[Interview]
次期製品は「人」をつなぐポータル、ブロードビジョン

2003/11/26

 パーソナライズアプリケーションのリーディングベンダであり、現在はポータルソリューションを推進している日本ブロードビジョンの顧客向けセミナーが11月25日、東京都内で開催された。本セミナー開催に当たり来日した米ブロードビジョン ビジネスコンサルティング サービス ダイレクタ ルード・ヴァン・ヒルテン(Ruud van Hilten)氏と、同 グローバル オペレーションズ マネージャ ステファン・カーウィック(Stephen Kerwick)氏に、ブロードビジョンが提供するソリューションの方向性と現在のビジネス状況について聞いた。


――ブロードビジョン製品が脚光を浴びた1999年ごろはeビジネスブームに乗り、One-to-OneマーケティングやCRMが注目されました。その後、ポータルソリューションベンダとして位置付けを強固にしてきたわけですが、いまのIT業界やユーザー動向を見ると、One-to-Oneもポータルも不完全燃焼した感があります。この状況をどうご覧になっていますか。

米ブロードビジョン ビジネスコンサルティング サービス ダイレクタ ルード・ヴァン・ヒルテン氏

ヒルテン氏 いままでの「ポータル」という言葉は、「Web画面を通じて社内の情報にアクセスできる」と非常に単純化されていました。しかし真のポータルとは、Webを通じて従業員・顧客・パートナー企業をつなぎ、ビジネスの流れを円滑にさせることです。Webがつなぐのは、データではなく「人」と「企業」です。従業員、顧客。ビジネスパートナーの人間が必要としている情報を企業が提供する――これがブロードビジョンの考えるeビジネスのスタイルです。

――アプリケーション的にいえば、そこで「つなぐ」という技術が注目されるわけですが、他社のパーソナライゼーションツールやポータル製品に比べて、どのような優位性を持っているのですか。

カーウィック氏 われわれは、企業にかかわるすべての人間をエンドツーエンドでつなぐポータルフレームワークと、パーソナライゼーションのフレームワーク両方を提供している唯一のベンダです。パーソナライゼーションもポータルも、一度に両方実現しようとすると、複数の製品を組み合わせないといけません。これでは大変なコストが掛かってしまいます。だからといって、どちらか一方だけを導入すればいいというわけではありません。エンドユーザー自身の視点に立ち、システムが必要な情報をプッシュしてくれるという使い勝手がなければ、Webのビジネスアプリは企業内に根付かないからです。

米ブロードビジョン グローバル オペレーションズ マネージャ ステファン・カーウィック氏

 そこで、われわれが当初から標榜(ひょうぼう)していたパーソナライゼーション技術が生きてくるのです。さらに、コマースなどのアプリケーションや各種データソースへのアクセス、基幹システムの受け口などの必要技術をすべて網羅しているので、開発期間が大幅に削減されるというメリットを持っています。

ヒルテン氏 追加すると、ブロードビジョン製品はJ2EEに準拠しており、現在のWebアプリケーションの技術トレンドに対応しています。例えば日本で5月に発表された新製品「BroadVision 7.1」では「Portal API」(JSR168)をいち早く実装していますし、XMLを通じて各種コンテンツへのアクセスを可能にしています。こうしたスタンダードなオープン技術への対応は開発の負担を軽減します。だからといって新技術ばかりを追いかけているわけではなく、安定性や堅牢性も考慮しています。

――先ほど企業にかかわるすべての人間をエンド・ツー・エンドでつなぐという話がありましたが、その考え方はBPM(Business Process Management)が打ち出しているコンセプトに通じると思います。今後、ブロードビジョンはBPMの方向に進むのでしょうか。

ヒルテン氏 ブロードビジョン自身はBPMベンダではありません。BPMの場合、会社のプロセスを見直して改善するというプロセスが必要になりますが、Webアプリケーションでは複雑なプロセス管理はできないからです。現在大半の企業は、アプリケーションにビジネスモデルを実装しているので、柔軟な対応ができません。特にWebが導入されてからというもの、迅速な新しいビジネスモデルへの変更は必須ですが、現実問題としていまの企業でそれを実現するのは非常に困難です。

 ところが、Webでは「買う」「売る」といった単純なビジネスプロセスは管理できても、複数の人間や事業にまたがるビジネスプロセスを管理するのは不可能です。ブロードビジョンはここを解決するため、来年には複数の事業部やスタッフを統合して管理できる新製品を発表する予定です。

――具体的には?

ヒルテン氏 BPMの場合、プロセスをシステム的に統合するものなので、実際のエンドユーザーには裏でどういう動きをしているのか分かりません。そこで必要になるのが、エンドユーザーの目の前で具体的にどのようなプロセスやデータが動いているか見せるWebの仕組みです。次期製品は、人のインタラクティブな動きに応じて社内情報をつなげ、効率的なビジネスプロセスを実現するものになる予定です。

 ただし注意してほしいのは、われわれがターゲットとしているのはあくまで「人」であって、決して技術的なシステム連携ではありません。どういうプロセスをどう活用し、何をしたいのか。ここを明らかにしてこそ、当社の製品の価値が出てくると思います。

――そこでパーソナライゼーションはどう生きてくるのですか。

ヒルテン氏 われわれのパーソナライゼーション技術は「エンジン」ではなく、当社が提供するすべてのモジュールに埋め込まれた基礎技術です。例えばWebサイトのビュー変更やコンテンツ通知機能などのほか、個人の役割やプロフィールに基づいて情報チャネルを提示したり、人間に情報をマッチングさせるための19種類の技術を全モジュールに搭載しています。人間が必要な情報を、必要なタイミングで適切にプッシュすることで各人のビジネスが迅速化・効率化されます。

――BPMやポータルといった新しいキーワードの中で、これまでのブロードビジョンのテクノロジを十分に発揮されていくのですね。そこで今年、来年のビジネス状況についてお聞かせください。

カーウィック氏 ひとこと「好調」とだけお伝えしておきます。具体的な数値は出せませんが、ここ数年落ちていたIT投資について企業が積極的になってきた背景があります。さらに、ポータルが目指す「人」をつなぐというコンセプトやメリットが理解されてきたことにより、今後この分野の伸びはさらに期待できるでしょう。実際、われわれのユーザーの大半は運用予算の中に「ブロードビジョン製品のバージョンアップ費」を取っており、全社横展開も期待できます。中でも日本市場は大手企業90社以上を顧客に抱えており、戦略マーケットとして期待しています。

――パートナーを増やしたり、特定業種にフォーカスする予定は。

ヒルテン氏 SIパートナーについては、むやみに増やすのではなく、顧客企業のバリューを上げられるようにコンサルティングの強化に注力する予定です。われわれはSIパートナーに対し、技術サポートを徹底して顧客企業の満足度向上のお手伝いをするつもりです。

(編集局 岩崎史絵)

[関連リンク]
日本ブロードビジョン

[関連記事]
ポータルでビジネスアプリを全社利用へ広げるブロードビジョン (@ITNews)
セルフサービスにコンテンツ管理を融合させるブロードビジョン (@ITNews)
コンテンツ・マネジメント分野にマイクロソフトが参入 (@ITNews)
Dynamoはマーケティングの知恵を蓄積させるツール、ATG (@ITNews)

情報をお寄せください:



@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)