「仮想化」が実現するストレージのブレークスルー

2002/11/7

日本ヒューレット・パッカードのネットワークストレージソリューション統括本部長 古谷幹則氏

 ストレージは現在、サーバに直結するタイプ(DAS)からネットワーク型のSANやNASへの移行が急激に進んでいる。しかし、SANにも課題はある。11月1日に開催されたイベント「ストレージ・ソリューション フォーラム2002」(主催:日経BP製品技術研究センター)で講演した日本ヒューレット・パッカードのネットワークストレージソリューション統括本部長 古谷幹則氏は、SANの問題点を指摘したうえで「仮想化でストレージの究極のゴールに近づく」と述べ、仮想化技術がブレークスルーになるとの認識を示した。

 古谷氏はSANの技術的問題点として、必要となる容量の予測が難しく、ストレージ全体での利用効率にムラが出ること、ヘテロジニアス(異機種混在)環境の構築に制限があること、ストレージ個々の管理が必要、レガシーストレージの流用が難しいことなどを指摘した。また、SANを利用するうえでのビジネス上の問題としては、情報システム部がデータ管理やシステム管理、アプリケーション管理に時間が取られて、情報システム部が本来やるべきITの戦略的作業ができていないことを指摘した。古谷氏は「SANについての作業が増大して、情報システム部の本来のバリューが生かせていない」と問題点を明らかにして、「企業は情報システム部の人員を増やすのではなく、戦略的作業の比率を上げる必要がある」と述べ、「そのためには仮想化が役立つ」と訴えた。

 ストレージの仮想化とは、ネットワークに接続された複数のストレージをあたかも1つのストレージのようにして利用できる技術。運用管理も1つに統合されるため、管理コストの低減につながるとされる。ストレージ仮想化の技術タイプとして古谷氏は、「ホストベース」「ストレージ・アレイベース」、それに「ネットワークベース」を説明し、今後期待できるのは「ストレージ仮想化がネットワーク内の専用プロセッサ上で行われるネットワークベース」と述べた。

 HPではネットワークベースの仮想化に対応したストレージの仮想化アプライアンス「StorageApps sv3000」を販売している。sv3000は複数、異機種のストレージデバイスをネットワーク化し、仮想ストレージ・プールを提供できる。これらは、1つのリソースとして管理でき、自由なストレージ空間を割り当てることができるという。古谷氏はストレージの仮想化が進むことで、「情報システム部が、ITの戦略的な利用に集中できる」と述べ、「仮想化が普及することで、3年後にはストレージの可用性や信頼性、運用性という言葉は懐かしい言葉になるだろう」と、その将来像を予測した。

(垣内郁栄)

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