[eWEEK] UNIXライセンスを巡るパラドックスがサンを追い込む

2003/8/12
Jason Brooks

 米サン・マイクロシステムズのCEO(最高経営責任者)、スコット・マクニーリ(Scott McNealy)氏は米SCO対Linuxの論争について、「世の中にタダで手に入るものはない(There's no free lunch here)」と語った。マクニーリ氏の言うことは至極もっともだが、実際の同氏自身の考えとはちょっと違うようだ。マクニーリ氏はeWEEK編集長のEric Lundquist氏が行ったインタビューで、LinuxコミュニティとMP3を好き放題に交換するNapsterユーザーとを比較し、オープンソースの「ライフスタイル」を選んだ場合の著作権責任の危険に言及した。

 サンのトップがいくらLinuxやオープンソースに対する恐怖、不確実性、そして不信を声高に唱えようと、同氏およびその会社はナプキンを付け直して無償ソフトウェアの並んだテーブルへと向かわざるをえない。

 サンのデスクトップやx86サーバの戦略は、論争の最中にあるこのOS(とりわけ米レッドハットが用意し、配付するバージョン)に今まで大きく依存していたため、マクニーリ氏の目を見張るような意見を聞いてしまうと、企業各社はLinuxに対する同社の態度に途方に暮れてしまうはずだ。

 だが、潜在的なSCOの脅しから顧客を保護できていないとしてインタビュー中でマクニーリ氏が名指ししたのは、当の米レッドハットだった。 サンはこのような攻撃からSolarisユーザーを保護することには前向きだが、Red Hat Linuxを販売した顧客にまで、このような保護を提供することには前向きでないように思える。

 Lundquist氏は先週のコラムの中で、サンが独自にLinuxのディストリビューションを開発する可能性について述べたが、このようなサン版Linuxディストリビューションならばサンの広範なUNIXライセンスで保護されるし、ユーザーはSCOから保護されることになり、サンも事実上Linuxで成功できるだろうというわけだ。

 ただ、eWEEKに対するマクニーリ氏の話と違ってこのシナリオで問題なのは、たとえ数千万ドルものライセンス料を支払っても、サンはUNIXを「依然所有していない」という点だ。配付できないものは所有物とは言えないし、GPLでのUNIX配付をSCOがサンに認めることはあり得ないだろう。

 GPLでライセンスされたコードならば、これを再配布する相手に対して同じ自由を否定しない限りは何でも自由にできる。もしSCOがGPLでのSun Linuxカーネルを認める場合は、サンのディストリビューションを受け取った人は誰でもこのコードを再配布できることになり、SCOの知的所有権を巡る論争を完全に回避することになる。

 また、なぜサンは自社版のLinuxディストリビューションをCPU単位、バイナリ専用、再配布禁止ディストリビューションといった別のライセンスでリリースできないのだろうか? ここでマクニーリ氏の言葉を再び引用すると「著作権が問題」なのだという。

 SCOの申し立てがすべて立証可能であり、強制執行が可能でも、SCOが権利を保有するLinuxカーネル中の一握りの知的財産は、全体から見ればほんの一部でしかない。著作権は重要であり、無数のLinuxカーネルデベロッパが持つ著作権にもSCOのそれと同様に重要である。Linuxに寄与した企業や個人も自分たちのコードをGPLという特別な方法でライセンス供与しているのだ。

 サンに、これら多くのデベロッパが携わった作業を生かす義務は一切ないが、もしそうすることにした場合、サンにはこれらの人々が作業の成果を配付するために選択したライセンスを遵守する必要がある。

 世の中にタダで手に入るものはない。サンがSCOをなだめると同時にLinuxカーネルデベロッパの知的財産権を尊重することは不可能だ。もし、Sun Linuxが登場するようなことになれば、これにはRed Hat LinuxやSuSE Linux、もしくはSCO自身のUnitedLinuxと同じような汚点が付いて回ることになるだろう。

 それに正当性があろうとなかろうと、SCOの著作権に関する無謀な主張は本当の脅威であり、サンが自社のロードマップから完全にLinuxを排除しない限り、Linuxを運用、開発、もしくは配付する他社同様に、同社もこの脅威の影響を受けることになる。

 マクニーリ氏の意見は、Solarisに搭載されるGNOMEデスクトップ環境からマイクロソフト対抗製品として人気の高いSunのStarOfficeまで、すべてのオープンソースプロジェクトに暗雲を投げかけることになる。

 カリフォルニア州サンフランシスコで開催されるLinuxWorldに出かける機会があれば、サンのブースに立ち寄り、マクニーリ氏とサンにはそろそろSCOの愚行によって実現されたIBMなどのライバル各社に勝つチャンスの先を見据え、顧客、パートナー、そしてデベロッパのために立ち上がるよう関係者に伝えてほしいものだ。

[英文記事]
Sun's Unix-License Paradox

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