[Interview]
“デマンド”でフロントオフィスを構築する、ピボタルのCRM

2001/10/20

日本ピボタル 代表取締役社長 フレッド・マカレイグ氏

 CRMという言葉が聞かれるようになってしばらくになるが、日本ではなかなか導入が進まない。日本ピボタル 代表取締役社長 フレッド・マカレイグ(Fred Macaraeg)氏は、そんな日本におけるCRMの現状を「欧米より6、7年遅れている」と見ている。

 ピボタルは1994年設立のカナダのCRMベンダ。日本市場には1996年に進出、2000年末に日本法人を設立した。主力製品「Pivotal eRelationship 2000」は、「CustomerHub」「PartnerHub」「IntraHub」の3つのモジュールで構成され、顧客、パートナー、従業員との関係管理をサポートするCRM製品。ワールドワイドでは1300社、日本では130社のユーザーを持つ。同社にCRMの課題とピボタルの戦略について聞いた。

――製品の特徴は?

日本ピボタル 事業部長 中島孝明氏

中島氏 大きく3つある。カスタマイズの容易性、検索の自由性、セキュリティだ。カスタマイズの容易性では、専用ツールキットにより、通常の30〜50%の工数でカスタマイズを行えるほか、データベースとのリンクも容易に設定できる。ビジネス・プロセスの変化に応じて業務システムは細かな変更が必要となるが、大規模な変更でなければ、ユーザー企業の管理者レベルでカスタマイズ可能だ。

 検索では、複雑なクエリーを必要とせず、ユーザーに自由検索を提供する。セキュリティでは、データへのアクセス権の設定を容易にした。eビジネスでは、在庫情報をサプライヤと共有するなど、パートナー企業、従業員、顧客にある程度の情報を公開し、共有する必要性があり、アクセス権の管理の重要性が今後増すだろう。

――日本のCRM市場をどう見ているか?

マカレイグ氏 ハイテク業界ではよく、“アメリカより5年遅れ”というが、ERPやCRMに関してはその差は6、7年。欧米では、ERPにしろCRMにしろ、導入していて当たり前だが、日本では、やっと普及・認知が徹底した段階だ。ERPは、欧米では1990年代前半がブームで、日本市場ではようやく去年ブレイクした。そう考えると90年代半ばに欧米で導入が進んだCRMは、日本では来年あたりになるだろう。実際、日本企業の関心が高まってきたことを感じる。

――CRM導入に踏み切れない原因は何だと考えるか?

マカレイグ氏 心理的な阻害要因もあるかもしれないが、費用対効果が明確に示せないことが最大の原因だろう。ERPはコスト削減の仕組みであるため、“マイナス”という分かりやすい指標があるのに対し、CRMは利益を生み出す“プラス”の仕組み。システムを導入して初めて効果が測れるもの。これまで存在しなかった仕掛けであるために、投資に踏み切れないのかもしれない。

 ただ、弊社の製品は小規模で導入をはじめられるため、まずは部や事業部単位で導入して拡大していくというケースが多い。例えば、東芝情報システムでは、まずは50人程度のコールセンターで導入し、その後450人規模の営業部門に拡大、最終的には1000人規模にスケール・アップする予定だ。

――ERPベンダやデータベースベンダなどの参入もあり、CRM市場が混戦してきた。どのような戦略をとるのか?

本社の2001年度売上高は約120億円。2002年度は150億円を見込んでいる

マカレイグ氏 われわれの強みはフロント・オフィスに特化していること。よく、“Best of Breed”か“integrated”か、といわれるが、欧米では、その分野で一番優れた製品をEAIツールを用いて組み合わせる、“Best of Breed”型が圧倒的。ERPベンダなどが統合性を強調するが、実際には、ベンダ内でも開発部門は分かれている。日本では、ブランドバリューで大手ERPベンダやデータベースベンダがもてはやされているようだが、真剣に効果を考えると、その分野で一番強く、自社にあった製品を組み合わせることが最適なのではないか。

――今後の事業展開の予定は?

マカレイグ氏 インターネットの普及により、経済は、顧客主導型の“カスタマ・エコノミー”に推移した。カスタマ・エコノミーの世界では、企業は製品で差別化を図るのが難しくなり、顧客との関係を構築することが競争優位となる。それを実現するのがCRMで、マーケティング、サポート、営業の3部門が同じデータベースを共有し、顧客に1つの“顔”を提供する。まずはこの部分の提供に注力する。

 フロント・オフィスでは、このCRMに結びついてeビジネスを実現する仕組みとして、代理店や納入サポート業者などとの関係を管理するPRM(パートナー・リレーションシップ・マネジメント)がある。ここでは、企業、顧客、サプライヤの関係が需要(デマンド)主導で回ることになり、セルフサービス機能の提供が重要となるだろう。ピボタルではこれを“DCM(デマンド・チェーン・マネジメント)”と呼び、今後の事業展開分野とする。

 製品のロードマップとしては、今年中に、インターネットでの受発注プロセスをサポートする「Pivotal eSelling 2000」と、PDAからのアクセスを可能にする「Pivotal Anyware」の提供を開始する。このeSellingにより、企業のマーケティング・サポート・営業の3部門、サプライヤ、BtoBの顧客、BtoCの顧客とが結びついたDCMが実現するモジュールが全部そろうことになる。

(編集局 鈴木崇、末岡洋子)

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