[eWEEK] IBMとRationalの統合は成功だったのか(3)

2004/8/12

――IBMのオンデマンド戦略はRationalにどのようなメリットがあるのでしょうか

 包括的に統合され、顧客と社員とサプライヤを結びつけ、市場の変化にダイナミックに適応し、チャンスを活用したり、脅威に立ち向かえるプロセスのあるビジネスがオンデマンドの定義です。この定義は業務の統合とビジネスプロセスの統合を重視しています。

 また、Rationalのツールは全社規模のアプリケーション開発用として一流の開発環境です。これらはプロセスを例示するだけでなく、プロセス間の連携も実現せざるを得ないのです。このように、この環境の洗練度は、われわれが向かうと確信するオンデマンドの世界の特性にマッチするのです。

 そして、われわれはRationalツールがその戦略に必要不可欠な部品だと考えています。Rationalを高く評価し、主力ブランドの1つに位置付けています。われわれは、アプリケーション開発ツールやアプリケーションデザイン構想で中心的に使えるよう、開発作業をRationalへと移行しました。このように、オンデマンドの方向へ進む企業のニーズを満たす重要な資産としてこれを考えているのです。

――では、IBMの垂直市場進出にはRationalにどのようなメリットがあるのでしょうか

  そもそも、われわれの顧客はどこも業界に属しています。したがって、顧客にもっと有効に対応するには、技術を業界のニーズに適応させることが基本になります。Rationalのツールは、デザインパターンの作成、これらのデザインの例示、デザインの再利用を支援してくれます。アプリケーションのデザインに業界全体で共有できる要素があることは明らかで、業界独特のアプリケーションデザインも多数あります。取引モデルは彼らのものでした。Rationalチームも業界に重点を置いていたのです。

――Rationalは、IBM Global Servicesとどのように協力し、どのようなメリットを提供しているのですか

 Global Servicesとは買収前から関係がありました。Global Servicesの現場では、何年も前からRationalのツールを使っていたのです。Rationalの買収は、Global ServicesがRationalのツールで武装するための経済的な措置だったのです。

 市場の現場の人々は常にそうですが、特にこのクラスのツールになると、ツールを提供するだけではなく、そのツールの使い方を教育する必要もあります。われわれは昨年1年間そうしてきました。また、さまざまな業務提携でも、技能伝達の1つの方法として、Rationalのスキルを持つ人々がプロジェクトチームの一員としてGlobal Servicesと協力してきました。

――“このクラスのツールになると”ということですが、Rationalツールセットの簡素化は進めていますか

 何に関しても簡素化の動きは常にありますが、機能を削ったり低下させてはいけません。われわれは、常に新しい仕様や機能を投入しています。さらなる洗練を求める顧客の要求には十分に対応します。洗練度が低下することはないのです。しかし、技術はそのような過程において便利で利用し易くなるのです。

 インターフェイスを要約し、典型的利用法を簡素化し、ツールを一段と直感的なものにするテクニックを採用します。そのため洗練度は変わりませんが、ツールをより直感的な環境にするよう努力し、それを継続しているのです。

 われわれは、使いやすさ、トレーニングのしやすさなど、「容易さ」の特性をRational製品群に与えるべく各方面で長期的に取り組んでいます。

――Javaを簡素化する取り組みで、IBMは他社と同位置にいる、あるいは先行している、などと思いますか? BEAやSunが同じ目標を掲げていますが

 機能やスケーラビリティを減らして欲しいという顧客にはまだ会ったことがありません。したがって、簡素化の概念は顧客が持つほかの要件とのからみで考える必要があります。

 われわれは、洗練されたアプリケーションの構築を目指す顧客のニーズを満たすようなデザインの技術を構築します。彼らには洗練されたツールが必要です。このレベルになると、Microsoft Visual Basicのようなものではアプリケーションは構築できません。

 このように、市場には洗練された技術に対するニーズがあり、アプリケーションの最終的なニーズを満たしながら、どうすればもっと使い易くなるのかという課題があります。要するに、たとえツールがシンプルでも、アプリケーションがビジネスに適した動きをしなければ役には立ちません。必要なものを構築できないシンプルなツールを購入し、時間とお金を無駄にしてしまったことになります。

――マイクロソフトの次世代ツールとデータベース技術が再度発売延期されたことをチャンスだと思いますか

 何かを約束しながら遅らせるライバルがいると、その技術の入手を期待していた顧客に必ず影響を与えることができます。マイクロソフトが何かを約束しながら実現しないのはいまに始まったことではありません。いまは、多くの人が製品投入の約束に耳を傾けますが、誰もあまり注目はしません。最終的に製品が投入されてから検討するのです。市場は、マイクロソフトから何かが出てくることを期待していないと思います。

 Cairoもまだですし、YukonもWhidbeyも、そしてLonghornやIndigoなどなど、われわれが待っているものは数え切れないほどあります。これらがいつ登場するのかは、登場してみなくては分かりません。顧客がマイクロソフトの開発延期によって意志決定を保留もしくは中止するとは思えません。技術の内容は、それが登場してから検討するのです。

 このようなことが続くと疑問を抱くようになります。彼らは、世界が自分たちが動くのを待ってくれているとでも思っているに違いありません。次の超大作映画の公開を見込んでチケットを購入するのに行列を作って徹夜で何時間も待つようなものです。このようにはいかないと思います。

 これがマイクロソフトのやり方です。これがうまいやり方だと思っているに違いありませんが、私はそうは思わないので追従しません。彼らがやっと何かを出すときは、当初の約束とは違うものになっています。3年も時代を先取りして何かを発表しても、3年先のことは本当に分かるものでしょうか?


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[eWEEK] IBMとRationalの統合は成功だったのか(1)
[eWEEK] IBMとRationalの統合は成功だったのか(2)
[eWEEK] IBMとRationalの統合は成功だったのか(3)
[eWEEK] IBMとRationalの統合は成功だったのか(4)

[英文記事]
IBM's Mills: Rational Fits Hand-in-Glove

[関連リンク]
日本IBM

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