富士通の夢はトヨタになること?

2004/7/23

富士通 取締役専務 伊東千秋氏

 「ユビキタス時代は、分散と集中が同時に起きる」。そう語ったのは、富士通 取締役専務 伊東千秋氏だ。どこからでもネットワークにつながる時代は、当然膨大なサーバが必要となる。しかし、そのサーバの運用管理の手間も膨大になる。そこでサーバは集中管理する。それが冒頭の発言の真意だ。富士通が描くサーバの未来は「データセンター化」だ。

 データセンターとは、「別にサーバをアウトソースするだけではない。お客さまのサーバもデータセンター化する」(富士通 経営執行役 サーバシステム事業本部長 山中明氏)という言葉どおり、データセンター(iDC)そのものを指すわけではない。データセンター化するとは、自律、仮想、そして統合といった技術が使われことで、サーバ群が巨大なデータセンターのような存在となるというものだ。そして富士通にはそれを実現するための基盤、「TRIOLE」が存在するとアピールする。

 しかし、富士通がサーバ戦略の発表で本当に強調したかったのは、自社で作ることにこだわるということ、日本だけではなく、世界を舞台に戦っていく、という点に尽きるかもしれない。

 伊東氏は「製造と開発は不可分である」と強調する。現在同社が力を入れているのは、“ものづくり”だ。そこで重要なのは製造現場の力。トヨタ自動車の「かいぜん」運動をトヨタOBから伝授してもらい、「生産現場を基点に設計の改革までを展開」するほか、生産性の向上にもつなげる。生産性の改善でいえば、2005年の目標は生産性2倍を掲げ、設計品質2倍、開発期間30%減、毎年1000億円を超えるコスト削減などを実現していくという。こうした絶え間なき現場の改革によって富士通は、強靭な企業体質に変貌を図りたいのだろうか。同社はIT業界のトヨタを目指しているのかもしれない。

富士通 経営執行役 サーバシステム事業本部長 山中明氏

 「PRIMEPOWERが売れているのは、品質が認められたから」(山中氏)といった言葉には、こうしたかいぜんの実績への自信がうかがえる。開発も自社開発にこだわる。CPUもチップセットも自社開発、ミッションクリティカル技術は全機種共通で自社開発、などなど。もちろん、サン・マイクロシステムズ、インテル、マイクロソフト、レッドハット、オラクル、SAP、BEAシステムズ、ベリタスソフトウェアなどとの提携に言及し、「何もかも自社でやろうとするIBM」(山中氏)との違いを強調した。

 世界を舞台にするのは、「ほかの国内メーカーと異なる」富士通独自の戦略と自負する。2003年の世界のサーバ市場シェアで、山中氏が示したグラフには1位IBM、2位ヒューレット・パッカード、3位サン、4位デルの後に富士通グループの名前がある(富士通シーメンスを含む)。2006年までのサーバ市場の平均成長率でいえば、世界全体では平均伸長率は4%。しかし日本だけだとマイナス3%。国内ではトップシェアを誇るが、国内だけでは現在は縮小している市場を奪い合う形になってしまう。しかし、世界市場は緩やかに伸びている。世界でシェアを取ってこそ、日本でも優位に戦える。そんな狙いが見える。

 そしてその中でもオープンサーバ(UNIX、Linux、Windows)をメインと位置付け、サーバ事業を引っ張ると見ている。同社が描く2006年のサーバ事業(連結ベース。ストレージなどの事業を含める)の売上高は2003年度の1.4倍となる約5000億円、営業利益率は7%を目指す(2003年度は6%。2004年度の予想は4%)。世界シェアも「あと2〜3ポイントは上乗せしたい」(山中氏)と語り、8〜9%程度を目標とする。

 具体的な製品のロードマップとして、メインフレームのGlobal Serverでは、GS21の後継機種を2006年に発売する。UNIX機であるPRIMEPOWERでは、90nm技術を使った1.89GHzのSPARC64 V搭載マシンを今年投入、来年にはサンとの製品相互供給を開始、翌2006年にはサンとの統合製品を発表する。IAサーバ(PRIMERGY)では、2005年に基幹系のIAサーバを投入する。

 さて、こうした戦略によって富士通はグローバルプレーヤーとして、米IBMを追撃できる日がくるのだろうか。

(編集局 大内隆良)

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