NTTコミュニケーションズ、VoIP実験結果で勝算のもくろみ
2003/3/11
NTTコミュニケーションズは3月6日、同社を含む大手ISP5社が実施した「VoIP相互通話共同実証実験」(2003年1月29日〜2月28日)の検証結果を発表した。各ISPのADSLモニターユーザー4万人から評価結果のアンケートを回収した。共同実験に参加したのは、NTTコミュニケーションズ(OCN)のほか、ソニーコミュニケーションネットワーク(So-net)、ニフティ(@nifty)、NEC(BIGLOBE)、松下電器産業(Panasonic hi-ho)。実証実験の目玉は、各ISP間で相互接続を行った場合の品質保証やスムーズな運用体制の検証だ。
NTTコミュニケーションズ 経営企画部担当部長の長谷部敏治氏 |
アンケートによると、7割以上のユーザーが「本格サービスも継続して利用したい」と回答、その理由として「一般電話への通話料金の安さ」や「IP電話同士の無料通話範囲の広さ」を挙げた。とはいえ、モニタとなったのはすでにADSLを活用するユーザーであり、新たにADSL網を敷設する必要がある新規ユーザーとは質が異なる。つまり、VoIPサービスを享受するためには、当面ADSL網をインフラとして活用する必要があり、ADSLの新規ユーザーに対しては初期費用としての敷設料金+VoIPの端末(アダプタを含む)料金などがかかる。当然、VoIPの通話料金は月ごとに徴収されるため、これまで無料のモニターサービスを受けていたユーザーが有料の本サービスに移行するかどうかという課題に対して、今回の実証実験が明確な答えを示したわけではない。ただ、NTTコミュニケーションズ 経営企画部担当部長の長谷部敏治氏は、「(すでにADSL網を有するユーザーが対象とはいえ)予想以上の数値を獲得できた」とコメント、VoIPの将来性に対して自信を見せた。
もちろん、不安材料はある。VoIPを導入することで心配な点として挙げられたのは「盗聴」「個人情報漏えい」「迷惑電話」(DoS攻撃)などのセキュリティについてである。この点について、同社では明確な技術的回答を示さなかった。というのも、技術的な課題以前に法整備という大きな問題が立ちはだかるからだ。個人のプライバシー情報(通信の中身など)をどこまで公開できるのか、誰が公開できるのかなど、現在総務省、経済産業省を中心に討議を重ねている最中である。
また、アンケート上では、品質向上について目立った不満を挙げるモニタは「いなかった」(同社)ようだが、今後VoIPサービスが普及を目指すうえで避けられない課題が、KDDIなどNTTコミュニケーションズ以外の通信キャリアとの相互接続による品質の確保である。今回はNTTコミュニケーションズとISP4社という“閉じた世界”での相互接続実験を行っただけだが、今後は、ほかのキャリア+そのキャリアと接続するISPという大規模かつ複雑な相互接続検証が必要になる。
NTTコミュニケーションズがVoIPサービスに参入することで、収支面では、従来の稼ぎ頭である長距離、国際電話の収益圧迫が考えられる。それでも、同社はVoIPサービスに参入せざるを得ない。固定電話での一時的な収支の圧迫に目をつぶっても、VoIPによる電話サービスを皮切りとした各種IPサービスの追加によって、継続した新事業に育てていけるというもくろみがあるからだろう。長谷部氏は「VoIPサービスの接続検証は予想通りのよい結果を出した」とし、「SIP(Session Initiation Protocol)をベースとした画像のやりとりやUnified Messaging(留守録、FAX蓄積など)、Mobile IPを使ったモビリティ面などのサービスを組み合わせて提供していく」と語り、VoIPが新たな収益源になる可能性を示した。
(編集局 富嶋典子)
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NTTコミュニケーションズの発表資料
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