現状維持やむなし、サン新社長は長期的成長を探る

2003/7/17

サン・マイクロシステムズ 代表取締役社長 ダニエル・ミラー氏。195センチと長身

 サン・マイクロシステムズ 代表取締役社長に7月1日付けで就任したダニエル・ミラー(Daniel Miller)氏は、「グローバルの考えをサンに投入し、日本の従来の考えとうまくブレンドさせたい」と今後の経営方針を説明した。代表取締役会長に就任した前社長の菅原敏明氏は、ミラー氏を「15年間のサン本社でのすばらしい経験がある」と評価。一方で、「日本人のカルチャーの中で新しいビジネスモデルを作り上げることができるかが課題」とし、「共同で経営の責任を負いたい」と述べた。新生サンは、しばらくはミラー氏と菅原氏の二人三脚体制になりそうだ。

 ミラー氏は7月1日からのサンの新年度で、特に力を入れる事業分野を説明した。最も力を入れるのは「パートナー・モデル」で、既存のパートナーを維持し、新たな投資を行うと説明。「ソリューションを共同開発し、長期的な関係を築けるパートナーを増やす」と述べた。一方で、「サンが直接、顧客に福音をもたらし、情報を提供することが重要」と述べ、ダイレクト・モデル(直接販売)を推進する考えも示した。情報発信することで、N1などサンの活動を顧客に理解してもらい、同社の顧客指向を高める。

 ソリューション開発も強化する。特に力を入れるのが同社が“4 Towers”と呼ぶ「データセンター」「データマネジメント」「Webサービス」「エッジコンピューティング」の4分野。データセンターは、企業の情報システムを対象にシステム運用の最適化や稼働率の向上、コストを削減できるソリューションを提供する。データマネジメントはストレージ関連のソリューション。ハードやソフトの開発で日立製作所との協力体制を強化するという。ミラー氏が「企業の重要なインフラになる」と指摘するWebサービスは、小型デバイスやスマートカード関連の技術開発に力を入れる。エッジコンピューティングでは、Linuxを搭載したブレードサーバの開発を積極展開し、ビジネスの基幹業務で利用できるようソリューション開発やサポートを強化するという。この4 Towersを貫くテクノロジ基盤となるのが「N1」で、ミラー氏は、「単に最新の技術というだけでは顧客に受け入れられない。ビジネスに対するソリューションを短期に開発し、提供するのが重要だ」と述べた。

 N1については、サンはミドルウェアに関する従量制を含む新しいライセンス制度を米国で検討している。ソフトのバージョン管理を含む制度で、N1での課金基盤になる模様。ユーティリティ・コンピューティングに対応し、利用した時間だけ課金する制度になるようで、顧客に対して課金の仕組みを分かりやすくするのが目的。米国では早ければ年内にも始める予定のようだ。

 サーバベンダを取り巻く環境は厳しい。企業のIT投資がなかなか復活しない中で、企業システムのトレンドが、サンの主力であるUNIXサーバから、IAサーバやLinux搭載サーバへと移行する流れもある。ミラー氏は「短期的にはフラットな成長でもいいので、長期的な成長のための投資をしたい」と述べ、顧客やパートナーなどの“現状維持”を優先する考えを示した。力を蓄えることで、経営の安定を獲得し、長期的には「サーバ、ワークステーション、ソフト、サービスで伸ばしていく」(ミラー氏)のが目標。ミラー氏は「われわれはリセラーやシステム・インテグレータではない。イノベーションし、ユニークな形で提供する」と述べて、顧客指向の技術革新を続ける考えを強調した。

(垣内郁栄)

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