Webサービス専門の調査会社が説く、その活用法とは?

2002/10/18

米Zapthinkのロナルド・シュメルツアー氏

 「Webサービスを用いた『サービス指向インテグレーション』は、ビジネスで求められるシステム統合に、機能的にもコスト的にも非常に適したアーキテクチャだ。ただし、セキュリティ、マネジメント、トランザクションの3つが実現への障害として横たわっている」。米Zapthinkのロナルド・シュメルツアー(Ronald Schmelzer)氏とジェイソン・ブルームバーグ(Jason Bloomberg)氏は、10月17日にビーコンITが実施した「XML & Web Services Road Show第2弾!」で、Webサービスの活用と動向についてプレゼンテーションを行った。

 Zapthink社はXMLとWebサービスを専門に扱う米国の調査会社。2人は同社の調査レポートがコンピュータ・ニュース社から日本語訳され発行されるにあたり来日した。

Webサービスによるサービス指向インテグレーションの実現

 サービス指向インテグレーションとは、ERPやCRM、データベースといった企業内に存在するアプリケーションを、Webサービスをフレームワークにして統合する方法だ。これにより、サービスの実体がどんなアプリケーションなのかや、どんなプラットフォームであるか、ということとは関係なく、システム統合を実現できる。

 シュメルツアー氏は、現状で企業のIT投資の7割がシステムの統合の開発と維持に使われているという調査結果を披露したうえで、サービス指向インテグレーションによって、従来のシステムからWebサービスへとアーキテクチャを変更するための初期投資はかかるものの、維持や変更のコストは圧倒的に削減できるとした。Webサービス化によって、簡単にサービスの追加や削除、変更ができるからだ。

 Webサービス化されたアプリケーションは、物理的な存在位置には関係なく統合できるが、まずは社内の統合から手掛けるのが良いだろう、とシュメルツアー氏はアドバイスする。その理由は、外部のサービスと連携してサービスを提供するのに必要なセキュリティ、マネジメント、トランザクションなどの標準仕様が存在しないためだ。

成熟が期待されるセキュリティ分野の標準

 こうしたWebサービスが抱える課題の中で、もっとも最初に解決すべき問題がセキュリティの分野。ブルームバーグ氏はその現状と見通しを解説した。

 ブルームバーグ氏によると、Webサービスをベースにしたサービス指向アーキテクチャでは、XMLレベル、つまりコンテンツを意識した上でセキュリティを維持する仕組みが必要があり、また企業ごとに分断されたセキュリティではなく、ネットワークにまたがったセキュリティの枠組みが必要だが、現在のところ、Webサービスにはまだ標準化されたセキュリティの枠組みは存在しないのだという。

 セキュリティの既存技術としてPKIや電子署名などがあるが、仕組みが複雑などの理由などで、まだ普及は十分でない。しかしそうした仕組みをXMLとWebサービスに組み込み、既存の投資を保護しながらWebサービスを使うためにXKMS(XML Key Management Services)などの標準もできあがりつつある。また、WS-SecurityのようなPKIやKerberosといった既存の技術を取り込んだ上で、認証、承認、プライバシ保護などセキュリティに関する幅広い機能を定義する一連の使用を含む標準の推進も進んでいる。

 しかしセキュリティ関連の仕様はまだ未成熟で、こうした複数のセキュリティ標準候補には、まだ未成熟なためそれぞれの相互運用について考慮されていないという課題も残っているという。

(編集局 新野淳一)

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