[REDBACK ANALYST DAY開催]
IPネットワークの第3世代プレイヤに、米レッドバック
2002/9/14
ネットワーク・キャリア向けのアクセス・コントロール製品を提供する米レッドバックネットワークスは現地時間9月10日、アナリストや報道機関向けの説明会「REDBACK ANALYST DAY」を開催し、同社のビジョンや今後の製品展開について発表を行った。
IT業界が現在不況にあるのは事実だが、その中でも一般ユーザーや企業に対して接続サービスを提供するネットワーク・キャリアの経営状態の厳しさは際立っている。過去数年間にわたる巨額の設備投資を行ってきたにもかかわらず、近年の不況で需要が冷え込み、設備投資の回収さえおぼつかない状況にある。キャリアに現在求められるのは、少ない投資でいかにユーザーの多彩な要求に応える各種サービスを提供できるかという点にある。
CEOのKevin DeNuccio氏は、シスコシステムズの出身者。ネットワーク業界に起こりつつある変革について説明した |
レッドバックネットワークス CEOのKevin DeNuccio氏は、「まさにこの分野にフォーカスし、ユーザーの要求に応えることができる点が同社の強みである」と強調する。その秘密は、同社製品に組み込まれた専用OSの「AOS(Aggregation Operating System)」にあるという。現在、ネットワーク業界にはシスコシステムズをはじめ、数多くのプレイヤが存在しているが、それぞれのカバー領域や強みは微妙に異なっている。同氏は、「ネットワークのトレンドは常に変革を続けている。それぞれの時代に、トレンドの中心となるベンダが存在する。IPネットワークの分野に絞れば、トレンドはおおよそ3つの世代に分けることができるだろう」とし、それぞれの世代のトレンドと代表的なプレイヤについて説明を行った。
第1世代は、いわゆるエンタープライズなど企業内ネットワークの構築で、代表的なプレイヤがシスコシステムズだ。第2世代になると、これらネットワークを相互に高速に接続する必要性が出てきた。このNetwork-Network時代の代表的なプレイヤが、シスコからのスピンアウト組によって設立され、コア・ルータ製品を主力としているジュニパーネットワークスだという。
そして、第3世代では、ユーザーとネットワーク(インターネット)を接続する部分が重要になる。一般にアクセス回線と呼ばれるこの部分は、近年のDSLなどの普及による急激な高速化のほか、無線機器などのように接続対象となるデバイスの多様化が進んでおり、これらの回線を集約するネットワークのエッジの部分には、高いパフォーマンスに加え、各種サービスに対応できる運用の柔軟性が求められるようになっている。
DeNuccio氏は、「AOSはこれらの要求に応えるべく、スクラッチの状態から完全に新しく書き起こし、最適化が行われたOSだ。そこが、旧来からのコードを使用し続けている既存ベンダとは大きく異なる」と、自らが第3世代の中心的プレイヤになろうとしていることを強調した。
同社には、DSLなどのブロードバンド接続ユーザーの回線を集約して各種管理を可能にする「SMSシリーズ」と、キャリアのバックボーン・ネットワークのエッジに配置して顧客ユーザーに各種サービスの提供を可能にする「SmartEdge 800」の2つの製品ラインがある。ネットワーク・キャリアはこれら装置を利用することで、設備投資や運用コストを抑えつつ、SLAやQoS、新しいアプリケーションといった付加価値サービスの提供ができるようになる。
「これからは、単位時間当たりのパケット処理能力だけではなく、サービス単位での処理能力が求められるようになる」(同社 Senior Vice President Product Management and MarketingのGeorge Antoun氏)というように、同社では「User Intelligent Networks」を標語に、ユーザーに対してこの戦略を積極的にアピールしていく。
また、パートナーシップなどの今後の戦略や、世界各国の製品展開状況の説明も行われた。レッドバックネットワークスは、今後ノキアとIBMの2社と世界規模で戦略的提携を行っていくことを発表している。レッドバックネットワークスの場合、ネットワーク・キャリアを相手にビジネスを展開にしている関係上、導入規模が大きい半面、ターゲットとなる顧客はどうしても絞られてしまう。携帯電話やワイヤレスの分野で実績を持つノキアと、WebSphereをはじめとするアプリケーション分野に強いIBMとアライアンスを組むことは、土台の強化という点で非常に重要な意味を持つ。
また今後の製品展開状況については、北米や欧州はもちろんのこと、アジアや日本といったこれから有望になる市場にフォーカスしていく予定だという。実際、説明の中で日本や日本のキャリアに関するキーワードがひんぱんに飛び交うなど、日本市場を意識していることがうかがえる。それは、ベンダ側だけでなく、説明会場にやってきた世界中のアナリストや記者も同様のようで、日本の携帯電話事情や国内のメガ・キャリアであるNTT/NTTドコモに関する質問が相次ぐなど、日本に対する熱いまなざしを感じることができた。
(編集局 鈴木淳也)
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