第5世代のDDSを発売したHP、その後の戦略は?
2003/8/16
ヒューレット・パッカードがDDSの新製品開発を取りやめたのは2000年のこと。しかし同社は今年になって第5世代DATドライブ「HP StorageWorks DAT72」(DAT72)の発売を開始した。戦略を大きく変更した理由は何か。
日本HP エンタープライズストレージ&サーバ統括本部 NSS 製品本部 製品企画部 担当マネージャ 藤巻敬久氏 |
「その理由は、テープ市場の動向を見誤っていたためだ」と明快に答えてくれたのは、日本ヒューレット・パッカード エンタープライズストレージ&サーバ統括本部 NSS 製品本部 製品企画部 担当マネージャ 藤巻敬久氏だ。藤巻氏によると、「当時(2000年ころ)は、ミッドレンジで使われているDLTの技術などがローエンドにも波及し、DDSに取って代わると考えていたため、DDSの開発をとりやめた」のだという。
しかし、ローエンド市場からDDSが大きく減少することはなかった。その理由は、DDSに比べて大きいDLTの筐体やテープ1本当たりの価格が1万円程度すること(DDS用のテープは、DDS-3用で1200円〜2000円程度、DDS-4用は2500円〜4000円程度)、さらに、そもそも見込んでいたローエンド向けDLT製品が市場にほとんど投入されなかったことなどによる。
伸びると思われていたDLTに関していえば、「ハイレンジ向けのLTOがミドルレンジのDLTの市場にも食い込む結果となり、シェアを落としている」と藤巻氏はいう。
日本HP ネットワークストレージソリューション統括本部 ストレージパートナー営業本部 OEM営業部 ビジネスデベロップメントマネージャー 志渡みず絵氏 |
では、DDSはテープドライブ市場の中で、どれほどのシェアを維持しているのだろうか。日本HP ネットワークストレージソリューション統括本部 ストレージパートナー営業本部 OEM営業部 ビジネスデベロップメントマネージャーの志渡みず絵氏は、「2002年のガートナーによる調査では、DDSがテープドライブ出荷量のうち48%を占めている」と述べる。
つまり、減少すると思われていたDDSは現在でもテープ市場の半分(数量ベース)を占めているにもかかわらず、新製品が発売されないという状況にあった。一方、ハードディスクドライブの容量は年々増える一方。そのため、「お客さまから、バックアップ容量が増え、転送レートが向上した製品を、という要望が多く、販売に踏み切った」と藤巻氏はいう。
しかし、今回のDAT72がなぜ第5世代という名称で、これまでのようにDDS-5などの規格としてまとめ、発表しなかったのだろうか。その理由は、DDS-4まではHPとソニーによるオープンフォーマットだが、今回ソニーが開発に参加しなかったため、DDSの新しい規格にはならなかったからだ。
第5世代の製品はDAT72の1製品しかないが、HPはいくつかの製品バリエーションを考えていて、「オートローダの製品は発売したい」という(藤巻氏)。ただし、発売時期などは未定だ。
今後のDDSのロードマップだが、HPによると2005年には容量70〜80GB、転送レートを5MB/sにした第6世代を、2007年には容量120〜160GB、転送レートを8MB/sにした第7世代を発表していく予定だという(いずれも非圧縮時)。
しかし、HPにも課題はある。過去において日本ではHPが直接販売よりもOEMや代理店経由での販売が中心だった。その当時は、バックアップの重要性や実際の方法などを代理店がセミナーなどを開催するなど、販売促進、支援活動を行ってきた。現在は、単体販売からソリューション販売などを中心とする代理店が多くなり、代理店による活動はさほど期待できない。しかし、DDSの購入層である企業の部門、中小企業などには、啓蒙活動は欠かせない。「HPも代理店も購入者層も世代交代」(藤巻氏)した中で、次にHPがどのような策を取るのかに注目したい。
(編集局 大内隆良)
[関連リンク]
日本ヒューレット・パッカードの発表資料(HP
StorageWorks DAT72)
日本ヒューレット・パッカードの発表資料(キャンペーンほか)
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