「IP電話へアクセル踏む」、NTTコムなど3社が無料通話提供

2002/11/15

 ISP最大手のニフティとNTTコミュニケーションズ、ソニーコミュニケーションネットワークは、それぞれが提供するIP電話サービスの共同展開で提携すると発表した。NTTグループの中核企業であるNTTコムは低迷が続く一般固定電話に見切りをつけ、IP電話へ舵を切る。KDDIや日本テレコムなど他の通信キャリアもIP電話を本格的に開始する方針で、日本の電話会社は“IP電話会社”への転換を始めた。

 3社はADSL利用者を対象に、12月にIP電話の実験サービスを開始。来年1月には3社のIP電話を相互に接続し、ユーザー同士が通話できるようにする。本格サービスは3月に開始する予定。3社のユーザー同士の通話は無料として、市内、市外、国際通話はNTTの固定電話に比べて割安にする。ADSLモデムにアダプターを接続して、通常の電話機でサービスを利用できるようにする。

会見後に握手をするNTTコミュニケーションズのコンシューマ&オフィス事業部長 前田幸一氏、ニフティの常務取締役システム事業部長 加藤雄一氏、ソニーコミュニケーションネットワークの取締役専務(COO) 近藤幸直氏(左から)

 3社は、総務省がNTTコムに割り当てるIP電話専用の「050」で始まる電話番号を利用し、一般電話からも発着信できるようにする。通信プロトコルはSIPを採用。3社の加入者の合計は1100万人。IP電話を利用できるブロードバンド回線の利用者は130万人になる。3社は提携することで無料通話できるユーザー数を増加させて、先行するソフトバンクグループのBBフォンなどに対抗する。

 今回の提携にNTTコミュニケーションズが加わったことは大きな意味を持つ。IP電話が普及して最も大きなダメージを受けるのはNTTグループだからだ。NTTコムの取締役経営企画部長 高瀬充弘氏は「固定電話のマーケットは縮小していて、今後はIPベースの電話が広がると考えていた。IPへのアクセルを踏むタイミングが来た」と述べ、NTTコムとしてIP電話に本格参入する考えを示した。NTTコムがグループの意向をまったく無視して、IP電話に参入するとは考えられない。NTTグループはNTTコムをIP電話市場を探る先遣隊にする考えだろう。

 IP電話は無料通話ができるユーザー数が増えるほど、サービスの魅力は増大する。3社は他のISPにも呼びかけて、IP電話サービスの連合を広げる考えだ。ただ、NTTコムの高瀬氏は3社の提携に他社が加わるケースとして、「ISPが加わるのは容易だが、VoIPのネットワークを持つ通信キャリアが加わって、相互に接続するのは難しいだろう」と指摘。IP電話はサービス品質を保つためにVoIPの専用ネットワークを利用するケースが多い。今回もNTTコムがVoIP用の基盤ネットワークをニフティ、SCNに対して“卸し料金”を設定して提供した。そのため、独自にIPネットワークを持つKDDIや日本テレコムは、NTTコムにとってライバルに当たり、提携は難しい。

 現在、この“卸し料金”の設定は通信キャリアによってバラバラ。どの通信キャリアが、どのISPと組むのか。IP電話が今後拡大するかどうかは、通信キャリアが握ることになりそうだ。

(垣内郁栄)

[関連リンク]
NTTコミュニケーションズの発表資料
ニフティの発表資料
ソニーコミュニケーションネットワークの発表資料

[関連記事]
ヤフーBBテレビを発表するソフトバンクの真意 (@ITNews)
「企業向けのPDAで先陣を切る」と、NECインフロンティア (@ITNews)
安さよりソリューション、NTT-MEの無線IP電話サービス (@ITNews)
NTTコムが広域LANの新サービス、キーワードは「ADSL」 (@ITNews)
NTT-MEが描くブロードバンド市場攻略の新戦略とは? (@ITNews)
ISP4社の提携で、1000万人規模のブロードバンドサービス実現 (@ITNews)

情報をお寄せください:



@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)