日立のユーティリティ戦略に総合ITベンダの強み

2004/1/17

 サーバやストレージ、ネットワークなどのITリソースを仮想化し、効率的に利用しようとするユーティリティ・コンピューティングへの取り組みが各ベンダで活発化している。背景には、運用コストの削減やビジネス変化への迅速な適応が求められる企業情報システムの現状がある。そのような企業ニーズにどうこたえるかが各ベンダの差別化のポイント。日立製作所の情報・通信グループ Harmonious Computing 統括センタ 戦略企画部 部長 緒方博通氏は、同社のユーティリティ・コンピューティングへの取り組みについて「日立の強みは総合ITベンダとしてサーバ、ストレージ、ネットワーク、JP1をはじめとするミドルウェアを豊富に持つことにある」と述べ、他社に対する優位点を説明した。

日立製作所の情報・通信グループ Harmonious Computing 統括センタ 戦略企画部 部長 緒方博通氏

 日立は企業情報システムの抱える課題を解決し、企業がコアビジネスに集中できるようシステムを設計するサービスプラットフォーム「Harmonious Computing」(ハーモニアス・コンピューティング)を2002年末から提唱している。ハーモニアス・コンピューティングが目指す世界は「ポリシーを決定するだけで快適に利用できる自律運用型システム」。業務要件に当たるビジネスポリシー、サービスレベルや性能、構成モデルのシステムポリシーを決定するだけで、システムが自律的にサービスを運用できるようにする。

 日立はハーモニアス・コンピューティングを実現するための要素として「業務開発」「運用管理」「製品連携・統合」の3つを想定し、それぞれを強化する方針を打ち出している。業務開発とは、ビジネスプロセスの迅速な構築を可能にする業務開発基盤の強化を指す。日立のシステム基盤「Justware」を中心に「極力新たなアプリケーションを作らないシステム開発を目指す」と緒方氏は述べた。Justwareや業務パッケージ、プログラムで構成され、基本的なシステム機能を備えたアプリケーションフレームワークを、企業システムに提供することで新規アプリケーションを1から手作りすることなく、低コスト、短納期で構築できるようになる。メインフレームやオフコン、他社システムとの連携には日立のWebアプリケーションサーバ「Cosminexus」を活用する。

 運用管理はJP1を使い大幅に自動化を進める。運用管理サイクルは、緒方氏が最も重要と指摘した「3つのP」が中心となる。3つのPとは、属人的な運用ノウハウをナレッジに落とし込んで、エクスパート以外でもシステム運用ができるようにする“ポリシー”、システムの構成変更時に仮想化しておいたITリソースをハードに迅速に割り当てる“プロビジョニング”、負荷の増大やハードの故障などの予兆を監視し、事前に対処、保守する“プロアクティブ”を指す。特にポリシー管理ついては、JP1がセキュリティ製品ごとのセキュリティポリシーを統合管理する機能を実装している。緒方氏は「運用管理の日常的な省力化から今後は中長期的な運用サイクルの容易化が進展する」とJP1進化の方向性を説明した。

異機種混在環境でシステム検証ができるハーモニアス・コンピテンス・センタ。日立製作所が2003年6月、東京・品川に開設した

 ハーモニアス・コンピューティングを実現するための要素の3番目、製品連携・統合について、日立はモジュール化したサーバ、ストレージ、ネットワークを搭載し、JP1で統合的に運用管理するオールインワン型の新システム「エンタープライズ・ブレード・システム」を2004年中に出荷開始すると2003年11月に発表した。各モジュールは高速な内部スイッチで接続、ビジネスの変化に合わせてスケールアウト型でサーバ、ストレージ、ネットワークを拡張できる。緒方氏によると「部門システムから基幹システムまでのスケーラビリティを実現できる」という。

 緒方氏はハーモニアス・コンピューティングの達成時期について「3年のロードマップを持って実現しようとしている。社内では“まだ5合目”の認識。しかし来年になったら山が高くなっていることもある」と語り、IT環境や企業ニーズの変化に合わせてテクノロジや組織を柔軟に変化させていくことを強調した。

(編集局 垣内郁栄)

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日立製作所 Harmonious Computingのページ

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