花+something、日比谷花壇のCRM戦略

2004/3/13

日比谷花壇 BtoC事業本部 EC事業部 部長 武山直義氏

 日比谷花壇グループは3月12日、「CRMセミナー 〜花を通じたCRMソリューション」と題したセミナーを開催した。「われわれはあくまで花屋である。しかし、花屋にしかできないことがある。それはつまり、人と人の心を花を介してつなぐメッセンジャーとしての役割を演じることだ」と日比谷花壇 BtoC事業本部 EC事業部 部長 武山直義氏はいう。花を単なる商品として店頭に陳列していただけでは売れない。「商品である花に物語あるいはテーマを付与し、市場を創造していくことが必要」だと同社では考えている。そこで必須となるのがCRMである。同社のような“華やかなビジネス”は、舞台裏をみると最新の情報技術に支えられている。

 ビジネスガイド社の調査レポートによると、2000年から2002年にかけて、「母の日」や「クリスマス」「誕生日」といったイベント日におけるギフト需要は軒並み拡大しているという。2000年のギフト需要総額は2兆493億円で、2002年には2兆9000億円にまで拡大、そのうち、「母の日」は2000年の3950億円から2002年で5000億円市場に、「クリスマス」は3300億円(2000年)から4000億円(2002年)市場に拡大した。このような市場規模のデータと日比谷花壇の顧客の購買データをクロスすることで、これまで見えてこなかった顧客の姿がみえてくる。武山氏の前に講演を行ったアクセンチュアの戦略グループ 統括パートナー 三谷宏治氏はこのような顧客の状況を「ステルス化」と呼ぶが、まさにいい得て妙といえるかもしれない。

 実際、武山氏がクリスマスの時期における同社の用途別顧客データを年代でソートして分析したところ、通常“若い女性がクリスマスの顧客層の中心”だとされていたが、実は、中高年の女性の需要が最も高い比率を示していたことが明らかとなった。ここからどういう仮説が導き出せるか。武山氏は「実は、家庭に市場があるのではないだろうか、という仮説のもとに、ホームデコレーションというコンセプトを設定して商品設計を行った。テーマは“家族と過ごすクリスマス”」だ。この企画を2003年のクリスマスの時期に実際に展開したところ、前年を大幅に上回る販売実績を記録した。

 同社が展開するビジネスの根幹は花を通して「お客さまに喜ばれるサービスを提供する」(武山氏)ことだ。CRMによって見えない顧客層を掘り起こし、市場を創造していくというアクションを行わなければ、ビジネスは縮小するという危機感に、同社は常に追い立てられている。例えば、「結婚記念日」市場を創造すること、「誕生日」市場を創造することといった企画も、CRMデータをもとに同社で展開した。その際のポイントは、他業種の企業と“Co-brand”展開を行ったこと。「花を中心に、異業種との共創の場を積極的に作り出していく」と武山氏がいうように、同社のビジネスチャンスはさらに拡大していく。

(編集局 谷古宇浩司)

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