「国内売り上げを2倍に」とマイケル・デル、日本でも周辺機器市場に参入

2002/10/29

米デルコンピュータの会長兼CEO マイケル・デル氏。日本で業績が上がらない場合に撤退するか、と問われて「そういう考えはまったくない」と声を荒げた

 米デルコンピュータの会長兼CEO マイケル・デル(Michael S.Dell)氏は東京都内で会見し、日本国内でネットワーク機器とプリンタの市場に来年、新たに参入することを明らかにした。クライアントPC、サーバ、ストレ−ジなどで成功した“デルモデル”をさらに拡大していく考え。製品ラインアップを手厚くして、エンタープライズ市場でのシェア拡大につなげる。

 デルはすでに米国で、スイッチングハブやルータなど他社ブランドやOEMでネットワーク機器を販売している。国内でも他社と提携したうえで供給を受け、スイッチングハブなどを販売すると見られる。プリンタも同様に他社から供給を受けて販売する予定。来年中に発売する予定だが、詳しい次期は未定だ。

 デルが国内で新しい市場に参入する背景には、企業がクライアントPCやサーバをデルで購入する際に、同時にネットワーク機器やプリンタを購入したいという企業の要望が多いということがある。同社は、ネットワーク機器やプリンタでも、低価格戦略と手厚いサポートで企業の支持を集めたい考え。デルは現在国内2位のサーバ市場のシェアを、早い段階で1位にすることを目標としていて、エンタープライズ市場へのフォーカスを強めている。

 デル氏は会見で「厳しい経済環境下で利益を上げながら、シェアを伸ばしているのはデルだけ」と強調した。特に日本市場について「顧客の声を積極的に聞くことで成功した」と評価。日本とアジア太平洋地域のデルの売り上げが近くヨーロッパの売り上げを超えて、「2005年には世界一の市場になる」との見通しを述べた。さらにデルが新たに参入する「周辺機器と、ソフトウェア、サーバ、ストレージ、サービスの売り上げを国内で2倍にしたい」と目標を明らかにした。

 デルコンピュータ日本法人の代表取締役社長 浜田宏氏もエンタープライズ市場を重視する考えを強調した。「日本のコンピュータ市場は最悪期を脱したが、回復の兆しが見えているかはわからない」と経済環境を説明したうえで、「しかし、企業が扱うデータ量は増え続けている。サーバ、ストレージの需要は相対的に伸びる」と法人開拓のチャンスは広がってきたとの認識を示した。そのうえで「サーバ、ストレージ、サービスの“3S”にフォーカスすることでシェアを伸ばし、評価をさらに得たい」と話し、「法人向けのクライアントPCでつちかってきた信頼を基にエンタープライズ市場、コンシューマ市場をさらに開拓する」と宣言した。

 米デルが米国で販売しているPDAや、量販店を通じて中小企業向けにノーブランドで販売する「ホワイトボックス」のPCについてデル氏は「PDAは日本で投入のチャンスを見ている段階」と話し、積極的な姿勢を示した。ホワイトボックスについては「米国で実験段階。米国外で販売する計画はない」と述べた。

 デルはさらに、日本で開発した省スペース型のデスクトップPC「OptiPlex SX260」を発売することも発表した。日本の顧客からの声を聞いて開発した“日本独自”の製品で、デルは世界市場へもフィードバックする方針。製品に対する目が厳しいといわれる日本の顧客の声はデルにとって貴重な意見で、製品開発に生かすことができる。しかし、逆にみれば、それだけ日本市場の開拓が難しいということ。日本向けの製品開発は、デルが市場の開拓に四苦八苦している証拠といえるかもしれない。周辺機器や独自開発製品がエンタープライズ市場開拓のブレークスルーとなるかどうか、注目を集めそうだ。

(垣内郁栄)

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