Advanced TCAは、通信インフラに大競争時代を招くか?

2003/11/5

 通信会社やインターネット・サービス・プロバイダ(ISP)などがここ数年直面しているのは、顧客がネットワークを利用し、そこに流れるデータ量が増加するにもかかわらず、利用料は年々下がる問題だ。いわゆるARPU(顧客1人当たりの利用料)は伸びず、低迷しているという事実だ(ただし、最近KDDIのauのようにARPUが再び伸びた企業もある)。

 一方で通信会社やISPなどが提供するネットワークサービスは今後も増え続けるだろう。となれば、ネットワークインフラへの投資、強化は避けられない。だが、利用料が低迷を続ける中での投資は、従来以上に安く、しかしながら性能、機能が向上したネットワーク機器を必要とする。

 こうしたことに応えるため、ネットワークベンダは価格性能比を向上させた製品を開発、販売し、熾烈な競争を繰り広げている。とはいえ、基本的にはプロプライエタリな製品が多く、価格の下落は緩やかなものとなる。

 そこで、専用ハードウェアから標準化できるものは標準化し、それによって価格をさらに下げようという動きが出てきた。その標準化のベースに利用しようとするのがインテル・アーキテクチャ(IA)で、実際には、PICMG(PCI Industrial Computer Manufactures Group)で策定した高度な通信プラットフォームの標準規格であるAdvanced TCA規格がそれに当たる。

 インテル 取締役兼通信事業本部長 高橋恒雄氏は「ネットワークインフラストラクチャを標準化することで、いままでより安いコストで実装できるようになる。メンテナンスも標準化することで安くできる。つまり、投資も経費も安くできる」と語る。

 具体的にはAdvanced TCA規格のプラットフォーム上にOSDL規格のGarrier Grade(CG) Linux、SAF(Service Availability Forum)のオープンスタンダードインターフェイスを採用、そのうえで各社がミドルウェアを実装し、提供する。

 PICMGのメンバーには、インテルやサン・マイクロシステムズ、マイクロソフトなどの名前のほか、ルーセント・テクノロジーやノーテルネットワークスなどの通信機器ベンダも名を連ねている。

 では、標準化した場合、通信機器ベンダにメリットはあるのか。標準化されコモディティ化し、結局価格勝負になれば、あとは体力勝負になるのではないか。その点について高橋氏は、「確かに価格競争にさらされる。通信事業者にとっては喜ばしいことだが、機器ベンダにとっては、新しい競争時代がやってくることになる」と語る。「しかし、標準化するといってPCのようにすべてを標準化するわけではない。その標準のうえにさらに各社のノウハウやミドルウェア、通信会社と共同で開発した機能なども提供できる」と述べ、価格競争よりも重要なのは、そうした各社の付加価値競争になるとの見方を示した。

 Advanced TCAに準拠した製品は、すでに市場に投入されている。日本では9月にNECが製品を発表、その最初のユーザーとなるのはNTTドコモだ。

 Advanced TCAが普及するかどうかは、通信会社からのコスト削減要求、大手ネットワークベンダなどの取り組みによって大きく変わるだろう。もっともありそうな将来のシナリオは、大規模なシステムではプロプライエタリな製品、それ以下では標準化された製品、といった差別化だろう。各社はどのような戦略を描いているのか。今後、各社が製品化していくのか。それが将来のシナリオに大きな影響を与える。

(編集局 大内隆良)

[関連リンク]
インテル
米インテルのAdvanced TCAのWebページ

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