“エッジ”業務を効率化するBPM、ブロードビジョン

2004/6/17

 ブロードビジョンは6月16日、ビジネスプロセスの設計・実装ツール「BroadVision Process日本語版」を7月27日に出荷を開始すると発表した。価格はサーバ1CPU当たり810万円で、ビジネスプロセス設計者や開発者など、ユーザーの役割や使う機能によってライセンス料が異なる。製品構成は次のとおりだ。

  • Process Workbench:業務プロセスのモデル化や業務フローのシミュレーション機能を持つグラフィカル・ツール
  • Process Framework:設計した業務プロセスをWebページに変換するエンジン
  • Process Management Center:業務プロセスの設計・管理・監視・レポート作成機能を持つWebベースのアプリケーション
米ブロードビジョン CEOのピーホン・チェン氏

 これまでブロードビジョン製品は、「ポータル構築」もしくは「パーソナライゼーション」ツールとしてくくられることが多かった。これに対し、米ブロードビジョン CEOのピーホン・チェン(Pehong Chen)氏は「当社はポータルやパーソナライゼーションなどのくくりで位置付けられるのはなく、eビジネスを支援するベンダとして10年間ビジネスを推進してきた」と前置きしたうえで、次のように語る。「ここ3年間、日米問わず企業のIT投資は抑制傾向にあった。だが今年から、顧客対応やパートナー対応など、多数の人間が関わる複雑な業務をWeb化したいということで再びIT投資が活発化している。そこで、これまで提供してきたWeb技術の実績を生かし、迅速かつ容易に複雑な業務プロセスをWeb化するツールを提供することにした」と語る。

 続けて、「本製品の最大の特徴は(1)顧客やパートナーなど大多数の人が関わる業務をWebセルフサービス化すること、(2)ビジネス要件の洗い出しから開発、実装、導入、ブラッシュアップといった一連のサイクルを迅速化すること、(3)TCO削減への貢献という3点に絞られる」(チェン氏)。

 Webセルフサービス化とは、例えばコールセンターを通していた顧客とのやりとりをWebベースで実行できるようにし、なおかつそのやりとりがどういうフローで進んでいるか、どの担当者のところまで届いているかをWebブラウザから確認できるようにすることだ。具体的には、クレーム処理や問い合わせなどが挙げられる。こうした処理は何度も電話でやりとりしなければならないため、企業にとっても顧客にとっても負担になっていた。「このように、顧客やパートナーなど大多数の人がかかわる業務プロセスは複雑なので、IT化するのが難しかった。ブロードビジョンでは、複数の立場でさまざまな人がかかわる業務プロセスを『エンタープライズ エッジ プロセス』と呼び、社内のコア業務『エンタープライズ コア プロセス』の効率化を図るERPやEAI製品と明確に区別している」(チェン氏)。

 だが、顧客やパートナーなど社外の人間を巻き込む業務プロセスの実装・開発は非常に時間がかかる。この問題に対して、BroadVision Processはビジネスニーズの発見・業務フロー設計・導入・実行という4段階のプロセスをサポートすることで、開発効率の向上を図っている。従来、業務プロセスのモデル化や設計作業は、モデリング技術に精通した担当者や専門のコンサルタントに依頼することが一般的だったが、本製品は一般の業務担当者でも直感的に理解・設計できるようにアイコンをドラッグ&ドロップするだけでフローが描けるようになっている。この設計データから、自動的に業務プロセスがコーディングされるので、開発生産性が向上するという。

 「これまでのシステム開発では、業務担当者、ビジネスプロセス分析者、開発者がそれぞれ異なるツールを使っていた。BroadVision Processは業務担当者やビジネスプロセス分析者が設計した成果物をXMLファイルとして管理し、そのまま開発サイドで使えるので、プロジェクトの情報共有や作業がスムーズに行えるようになる」(チェン氏)。

 最後のTCO削減については、オープンソースソフト(OSS)をサポートすることで、「一般の商用ソフトを使うより、TCOを5〜8割削減できる」(同)という。サポートしているOSSは、Linuxのほか「HSQLDB」(データベース)、「OpenSymphony」(ワークフローエンジン)、「JBoss」(Webアプリケーションサーバ)など。従来のブロードビジョン製品がサポートしていたBEA WebLogicやOracle DBなどの製品群にも引き続き対応しているので、導入時にユーザーがOSSか商用ソフトウェアか好きな方を選ぶことができる。導入後、OSSから商用ソフトウェアへの移行(またはその逆)も可能だ。

 ちなみに、BroadVision Processは2001年から構想されており、開発に3年かかったという。その間、他社からのビジネスプロセス設計ツールのOEMも検討したが、「OSSなどの最新技術へいち早く対応し、高い付加価値をユーザーに提供するには、自社開発の方が適している」と判断。J2EEのポートレット規格「JSR-168」への対応など、拡張性の高いアーキテクチャを実現したという。初年度に売り上げ15億円を目指す。

(編集局 岩崎史絵)

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