マイクロソフトのデジタル家電戦略に「独占はない」

2004/6/1

 「デジタル家電でOS、CPUの独占はない」。野村総合研究所(NRI) 情報・通信コンサルティング2部 副主任コンサルタントの廣戸健一郎氏は5月31日、NRIが開催した説明会でデジタル家電の技術動向についてこう述べ、デジタル家電へのOS供給を図るマイクロソフトの試みは難しいとの見方を示した。

野村総合研究所 情報・通信コンサルティング2部 副主任コンサルタントの廣戸健一郎氏

 廣戸氏はDVDレコーダ、プラズマTV、メディアサーバなどのデジタル家電に搭載されるOS、CPUについて「コアのOS、CPUは(ベンダによって)ブラックボックス化される」と説明。マイクロソフト1社が主にOSを提供するPCと異なり、「OS、CPUを共通化する必要がない」と述べた。各ベンダが独自でOSやCPUを開発し、付加価値を生み出すことが中心となる。

 このようにコアの部材を内製化するデジタル家電のビジネスモデルは、いわゆる垂直統合モデル。しかし、廣戸氏は「将来的にはPCのような水平統合モデルに移行する」とみている。OSやCPUなど主な部材が標準化され、さまざまな部材メーカーによって製造されるモデルだ。デジタル家電のベンダは世界中から部材を集めて、組み立てることになる。デジタル家電はPC同様にコモディティ化して、付加価値機能よりも低価格が注目されるようになる。ただ、デジタル家電がコモディティ化するには時間がかかり、当分は垂直統合モデルが続くという。

 マイクロソフトはデジタル家電のOS共通化を狙ってさまざまな製品を提案してきているが厳しい立場にあると廣戸氏はみている。当初はデジタル家電に自社製のOSや製品を載せようと「Windows Media Center Edition」などを提案。PCのディスプレイだけを持ち運べる「Smart Display」も開発した。しかし、いずれも成功したとはいえない状況だ。廣戸氏は「10万円のデジタル家電にマイクロソフトの1万円のOSは載せられない」と語り、マイクロソフト製品の価格が普及を阻害する要因になっていると指摘した。

 マイクロソフトは2004年1月にPCを中心にさまざまなデジタル家電でコンテンツをやりとり、再生できるようにする新技術「Windows Media Connect」を発表した。すでにデルや東芝などのPCベンダ、家電ベンダがサポートを表明している。マイクロソフトは、Windows PCを中心としたデジタル家電のネットワークを構成する技術の普及に努めるとみられ、廣戸氏は「マイクロソフトは、PCのメディアサーバ化路線に動いている」と指摘した。

(編集局 垣内郁栄)

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