田氏は、「世界規模で事業を展開するようになると大規模なERP(Enterprise Resource Planning)などが必要。国内産業の空洞化は避けられないかもしれないが、IT投資の成長要因になるだろう」という。ITベンダについては、「低成長をカバーする市場開拓を、いかに他企業に先んじて有利に進めるかが課題になる」と指摘した。

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IDC Japan

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