安さよりソリューション、NTT-MEの無線IP電話サービス

2002/10/22

 NTT-MEは無線IP電話サービスのフィールド実験を10月23日に始めると発表した。PDAを利用して無線LANスポットで利用できるサービス。PDA端末間は無料で通話可能。500人のモニターを募集する。NTT-MEはVPNと組み合わせて企業向けの無線IP電話サービスも始める予定。同社は来春にも商用サービスを始めたい考えだ。

NTT-MEのサービスイノベーション本部長 金田哲也氏は「IP電話には低価格を追及する面と、高品質、高機能を追及する面がある」と述べ、NTT-MEの無線IP電話サービスに従来の電話にない機能を付加する考えを示した

 実験はNTT-MEが行っている無線LANの実験サービス「NeoMobile」のネットワークを活用して行う。Pocket PC 2002またはWindows CE.Netが搭載されたPDAに無線LANカードを装着して、通話ができるようにする。PDA同士で通話できるのはもちろん、一般電話や携帯電話、PHSに発着信ができる。PDAには電話ダイヤル用の専用アプリケーションをインストール。NTT-MEが構築した音声専用のIP-VPNを通じて、公衆回線に接続する。

 通話料金は、実験中は基本的に無料。商用サービスではNeoMobileの月額基本料に加えて、無線IP電話サービスの利用料として月1000円程度を課金。一般電話への通話料は3分10円程度を想定している。携帯電話への発信は1分25円、PHSへは1分15円程度になりそうだ。商用サービスでPDAに割り振られる電話番号は、IP電話向けに総務省が設定した“050”で始まる番号になる。

 フィールド実験で無線IP電話サービスが利用できるのは、駅やコンビニエンスストアなど41カ所の無線LANのアクセスポイント。NTT-MEは商用サービス開始後にアクセスポイントを増やす方針で、将来的には都内に1000カ所、10万ユーザーの獲得を目指していく。ほかの無線LANサービスとの相互接続も進めていく考えだ。

 NTT-MEは企業向けの無線IP電話サービスにも力を入れていく方針。無線LANを構築している企業や、NTT-MEのVPNサービスを利用している企業に対して売り込みを図る。無線IP電話を導入することで、内線電話の通話料をなくすことができる。PDAでVPNにアクセスし、データベースを確認しながら、外線で通話するような使い方が可能になる。企業向けの無線IP電話サービスは現在、NTT-ME社内で実験中だ。

 だが、問題もある。IP電話でコンシューマーユーザーが最も期待するのは低廉な通話料だ。フュージョン・コミュニケーションズなど固定電話のIP電話事業者も低価格を強調している。電話が無線になっても低価格を求めるユーザーの姿勢は変わらないだろう。その点を考えると、NTT-MEが商用サービスで想定している3分10円という通話料はアピールにならないのではないか。PDA同士が無料で通話できるといっても、PDAにイヤホンマイクなどをつけて通話するユーザーがそれほど増えるとは考えられない。NTT-MEがNTTグループに属していることで、戦略的な価格付けをできないのかもしれない。NTT-MEは低価格戦略を探ると同時に、企業ユーザー向けに無線IP電話で業務を効率化させるようなソリューション開発を進めるという道もあるのではないか。

(垣内郁栄)

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