TRIOLEの“水回り”を構築する“ユニットバス型”サーバとは

2004/4/9

富士通 経営執行役常務 伊東千秋氏

 富士通はルータやファイアウォール、負荷分散の機能を統合したネットワークサーバ「IPCOM Sシリーズ」を発売したと4月8日に発表した。ルータや負荷分散など単機能の製品を組み合わせるのと比較して初期導入コストが半分、設計から導入までの期間が5分の1になるという。富士通の経営執行役常務 伊東千秋氏は「単機能の製品を組み合わせる注文建築式のネットワーク構築に対して、いまはプレハブ工法が求められる」と指摘。「その中でもIPCOM Sシリーズは洗面台やバス、トイレなど難しい水回りを合体したユニットバスといえる。ネットワーク構築で最も難しいところを統合した」と説明し、富士通のIT基盤「TRIOLE」を支える柔軟なネットワークを短期間で構築できることを強調した。

 IPCOM SシリーズはIPネットワークとサーバの間にあるネットワーク機器の各機能を統合した。ルータ、レイヤ3スイッチ、ファイアウォール、SSLアクセラレーション、レイヤ7の負荷分散、帯域制御、IPsecの機能を持つ。機能を統合したことでこれまで各機器ごとに必要だった設定や運用管理を単純化でき、ネットワーク構築時の設定ミスや運用管理のミスを大幅に低減できるとしている。IPCOM Sシリーズにはセンター側用の製品と、リモートサイト用の製品があり、富士通のSystemwalker、ヒューレット・パッカードのOpenViewで統合管理が可能。IPCOM Sシリーズに対して1つのネットワーク構成定義、運用ポリシーを決めておけば、一括適用できる。

IPCOM Sシリーズ(左)と単機能の機器を組み合わせた場合の比較。スペース、ケーブル本数が3分の1になるという

 また、IPCOM Sシリーズは業務アプリケーション別に通信帯域を保証する機能を搭載。富士通のIPネットワーク事業本部長代理 菊池伸行氏によると「あたかも専用線を複数束ねるような機能」で、一部の業務アプリケーションが帯域を消費しても、別の業務アプリケーションは影響を受けることなく通信を続けることができる。富士通が行ったデモンストレーションでは、映像配信中にWebサイトのトラフィックが急増。しかし、映像配信に割り当てられた帯域は影響を受けず、映像配信が継続できることが示された。帯域を低下させることができない電子商取引の決済業務、IP電話などでの利用が考えられる。

 価格はネットワークのセンター側に設置する「S2000」「S2200」がそれぞれ470万円からと790万円から。スループット性能などから価格差がついている。負荷分散やSSLアクセラレーションの機能を除いたリモートサイト用の「S1000」「S1200」はそれぞれ80万円、198万円となっている。富士通では2年間で4000台の出荷を見込んでいる。データセンター用に接続できるユーザー数を増やした製品や、IDS(Intrusion Detection System:侵入検知システム)、IDP(Intrusion Detection and Prevention:不正侵入検知防御機能)などのセキュリティ機能を充実させた製品も検討している。

(編集局 垣内郁栄)

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富士通の発表資料

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