法人利用が急増、2003年はIP電話元年になるか
2003/1/7
プロバイダー大手が提携するなど2002年はIP電話に注目が集まった年だった。先行してスタートしていたソフトバンクの「BBフォン」は2002年11月に登録が100万件を突破。コンシューマでは確実に広がりつつある。コンシューマ同様にIP電話の広がりが期待できるのが、企業向けの利用だ。IP電話サービス各社は、大口利用が見込まれる法人市場を重視していて、コスト削減をアピールして導入を呼びかけている。法人市場でもIP電話はブレークしそうで、2003年がその元年になる可能性は高い。
東京ガスは2003年初めから順次、全社の社内電話をIP電話に切り替える。まず本社の2000台をIP電話に交換、2004年春までに約100カ所の事業所で、2万台のIP電話を導入する計画だ。社内通話は無料、社外への発信も全国一律で3分8円になる。PBXの運用・保守費用などがなくなり、同社では全体の通信コストは現在の年10億円から半分以下になると予想している。公的性格の強い大企業がIP電話を採用したことで、ほかの企業へ広がる可能性は高い。
IP電話のシステム構築はNTTデータが担当。IP電話のインフラは新興通信会社、フュージョン・コミュニケーションズが構築した。利用したのはフュージョンのIP電話サービス「FUSION IP-Phone」と、そのオプションサービス「FUSION IP-Centrex」。FUSION IP-Phoneはフュージョンが2003年2月に開始する予定のサービスで、IP電話用の「050」の電話番号を利用する。FUSION IP-Centrexは、従来は社内管理していたPBXの内線、転送機能をフュージョンが管理するネットワーク側のソフトで提供するサービス。PBXを社内に持たないため通信設備コストや保守費用を大きく削減できるという。
IP電話のプロトコルはSIPを採用。IPネットワークに音声データを載せることで、CRMやグループウェアとの連携も可能だという。フュージョンでは「東京ガスの案件はまだオーダーメイド。ノウハウを蓄積してカスタムメイド化したい」と話している。
企業のIP電話への移行は、NTTをはじめとする既存の通信会社に大きな打撃を与えることになる。NTTは光ファイバネットワークを活用した高品質のブロードバンド回線を核とした新ビジネスモデル「“光”新世代ビジョン」を2002年11月に発表した。だが、今後大幅な減少が予想される一般電話の減収をカバーするような新しいビジネスの姿は、まだ見えない。
ソフトバンクはBBフォンで、既存の通信会社を狙い撃ちするような営業を行っている。BBフォンの法人向けIP電話プランの1つではオール定額制を導入。企業の過去3カ月の通話料から月額の平均額を計算。その80%を、BBフォンの通話料とする。仮に月々に支払う通話料の平均が100万円だったとすると、BBフォン導入で月額の通話料は80万円になる。社内通話、国内通話、海外通話が定額で、BBフォン同士の通話は無料。企業にとってはIP電話導入によるコストダウンを計算しやすい。ソフトバンクにとっても営業で説明しやすいだろう。ソフトバンクによると、BBフォンの法人サービスは現在、「お試し中」ということだが、すでに1000社以上に納入しているという。
IP電話向けルータで大きなシェアを持つシスコシステムズは、新光証券や新生銀行にIP電話を納入していることをWebサイトで明らかにしている。社外への通話も含めて、すべてIP電話に置き換えた企業はそれほど多くないが、社内電話に限った場合、通信コストや保守・管理コストが大きく下がるIP電話の導入を企業がためらう理由は、信頼性や品質の心配をのぞいて見つけにくい。東京ガスのような事例が増えるにつれ、雪崩を打ったように企業の移行が進む可能性は高い。2003年は企業にとってIP電話元年となるだろうか。そしてNTTなど既存の通信会社はどう立ち向かうのか。今年の通信業界は2002年以上に注目を集めそうだ。
(垣内郁栄)
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