IT活用で業績好調? それとも好調だからIT活用できる?

2004/8/12

 経済産業省と日本情報処理開発協会が8月11日に発表した「情報化白書2004」は、「業績が増収増益傾向にある企業ほど、経営者のITへの関心と支持が高い」と指摘し、IT投資を企業全体の改革につなげるためにはCIOの設置と全社的なITマネジメント体制の確立が必要と訴えた。

 白書によると国内のIT投資は2001年に24兆円に達した。2002年には22兆7000億円に一度減少したが、その後は増加傾向で、白書は「2008年には27兆円の水準に達する見込み」としている。ただ、GDPに占めるIT投資比率を見ると日本は2%で、スウェーデン(4%)、米国(3.5%)などと比べて低く、今後の成長が期待できるとした。

 また、白書は日米のIT投資を比較。米国ではITの平均的な初期投資額2000万ドルのうち、ソフトのライセンス費用や開発費は16%を占めるだけで、多くはITを使いこなすための人材投資や業務改革のコンサルタント費用などに充てていると説明。対して、日本ではIT投資の半分以上はハードやソフトの購入費用に充てていて、「質の面で課題を残している」と指摘した。

 白書では上場企業400社の調査から、企業のIT化の度合いを4つのステージに分類した。分類はステージ1が「IT不良資産化企業群」(400社のうち15%)、ステージ2が部門ごとの効率化にだけITが寄与している「部門内最適化企業群」(66%)、ステージ3が企業全体の経営改革にITが貢献している「組織全体最適化企業群」(17%)、ステージ4が企業を超えた改革に寄与する「共同体最適化企業群」(2%)。

 ステージ1の企業のうち、業績が「上向き」と答えたのは6.3%だったが、ステージ2では18.1%、ステージ3は29.2%、ステージ4の企業は50%が業績が上向いていると回答。白書は「IT化ステージの高い企業ほど、業務の効率的再編成も進んでおり、業況がよい」と指摘した。逆に業績が「悪化した」と答えた企業はステージ1には25%あったが、ステージ4の企業では0%だった。別の調査では増収増益の傾向にある企業ほど、経営者がITに関心を持ち、積極的に支持を行っていることも明らかになった。

 一方でIT投資の効果測定は実施が遅れている。IT投資効果の測定を事前に行った企業は840社のうち、13%に過ぎず、53%は「実施していない」と回答。「一部実施」と答えた企業も34%に過ぎなかった。さらにIT投資の事後評価を行った企業はわずか6%。一部実施が35%で、59%は実施していなかった。白書は「(IT投資の)的確な評価を行い、次の戦略につなげるIT投資管理サイクルの確立が重要になる」と強調している。

(編集局 垣内郁栄)

[関連リンク]
経済産業省
日本情報処理開発協会

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