StarSuiteを1980円で販売、サンが決断した背景は

2004/1/16

 サン・マイクロシステムズとソースネクストは、統合オフィスツール「StarSuite 7 パーソナルパック」を1980円で2月5日に発売すると発表した。リプレースを狙うMicrosoft Office Standard Edition 2003が5万円程度で販売されていることを考えると、1980円という価格は破格。徹底した低価格戦略でコンシューマユーザー、エンタープライズユーザー双方の獲得を狙う。

サン・マイクロシステムズ 代表取締役社長 ダン・ミラー氏(右)とソースネクスト 代表取締役社長 松田憲幸氏

 1980円のStarSuite 7 パーソナルパックは、現在9800円で販売されている「StarSuite 7」と同じ機能を搭載する。ただ、1980円版は有効ライセンスが1年間、インストールが1CPUに限定される。9800円版は期間無制限で利用でき、5CPUまでインストール可能。1980円版はライセンスが切れたあとにソフトを買い換えるか、Webサイト上でライセンスを購入する必要がある。1980円版はソースネクストが電子メール、Webサイト上でサポートを提供。9800円版はサンが電話、電子メール、Webサイトでサポートを提供、という違いもある。1980円版はショップでのパッケージ販売、Webサイトからのダウンロード販売が用意される。対応OSはWindows、Solaris、Linuxで9800円版と同じ。

 ソースネクストは2003年2月に同社の主力ソフトを1980円に値下げすると発表した。販売チャネルも従来のPCショップから書店やレンタルショップなどに拡大。同年10月末には日本IBMの「Lotus1・2・3」を1980円で発売するなど、ビジネスソフトについても積極的な低価格戦略を採っている。ソースネクスト 代表取締役社長 松田憲幸氏によると、Lotus1・2・3は1980円に価格引下げ後、週当たりの販売本数が52本から1438本になり、売上総額も5倍になったという。

 ソースネクストはサンと協力し、2002年5月に「StarSuite 6.0」を発売。これまで約3万本を販売した。両社は1980円という手に取りやすい価格を設定したことで、Lotus1・2・3と同様の効果を期待している。サン・マイクロシステムズ 代表取締役社長 ダン・ミラー(Dan Miller)氏も「サンのすばらしいテクノロジをどのようにカスタマーに届けるかが重要」と述べ、ソースネクストのチャネルによる販売でコンシューマユーザー拡大への期待を述べた。

 サンには、1980円のStarSuiteを同社のデスクトップ戦略「Sun Java Desktop System」の切り込み役ととらえる考えもある。米サンのデスクトップ・ソリューション・グループ 副社長 カーチス・ササキ(Curtis Sasaki)氏はインドの保険会社が1万台のPCをMS OfficeからStarSuiteにリプレースし、年200〜300万ドルのコスト削減を達成した事例を紹介し、「代替的なデスクトップの時期が来た」とStarSuiteの好調をアピールした。

 しかし、国内での導入は中小企業や教育、政府向けが主流で、サンが狙っているエンタープライズ向けは導入が進んでいるとはいいがたい。採算を度外視した1980円という低価格でエンタープライズユーザーを獲得し、将来的にSun Java Desktop Systemに移行させる、というのがサンの思惑。ソフト単体で収益を得るソフトベンダから、プラットフォーム製品全体で収益を得られるシステムベンダへと転換を図るサンの試みといえるだろう。

(編集局 垣内郁栄)

[関連リンク]
サン・マイクロシステムズの発表資料
ソースネクストの発表資料

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