“5ナインズ”のVoIPを実現するジュニパーの「J-Voice」

2004/7/28

 ジュニパーネットワークスは、ベストエフォート型のIPネットワークを用いて、99.999%(5ナイン)の信頼性があるキャリアグレードの音声ネットワークを可能にする新技術「J-Voice」を開発し、同社のルータ「Tシリーズ」や「Mシリーズ」「Eシリーズ」「SDX-300」に搭載したと7月27日に発表した。米ジュニパーネットワークスのVoIP担当シニア・プロダクト・マネージャー フィリップ・シーヴィー(Philip Seavey)氏は、「J-Voiceはジュニパーの全ルータに搭載できる技術」と述べ、今後、同社の全製品にJ-Voice技術を搭載していく考えを示した。

米ジュニパーネットワークスのVoIP担当シニア・プロダクト・マネージャー フィリップ・シーヴィー氏

 J-Voiceは音声だけでなく映像配信などインターネットアクセス以外のサービスの信頼性や可用性を高める。ルータに関するハード、ソフトの複数の技術を組み合わせた「スイートフューチャー」(シーヴィー氏)。すべての種類のトラフィックが同一に扱われたり、通信の再接続に時間がかかるなどのベストエフォート型ネットワークの問題点を解決し、一般電話と同様の使い勝手にサービスを向上させるという。

 J-Voiceを主に構成するのはハードとソフトの2つの技術。ハード的にはジュニパー製ルータが持つモジュラーソフト「JUNOS」や、フォワーディングプレーンとコントロールプレーンの分離、ASICによるパケット処理などがキャリアグレードのVoIPサービス実現に寄与する。シーヴィー氏は「ジュニパーが初めてルータを設計したのは6〜7年前。第1世代ルータの間違いから学んでいるのが強みだ」と述べ、アークテキチャの先進性をアピールした。

 ソフト的には、DiffServベースのMPLS TE(トラフィック・エンジニアリング)が帯域幅の確保と高可用性をVoIPサービスに提供する。ジュニパーのアジア太平洋地区エンジニアリング担当バイス・プレジデント アンドリュー・カワード(Andrew Coward)氏は「これまでDiffServ技術とMPLS TE技術は別々だったが、これを結合した。DiffServはパケットの優先順位付けが可能だが、個々のフローについての識別はできなかった。これをMPLS TEと結合することで、個々のフローについての優先順位付けが可能になる」と説明した。ベストエフォート型のIPネットワークで、遅延が許されないVoIPパケットや映像配信のパケットが利用する帯域幅をパスとともに確保できる。混み合っているネットワーク内でも安定的に音声や映像のパケットを通すことができるという。

米ジュニパーネットワークス アジアパシフィック モバイル・Voice&Edge担当 プロダクト・マネージャー サイモン・ニューステッド氏

 DiffServやMPLS TEの技術自体は業界の標準技術で他社も利用しているが、「われわれは豊富なインプリメンテーションが可能。さまざまな機能をルータに提供できる」(米ジュニパーネットワークス アジアパシフィック モバイル・Voice&Edge担当 プロダクト・マネージャー サイモン・ニューステッド[Simon Newstead]氏)と強調した。また、カワード氏はIDCの調査で、ジュニパーがアジア太平洋地域のコア・ルーティング・プラットフォーム市場でシェア46.8%(2004年度第1四半期、売り上げベース)を獲得したと発表。「アジア太平洋では音声や映像配信などブロードバンドサービスの伸びが顕著で、サービスプロバイダがMPLSベースでサービスを提供することが求められている」と指摘し、MPLSに強みを持つジュニパーのルータが支持されているとの考えを示した。

 J-VoiceはほかにもIP接続拒否の検出、復旧を従来の秒単位からミリ秒単位に短縮する技術や、接続とコアネットワークの両方でVoIPサービスに必要な帯域幅が利用可能かどうかを保証する「アドミッションコントロール」の機能を搭載している。これらの機能を搭載することでキャリアやサービスプロバイダは、通話品質や接続性を保証したIP電話サービスを展開できるとジュニパーはみている。「高品質な音声や映像が保証されればユーザーは追加料金を支払う」(カワード氏)との考えで、J-Voiceがサービスプロバイダの収益向上につながると述べた。

 ニューステッド氏はVoIPや映像配信などで今後求められるルータの機能として、「アベイラビリティ、リライアビリティなどコアのテクノロジのあとには、サービスに応じて動的にリソースを割り当てるコネクション・アドミッション・コントロールが求められるだろう」と説明した。コネクション・アドミッション・コントロールを搭載したルータではVoIPやビデオ・オンデマンド、ビデオ・コンファレンスなどユーザーが利用するサービスに応じて自動的にネットワーク・リソースが割り当てられ、効率的にネットワークを利用できる。ニューステッド氏は「そのうちのいくつかはすでにJ-Voiceに搭載している」と述べ、J-Voiceの先進技術をアピールした。

(編集局 垣内郁栄)

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