IP電話で11社が提携、通信キャリアのさや当て鮮明に

2002/11/29

 KDDIと日本テレコム、東京電力系の東京通信ネットワーク(TTNet)の3社は、それぞれのISPが提供予定のIP電話サービスで、相互の接続を無料にすると発表した。合わせて、3社はADSL事業者のイー・アクセスとも提携。イー・アクセスのADSL回線を利用してブロードバンドサービスを提供しているNECや松下電器産業など8つのISPでもIP電話が利用できるようにする。今回提携したISPの計11社は来年3月から順次、IP電話の本サービスを始める。

 各社が始めるIP電話サービスではイー・アクセスがIP電話機能付きのモデムをユーザーに提供。加入手続きやサポートも代行する。各ISPのユーザー間や異なるISPのユーザー同士で無料通話させる。ISP11社の総会員数は1650万人。

 IP電話はソフトバンクが提供する「BBフォン」が先行。10月末で77万人の利用者がいる。IP電話は無料通話できるユーザー数が多いほうが有利で、新規のユーザーも集めやすい。そのため、ユーザーを増やす目的でISPの提携が続いている。NTTコミュニケーションズとニフティ、ソニーコミュニケーションネットワーク(ソネット)は11月14日に提携。それぞれが始めるIP電話サービスを相互に接続して、ユーザー間で無料通話させると発表した。この提携にはNEC、松下も後に加わった。

 今回11社の提携を発表したKDDIと日本テレコムはすでに、NEC、松下と組織したメガコンソーシアム内でIP電話サービスを相互接続することを発表していた。今回の提携でIP電話のサービスグループは、ソフトバンクグループ、NTTコムを中心とするグループ、メガコンソーシアムグループ、11社連合の4つなった。

 無料通話できるユーザー数を増やすため、グループ同士の提携がさらに進む可能性は高い。今回の11社連合にはメガコンソーシアムの4社がすでに含まれているし、NTTコムのグループにもメガコンソーシアムのNECと松下が参加している。ユーザー数を最大にすることを第1に考えるなら、ソフトバンク以外のグループが1つにまとまる可能性もある。

 IP電話のグループ戦略でポイントになるのがNTTコムやKDDI、日本テレコム、TTNetなど通信キャリアの動向だ。ニフティ、NECなどIP電話のネットワークを持たずにサービスだけを提供するISPが、グループをできるだけ大きくして、無料通話できるユーザー数を増やしたいと考えるのは当然。

 だが、通信キャリアは、ISPにIP電話の通信ネットワークを使わせることで収益を期待している。一般固定電話の収益が先細りする中、ほかの通信キャリアとネットワークを相互に接続することは、IP電話からの収益が小さくなることを意味する。今回、KDDIと日本テレコム、TTNetがネットワークの相互接続で提携したのは、“反NTT”の思惑があり、NTTコムが相互接続で加わるのは困難と指摘する声もある。NTTコムの取締役経営企画部長 高瀬充弘氏もニフティ、ソネットとの提携会見で、「ISPが加わるのは容易だが、ネットワークを持つ通信キャリアが加わって、相互に接続するのは難しいだろう」と述べ、ほかの通信キャリアとの接続に慎重な姿勢を見せた。

 総務省は11月25日、IP電話用の「050」で始まる電話番号をKDDIなどに配布した。各ISPがIP電話の本サービスを始めるのは来春。グループ作りをめぐって紆余曲折が続きそうだ。

(垣内郁栄)

[関連リンク]
KDDIの発表資料
日本テレコムの発表資料
東京通信ネットワークの発表資料
イー・アクセスの発表資料

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