高コストの元凶、ITの複雑性をどうする

2004/5/15

シトリックス・システムズ・ジャパンのマーケティング本部 本部長 樋渡純一氏

 クライアントのアプリケーションをサーバ上で仮想的に実行し、アプリケーションの画像イメージだけをクライアントに送信するシトリックス・システムズ・ジャパンのスイート製品統合ソフト「Citrix MetaFrame Access Suite」が5月13日に発表された。シトリックスはこれまでサーバ・ベース・コンピューティングに重点を置いてきたが、今後は情報システムに対するセキュアで自由なアクセスを可能にする「アクセス・インフラストラクチャー」を顧客企業に提案する。シトリックスのマーケティング本部 本部長 樋渡純一氏は、Citrix MetaFrame Access Suiteの特徴を「企業システムの複雑性の解消」と説明した。

 アプリケーションやデータをサーバに統合し、クライアントマシンにサービスとして配信する仕組みはサン・マイクロシステムズの「Sun Ray」に代表されるシンクライアントの考えに近いように思える。樋渡氏は「シンクライアントはアクセス・インフラストラクチャーを考える途中で派生したテクノロジ。アクセス・インフラストラクチャーではシンクライアントも通常のPC、PDAも同じようにアクセスし、アプリケーションを利用できる」と述べた。つまりサンなどが、シンクライアントを実現する環境の構築を目標としているのに対し、シトリックスはさまざまなデバイスで同一のアクセス環境を構築することを目指していて、そのデバイスの1つとしてシンクライアントが浮上したという意味だ。

 シトリックスはあくまでもアクセスにこだわる。さまざまな情報システムを統合、仮想化し、同一システムとしてリソースを提供するユーティリティ・コンピューティングとシトリックスのアクセス・インフラストラクチャーは「ほぼ同義」(樋渡氏)。しかし、IBMなどがサーバやストレージ、ネットワークの統合を考えるのに対して、シトリックスはアクセスするユーザーからの視点でシステムを統一するという違いがある。「ユーザーがアクセスした際に単一のシステムに見せる」のがシトリックスが考えるユーティリティ・コンピューティングといえる。

 企業情報システムの複雑性を解消するアクセス・インフラストラクチャーの考えは、ITの運用管理に大きなメリットをもたらすと樋渡氏は説明する。ある金融機関では膨大な数のクライアントPCにインストールしてあるオフィス・アプリケーションが古くなり、互換性の問題が出ていた。しかし、すべてのクライアントPCに最新バージョンのオフィス製品をインストールするにはIT部門が膨大な時間、コストをかける必要がある。そのためCitrix MetaFrame Access Suiteを導入し、サーバ側にだけ最新バージョンのオフィス製品をインストール。スタッフは必要なときにだけサーバにアクセスし、最新のオフィス製品を利用できるようになる。作成したデータはサーバ上に保存されるため、スタッフがフォーマットの互換性などで悩むこともなくなったという。「情報システムの管理スタッフを少なくし、IT部門が新規開発に集中できる」。これがシトリックスのメッセージだ。

(編集局 垣内郁栄)

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