“20社限定発売”のSAS新製品を導入したのは?

2004/4/8

 SAS Institute Japanは4月7日、SAS Systemの最新バージョン「SAS 9」の製品概要および販売戦略説明会を行った。SAS 9は、同社が提供するビジネス・インテリジェンス(BI)ソリューションすべての基盤となる製品で、3月31日から「20サイト限定」という形で出荷されている。この販売戦略について、SAS Institute Japan執行役員 営業本部 BI Platform&EPM事業開発部統括部長の桐井健之氏は「SAS9は、当社が打ち出している『インテリジェンス・バリュー・チェーン』を実現する、まったく新しい体系の基盤製品として開発された。そこでまずはユーザー企業やパートナー企業とともに、このチェーンをバックアップできる強力な支援体制を整えることが先決であり、あえて“限定発売”とした」と述べる。

SAS Institute Japan執行役員 営業本部 BI Platform&EPM事業開発部統括部長 桐井健之氏

 インテリジェンス・バリュー・チェーン(IVC)とは、「企業内に蓄積されたデータから分析に必要なものを抽出・蓄積し、分析し、仮説を導き出す」という取り組みのこと。導き出した仮説を実際の取り組みにフィードバックし、結果を検証することで、より高度で精確なインテリジェンスが得られるようになる。同社では従来、この考え方に則ってETLツールや分析用データベース、レポーティングツールなどを提供してきた。新しいSAS 9は、「こうした個々のETLやデータベース、BIツールなどを統合し、IVCを実現するインフラとなっている」(桐井氏)という。

 個別製品を1つの基盤として統合したのには理由がある。桐井氏によると、「ビジネス・インテリジェンスの世界では、ビジネス環境に合わせ分析軸を追加したり、データモデルを変更したり、柔軟な対応が求められる。専用ベンダの製品を組み合わせれば、表面的には同じような分析システムができるが、統合製品で1つの管理コンソールから変更・追加を可能にしたことで、分析システムに必須の“柔軟性”を確保できるようになった」とのことだ。

 そのためSAS 9では新しく「SAS Open Metadata Architecture」を提供し、システム環境を一元管理できる仕組みを整えている。具体的には、サーバおよびプロセスのロケーションや、データの物理的な性質、ユーザー情報を記述した「テクニカルメタデータ」と、ビジネスユーザーがシステム内のデータを自由に抽出・加工できる「ビジネスメタデータ」という2種類のメタデータを使ってシステムを管理。これにより、アナリストやパワーユーザー自身が用途に合わせて自由にデータマイニングできるようになり、システム全体の運用性も向上した。これらのメタデータは業界標準の「CWM」(Common Warehouse Metamodel)に準拠しており、Rational RoseやERWinなど他社のデータモデリングツールへのインポート/エクスポートが可能だという。

 さらに分析結果や導き出された仮説を全社で共有するために、スケーラビリティを強化。コアとなるサーバやプロシージャ、データアクセスエンジンをマルチスレッド化し、ユーザー数やデータ量の拡大に対応している。ちなみにユーザーインターフェイスについても、SAS本社で実際の導入企業にアンケートを取って使いやすさを追求。延べ数千人のエンジニアと2000億円以上の費用を投入し、3年の開発期間を経てリリースされたという。

 SAS 9の中心となるのは次の3つのソフトウェア群だ。

  • 「SAS ETL Server」 データの抽出・変換・ローディングプロセスの簡易化・高速化を実現
  • 「SAS Intelligence Storage」 数十テラ以上のデータを分析・マイニングするための基盤製品
  • 「SAS BI server」 BIレポーティング機能を提供するソフトウェア

 上記ソフトウェア群の中には、Microsoft ExcelなどOfficeツールとの連携を実現する「SAS Add-In for Miicrosoft Office」やOLAP作成用GUI環境「SAS OLAP Cube Studio」、ビジネスに使えるメタデータを作成する「SAS Information Map Studio」などが含まれている。特にOfficeとのアドインツールについては、「使い慣れたExcelインターフェイスから、SAS製品の特徴である大量データハンドリングが利用できるようになった」(桐井氏)という。

 “限定”発売のユーザーについては、UFJグループなどすでに数社が決定済み。現在、新規・既存ユーザーを含め、アプローチしている最中で「6月までには目標に達するだろう」(桐井氏)とのことだ。

(編集局 岩崎史絵)

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