クラスタ構成で最大92Tbps、シスコ次世代ルータの驚き
2004/6/30
シスコシステムズが発表した「Cisco CRS-1」。シャーシをクラスタ接続し最大で92Tbpsまでパフォーマンスを拡張できる |
シスコシステムズはキャリア、サービスプロバイダ向けに、最大92Tbpsまで拡張できる新しいアーキテクチャを採用した次世代ハイエンドルータ「Cisco CRS-1」(キャリアルーティングシステム)を発表した。米シスコの上級副社長兼ルーティングテクノロジーグループ ジェネラル マネージャのマイク・ボルピ(Mike Volpi)氏は「10年以上、顧客のコアネットワークで使い続けられる。ライバルのかなり先をいっているだろう」と述べた。
CRS-1の最大の特徴は高い拡張性を備えた新しいアーキテクチャを採用したことだ。CRS-1はシングルシェルフシステムとマルチシェルフシステムの2つの構成を採用した。シングルシェルフシステムは単一のシャーシに16個の40Gbpsラインカードスロットを備えた構成で、最大で1.2Tbpsのスイッチング容量を備える。40GbpsラインカードにはシスコとIBMが共同開発した新ASIC「Cisco シリコン・パケット・プロセッサ」(SPP)を採用した。40Gbpsラインカードのインターフェイスには業界で初めてOC(オプティカルキャリア)-768c/STM-256cを利用できるようにした。
マルチシェルフシステムは最大で72台までシャーシをクラスタ接続可能で、40Gbpsラインカードスロットを1152個搭載できる構成。複数シャーシを接続して1台のルータとして動作させられる。ラインカード間のクラスタ通信を担当するファブリックカードシャーシは8台接続でき、最大で92Tbpsのスイッチング容量を発揮する。
CRS-1は、新OS「Cisco IOS XR」を採用し、稼働中のサービスを停止することなく、ラインカードシェルフを追加してシングルシェルフシステムからマルチシェルフシステムへと拡張できるようにした。システムの拡張だけでなく、サービス稼働中にソフトのアップデートや、MPLS、マルチキャストの新機能を追加可能で「サービスを停止することなく10年以上稼働させられる」(ボルピ氏)という「常時稼働」が特徴。Cisco IOS XRはルータに加えられるDDoSを自動的に認識し、システムの過負荷状態をブロックする自己防衛機能も備える。
米シスコシステムズの上級副社長兼ルーティングテクノロジーグループ ジェネラル マネージャのマイク・ボルピ氏 |
サービス分離アーキテクチャもCRS-1の特徴。CRS-1はシステムで稼働するトラフィックやネットワーク処理をサービス別、または顧客別に分離できる。ラインカードごとにコントロールプレーン、データプレーン、マネジメントプレーンを分離し、ほかのサービスから影響を受けずに稼働する論理ルータを構築する。サービスプロバイダは新規サービスを提供する場合でも、CRS-1内に構築した論理ルータを使って、サービスの試験運用や展開、実装を柔軟に実行できる。また、複数のルータで稼働している別々のサービスを1台のCRS-1に統合し、ネットワークの運用コスト削減につながられるとシスコはみている。
CRS-1は顧客のフィールドテストを行った後に7月から順次、出荷する予定。参考価格は9380万円からとなっている。
ボルピ氏は、CRS-1について「モジュラー性の高さが重要。シスコの競合他社はあとからマルチシャーシをアーキテクチャに追加できないだろう。新たに開発しようとすれば多額のコストがかかる」と指摘。4年の開発期間と5億ドル以上のコストをかけたCRS-1について「2万5000台以上が売れたCisco GSR 12000シリーズと同じくらいか、それ以上売れるだろう」と見通しを述べた。
(編集局 垣内郁栄)
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